派遣社員として働いている方の多くが抱える不安の一つが「契約が更新されるかどうか」という問題です。

突然の契約終了により収入が途絶えることがないよう、派遣の契約が更新されない予兆を早期に察知し、適切な対処法を知っておくことが重要です。

この記事では、派遣労働者の皆さんが安心して働き続けられるよう、派遣の契約が更新されない予兆派遣が切られる前兆、そして予兆を感じた時の具体的な対処法について詳しく解説します。

突然の契約終了は違法?派遣の契約に関する法令をおさらい

派遣社員の突然の契約終了は違法ではないかと疑問に持たれる方もいるのではないでしょうか。まずは、派遣社員の契約に関する法令を見ていきましょう。

契約更新の相談は更新1カ月前まで

派遣社員の契約更新に関する相談は、契約を終了しようとしている30日前までに予告しなければならないと定められています。

有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準

(雇止めの通告)

第2条 使用者は、有期労働契約(雇入れの日から起算して1年を超えて継続勤務している者に係るものに限り、あらかじめ当該契約を更新しない旨明示されているものを除く。次条第2項において同じ。)を更新しないこととしようとする場合には、少なくとも当該契約の期間の満了する日の30日前までに、その予告をしなければならない。

引用:厚生労働省 告示第357号

つまり、もし契約を更新されない場合でも30日前までには派遣社員本人にその旨を告知する必要があるため、「契約終了の1週間前に突然告知された」などというような状況にはなりません。

法令以外にも、契約書に更新告知に関する規定も定められていないか確認しておきましょう。

派遣契約の更新には三者の合意が必要

派遣契約の更新には、派遣社員本人、派遣元企業、派遣先企業の三者すべての合意が必要です。いずれか一方が契約更新を拒否すれば、契約は終了となります。

特に注意したいのは、派遣社員本人と派遣元企業が契約更新を希望していても、派遣先企業が合意しなければ契約は終了するという点です。

派遣契約を更新しない理由は、派遣先企業による都合、派遣社員本人による都合など様々ですが、いずれにせよ双方の合意がない限り契約を更新することができないことを覚えておきましょう。

派遣先企業との派遣契約を結んでいるのは、派遣社員本人ではなく、派遣元企業なので契約更新についての交渉は派遣元企業が行う形になります。

一方的な契約終了も違法ではない

派遣先企業から一方的に契約終了を言い渡されても、違法にはなりません。契約期間の途中であったとしても、急に契約終了を言い渡される場合は「解雇」となり、こちらも30日前までの通告であれば一方的に契約を終了することができます。

派遣先企業の都合である場合は、次の派遣先の斡旋や手当の支給など派遣先企業が講ずべき措置というものが定められています。派遣社員本人に問題があった場合は、派遣先企業から派遣元企業に契約終了の申し出があり、派遣元企業の判断で会社都合により契約を終了されることもあるでしょう。

派遣の契約が更新されないときに見られる予兆

派遣契約が更新されない予兆には、以下のように様々なものがあります。

  • 新しい仕事がもらえない
  • 派遣先企業の業績が悪化している
  • 上司や先輩の態度が変わった
  • 人員整理や組織見直しの噂がある
  • 採用活動が活発になってきた
  • マニュアル作成や資料作成を依頼される量が増えた

これらのことが全て予兆とは限りませんが、知っておくことで早めの対処ができるかもしれません。

新しい仕事がもらえない

派遣先企業が派遣社員を受け入れる理由として、業務量が多く正社員だけでは人手が足りないというものがあります。派遣社員に新しい仕事を頼まなくなるということは、業務量が減り人手も足りてきているということになり、契約を更新してもらえない可能性が高いです。

他にも、今後派遣先企業で働いてもらう見込みのない人に新しい仕事を教育する手間を省くため、新しい仕事を任せないというケースも考えられます。これまでは様々な仕事を任せてもらえていたのに、急に既存の業務だけ終えてもらえればというスタンスになれば、契約を更新するつもりがないと考えて良いでしょう。

派遣先企業の業績が悪化している

派遣先企業の業績が悪化してきた場合、人件費削減のために派遣社員の契約を見直すという動きが起こりやすいです。やはり、企業としては正社員の雇用を守ることが優先であるため仕方のないことだと言えます。

