工場では普段の生活で扱うことのない機械や設備を扱うことがあります。その中には専門的な資格を取得していなければ扱うことができないものもあるでしょう。特に、危険が多く伴う作業は、専門的な資格を有していて十分な知識のある人にしかできない作業が多いです。
今回のコラムでは、工場勤務で役立つ資格を5つ紹介します。資格を取得するとどのようなことができるようになるのか、どのように勉強すれば資格取得に近づけるかなど詳しく解説します。
工場勤務で資格を取得するメリット
おすすめの資格を紹介する前に、資格を取得することのメリットを説明します。工場勤務で資格を取得することには、以下のようなメリットがあります。
- 業務の幅が広がる
- 昇給・昇格に繋がる
- 転職に有利になる
業務の幅が広がる
冒頭でも説明した通り、工場では化学製品の取り扱いや電気工事など資格を持っていなければ任せてもらえない仕事が多くあります。誰でもできる仕事ではなく、専門性のある業務に従事したいと考えている人は、携わりたい業務に関係する資格を取得することをおすすめします。
資格を取得することで携わりたい業務を担当する要件を満たせるだけでなく、その熱意が上司や先輩に伝わり、今より上位の業務を任せてもらえるかもしれません。例え資格の試験に合格できなかったとしても、スキルアップに繋がる良い機会になるでしょう。
昇給・昇格に繋がる
資格に対して資格手当を設けている企業も多いため、業務に直結する資格を取得することで、給料が上がる可能性があります。難易度が高い資格や市場価値の高い資格であれば、手当の支給額も大きくなるでしょう。
さらに資格手当をもらえるだけでなく、上司の評価が高まり、結果的に昇給や昇格を早めてくれることに繋がるでしょう。資格だけが評価の全てではありませんが、早く昇給・昇格したいと考えている人は積極的に資格を取得しましょう。
転職に有利になる
転職をする際、資格を持っていることは大きなアピールポイントになります。資格を持っていると自身のスキルを証明することができ、転職先の企業でも即戦力として活躍できるというアピールができるでしょう。
資格を持っていると採用が有利になるだけでなく、待遇にも差が出てくるかもしれません。応募先企業が求める資格や、難易度の高い資格を持っていれば、通常よりも良い給与やポジションで採用してくれる可能性も大いにあります。
もし今の職場から転職しようと考えている方は、今のうちに資格を取得しておくことで転職を有利に進められるでしょう。
工場勤務で役立つおすすめの資格5選
工場勤務で役立つおすすめの資格は以下の5つです。
- 電気工事士
- 危険物取扱者
- フォークリフト運転技能者
- 衛生管理者
- 機械保全技能士
電気工事士
電気工事士は、住宅やビル、工場などあらゆる建物の電気設備の工事を行うために必要な国家資格です。第二種電気工事士と第一種電気工事士に分けられ、2つの違いは以下の通りです。
- 第二種電気工事士・・・600ボルト以下で受電する設備の工事ができる。
- 第一種電気工事士・・・最大電力500キロワット未満の施設(工場、ビル)などの工事ができる。
一般住宅や店舗などであれば、第二種電気工事士の資格を取得していれば問題なく工事することができます。工場やビルなど規模の大きな施設になると第一種電気工事士を取得することが望ましいでしょう。
工場において、生産設備が故障した際に電気のトラブルに対処する必要があります。電気工事は感電による事故の危険が伴うため、専門的な知識をもって正しく機器を扱わなければなりません。
電気工事士の資格を取得することで、安全かつ迅速にトラブルに対応できるようになり、貴重な人材として職場で重宝される存在になるでしょう。
電気工事士の資格試験の概要は、以下の通りです。
受験資格 | 特になし |
---|---|
合格率 |
・第一種電気工事士・・・40~54% ・第二種電気工事士・・・59~65% |
試験形式 |
・筆記試験・・・4択問題 ・実技試験・・・回路製作 |
受験料 |
・第一種電気工事士・・・¥11,300 (インターネット申込みは¥10,900) ・第二種電気工事士・・・¥9,600 (インターネット申込みは¥9,300) |
目安学習期間(筆記試験) |
・第一種電気工事士・・・60~150時間 ・第二種電気工事士・・・50~100時間 |
公式サイト | https://www.shiken.or.jp/ |
危険物取扱者
危険物取扱者とは、消防法で定められた危険物を取り扱ったり、管理したりするために必要な国家資格です。危険物とは燃えやすい物質のことで、代表的なものとして灯油やガソリンなどがあります。
危険物を取り扱うガソリンスタンドや化学工場などは、危険物取扱者の資格を持った人が必要です。化学工場ではなくても、多くの工場では危険物に分類される物質を取り扱う機会があるため、危険物取扱者の資格を取得すると会社にとって欠かせない人材となるでしょう。
危険物取扱者には、甲種・乙種・丙種の3区分があり、甲種が最難関の資格で全ての危険物を取り扱うことができます。乙種は物質の性質ごとに、1~6類に分類されています。
危険物取扱者の資格試験の概要は、以下の通りです。
受験資格 |
・甲種・・・以下のいずれかの条件を満たすこと ①乙種危険物取扱者免状を有する ・乙種・・・特になし ・丙種・・・特になし |
---|---|
合格率 |
・甲種・・・30~40% ・乙種・・・60~70%(第4類のみ30%前後) ・丙種・・・50%前後 |
試験形式 | 筆記試験のみ・・・5択問題 |
受験料 |
・甲種・・・¥6,600 |
目安学習時間 |
・甲種・・・70~90時間 ・乙種・・・40~60時間 ・丙種・・・20~40時間 |
公式サイト | https://www.shoubo-shiken.or.jp/kikenbutsu/ |
初めて危険物取扱者の資格を取得しようとする場合、乙種第4類(乙4)から取得することをおすすめします。乙種第4類に分類される危険物は引火性液体と定義されており、灯油やガソリン等が第4類に該当します。
様々な業種において需要のある物質であり、普段の生活でも馴染みがあるため、比較的覚えやすい分類といえます。受験者が多く、テキストが充実しているため、勉強しやすい環境が整っているのも1つの特徴です。
フォークリフト運転技能者
フォークリフトは一般的に物流現場で使用されているイメージが強いと思いますが、工場でも完成した製品や重い部品の運搬に使われています。完成した製品をパレットと呼ばれる箱に詰めて、倉庫や配送トラックに積んだり降ろしたりします。
フォークリフト運転技能者の資格を持っていなければ、最大荷重1トン以上のフォークリフトを運転することができません。フォークリフト運転技能者の資格は国家資格であり、持っていると通常のライン作業だけでなく、フォークリフトを使った運搬作業を任せてもらえるでしょう。