派遣先企業だけでなく、業界全体の市場規模が縮小して景気が悪くなってきた場合も同様のことが言えます。派遣先企業の業績について知る機会は少ないかもしれませんが、業界の動向ならニュースやインターネットで情報を得ることができます。

いずれにせよ、業績悪化による人員整理を考えた場合、正社員よりも派遣社員の方が先に整理の対象になってしまう可能性が高いことを覚えておきましょう。

上司や先輩の態度が変わった

派遣社員の方から聞いた経験談の中で、最もわかりやすい予兆として「上司の態度が変わった」という意見が多くありました。どのように変わるかというと、

  • よそよそしい態度になる
  • 対応があっさりになる
  • 今後の状況を伝えなくなる
  • 仕事を振らなくなる
  • 注意されることが少なくなる

などが挙げられます。

職場によって状況は変わりますが、上司以外の周囲の人は契約に関して知らないことが多いですが、多くの場合、上司は契約を更新しない旨の情報を持っています。上司の態度が今までと違うなと違和感を抱いたら、これらのことに当てはまらないか注意して接してみましょう。

人員整理や組織見直しの噂がある

会社の業績に関わらず、何らかのタイミングで組織編成の見直しや人員配置の転換が行われることがあります。そういったタイミングで派遣社員の整理が行われることも珍しくありません。

派遣社員の部署異動は原則として禁止されています。組織の見直しがあり、自部署では人手が足りていて他の部署で派遣社員を必要としていても、部署を異動することはできません。

組織の見直しによって所属する部署が派遣社員を必要としなくなってしまえば、そのタイミングで次の契約は更新しないという判断をされることもあるでしょう。

採用活動が活発になってきた

派遣先企業が採用活動を活発に行うようになってきたら、正社員を増やし派遣社員の整理を行うかもしれないという予兆です。これまで派遣社員に任せていたような業務でも正社員に任せて、派遣社員自体を減らそうとしているかもしれません。

企業が派遣社員を活用する理由の1つとして、正社員より人件費やイニシャルコストがかからないということが挙げられます。しかし、派遣社員が入れ替わるたびに教育や育成をするコストを考慮したり、帰属意識が低い傾向にあることから、長期的に考えると正社員を雇った方が利益に繋がる場合もあります。

派遣先企業の採用活動が活発になり、正社員を増やそうと動き始めたら、それに伴い派遣社員を減らそうと考えている場合もあるため、予兆の1つとして考えておきましょう。

マニュアル作成や資料作成を依頼される量が増えた

今まで任せられていた仕事のマニュアル作成を頼まれるということは、誰かに新しくその仕事を引き継ぐ準備をしている可能性があります。契約が終了した後も後任者が業務を円滑に遂行できるように、マニュアル作成を依頼していると考えることが自然です。

また、簡単な資料作成を急によく頼まれるようになった場合は、契約期間が残り少なくなっているから難しい仕事を頼むのを辞めたという可能性が考えられます。もう少しで契約が終わってしまう派遣社員に時間のかかる仕事を任せて、その仕事が終わらずに契約終了となると引継ぎなどの手間が発生してしまいます。そのため、引継ぎが発生しないように簡単な仕事をこなしてもらうように切り替えているのかもしれません。

どちらの場合も、今まで任せてもらっていたような仕事ではないという違和感を抱いたら、契約期間が残り少なくなっているという予兆だと言えるでしょう。

更新されないのはなぜ?派遣先が契約を更新しない理由

契約が更新されない理由には、次のように様々なものがあります。

  • 派遣先企業の都合により更新ができない
  • 仕事のミスが多く改善されない
  • 仕事への態度が望ましくない
  • 遅刻・欠勤・早退などが多い
  • 同僚と良好な関係を保てていない

それぞれを詳しく解説していきます。

派遣先企業の都合により更新ができない

派遣先企業の業績悪化など、派遣社員本人に何も問題なく真面目に勤務していたとしても、止むを得ず契約を更新できない場合があります。このような場合、派遣先企業としても苦渋の決断の結果、契約を更新しないと判断することが多いため、派遣社員が契約更新を望んでいても実現が難しいでしょう。

しかし、派遣先企業から派遣元企業へ早めに相談があることが多いため、派遣社員自身も早めに状況を把握できる可能性が高いです。そうなった場合は、派遣元企業に相談し、早めに次の派遣先を探しましょう。

仕事のミスが多く改善されない

真面目に仕事に取り組んでいたとしても、何度も同じことで注意されて改善されないと、派遣先企業にとって望ましい人材ではないと判断されてしまうかもしれません。もちろん真面目に取り組むことは大切ですが、ある程度の成果も求められています。

同じミスを何度も繰り返してしまうと、そのフォローをすることに疲れた上司や先輩はだんだん仕事を頼まなくなってしまうかもしれません。仕事に対してやる気や成長意欲がないと判断されて、契約を更新してもらえなくなってしまう可能性は大いにあります。

仕事への態度が望ましくない

仕事に取り組む姿勢が望ましくなく、注意されても改善しないと契約を更新されなくなる可能性が高いです。

締め切りを守れない、頼まれた仕事に何かと理由をつけて断るなど、周りに迷惑をかけてしまうような行為を繰り返していると、会社にとって必要な人材ではなくなってしまいます。そうなると、契約を更新されないばかりか、途中で契約を解除されるケースも珍しくありません。

これは派遣社員だからということではなく、社会人として問題があるため思い当たる節がある方は今すぐにでも改善に努めましょう。

遅刻・欠勤・早退などが多い

仕事中は真面目に取り組んでいても、遅刻・欠勤・早退が多い人は派遣先企業からすると望ましい人材とは言えません。それが自分の都合によるものである場合は早急な改善が必要です。寝坊してしまう、体調を崩しやすいなど自己管理ができていないのは社会人として問題があります。

小さなお子様や介護が必要な高齢者と一緒に暮らしており、家庭の事情で遅刻・欠勤・早退が多くなる場合は、派遣契約を結ぶ前にあらかじめ伝えておきましょう。派遣先の選択肢は少なくなるかもしれませんが、隠して派遣契約を結んでも遅刻・欠勤・早退を繰り返してしまうようでは、契約を途中で解除される可能性もあります。

同僚と良好な関係を保てていない

業務を円滑に進めるためにも、職場の人間関係を良好に保つことはとても大切です。派遣先企業からすると、派遣社員は立場上社外者という扱いになりますが、職場の同僚と良い関係を築いていて損はありません。

必要以上に壁を作り、派遣先企業の人に扱いづらいという印象を与えてしまうと円滑に業務を進めることが難しくなってきてしまう場合もあります。人間関係のトラブルは職場環境を悪化させてしまうタネになるので、良好な人間関係を保てない人は契約を更新されなくなってしまう可能性が高くなります。

契約を更新されない予兆を感じたら取るべき行動

派遣契約を更新されない予兆を感じたら、次のような行動を取ることをおすすめします。

  • 派遣元の担当者へ相談する
  • スキルを高めて必要不可欠な人材になる
  • 仕事のやりがいを見つけて仕事を楽しむ
  • スケジュールの管理方法を見直す
  • 契約終了後の選択を考える

派遣元の担当者へ相談する

契約を更新されないかもしれないと感じたら、まずは派遣元の担当者へ相談しましょう。現在の仕事の状況やどういった予兆を感じたかなどを相談すると、具体的なアドバイスをくれたり、派遣先企業へ何か探りを入れてくれるかもしれません。

基本的に派遣先企業は、派遣社員に問題があった場合でも派遣社員本人に直接言わず、派遣元企業に苦情を入れます。派遣社員本人に伝わっていないだけで派遣元企業の方は何らかの情報を持っている可能性があるため、相談してみると気付かなかった問題点などが見えてくることもあるでしょう。

スキルを高めて必要不可欠な人材になる

派遣社員と言えど、仕事のスキルを高めることは大切です。仕事のミスが多い、効率が悪く時間がかかってしまうと感じている方は特にスキルアップに努めましょう。スキルを高めることで仕事のミスが減り、業務効率が上がるだけでなく、職場に必要不可欠な人材となり、契約更新の可能性が高まります。

現在は本や通信講座、動画教材など様々な学習方法があります。その中でも無料で利用できる学習ツールや、YouTubeで見られるスキルアップ動画など無料で学べる環境も進歩しているため、工夫次第ではお金をかけずに学習することが可能です。

自分の成長を感じることができれば仕事も楽しく感じることができるかもしれないので、ぜひスキルアップに努めてください。

仕事のやりがいを見つけて仕事を楽しむ

仕事への熱が入らず、仕事に取り組む姿勢を注意されたことがある方は、仕事に楽しみを見つけてみると良いでしょう。仕事に何らかの楽しみがあれば、仕事に取り組む姿勢も改善できるかもしれません。

業務内容自体が楽しいと感じなくても、仕事のスピードが上がったことに喜びを感じたり、自分の頑張りにご褒美を作ったりするのも良いでしょう。ちょっとしたゲーム感覚で今より良いパフォーマンスが発揮できるような仕掛けを自分で作ってあげると、だんだん仕事が楽しく感じるかもしれません。

スケジュールの管理方法を見直す

自分の都合で遅刻・欠勤・早退を繰り返している人は、今の方法では適切な自己管理ができていないと言えます。生活リズムを見直す、スケジュールの管理方法を見直すなどして早急に改善に努めましょう。

平日の過ごし方のルーティーンを見直し、自分の身体に負担がかからないスケジュールで過ごすことを意識すれば改善することができるかもしれません。寝坊が多い人は就寝時間の見直しとアラーム設定の見直し、体調を崩しやすい人は適度な睡眠・食事・運動のバランスを考慮して自己管理を徹底してください。

自己管理は社会人として最低限のモラルだということを自覚し、今の生活を見つめ直してください。

契約終了後の選択を考える

派遣先企業の都合による派遣契約終了は、派遣社員本人にはどうにもできない事情があります。派遣先企業の業績悪化などで契約終了の予兆を感じたら、早めに今後のキャリアをどうするか考えてみましょう。

派遣元企業の方に相談して新しい派遣先を探してもらう、新しい派遣会社に登録して新たな環境でやり直す、正社員を目指してみるなど、様々な選択肢があります。自分にとってより良い選択をするためにも、今後のライフプランを想定して早めの準備をすることが大切です。

【Q&A】派遣契約更新に関するよくある質問

Q1: 契約更新の可能性はどう判断すればいい?

以下の3つのポイントをチェックしてみましょう。

  • 新しい仕事を任されているか
  • 上司や同僚とのコミュニケーションに変化はないか
  • 会社の業績や組織変更の動きはないか

Q2: 直接上司に更新について聞いても大丈夫?

直接聞くのはあまりおすすめできません。まずは派遣会社の担当者に相談し、適切なタイミングで間接的に確認してもらいましょう。

Q3: 契約終了決定後でも覆すことはできる?

可能性は低いですが、以下の場合は交渉の余地があります。検討してみましょう。

  • 派遣先企業の都合による場合
  • 代替案(勤務条件の変更など)を提示できる場合
  • 特別なスキルや経験を持っている場合

Q4: 契約社員も同じような予兆があるの?

はい、契約社員でも同様の予兆が見られることがあります。特に「新しい仕事がもらえない」「上司の態度変化」は共通のサインです。

Q5: 派遣契約の更新回数に制限はありますか?

法的な更新回数の制限はありませんが、同一事業所での派遣期間は原則3年までです。3年を超える場合は直接雇用の申し込みなどの措置が必要になります。

Q6: 契約更新時の条件変更は可能ですか?

可能ですが、労働者に不利益な変更には本人の同意が必要です。時給の減額や勤務時間の短縮などは慎重に検討しましょう。

Q7: 派遣先企業で正社員登用の話が出た場合の対応は?

まず派遣元の担当者に相談し、雇用条件や手続きについて詳しく確認することが重要です。直接雇用への切り替えは慎重に検討しましょう。

予兆を感じたら早めの準備で対策しましょう

契約を更新されない理由の中には、派遣先の会社都合によるものもありますが、派遣社員自身が原因の理由もいくつかあります。予兆を感じたら周りに気を配り、どのような理由で契約を終了される可能性があるか察知して、早めに対処することが大切です。

不安を感じた時は一人で抱え込まず、派遣会社の担当者や信頼できる人に相談することが重要です。適切な対策を取れば、契約継続の可能性を高めることができ、万が一の場合も次のステップにスムーズに移行できます。

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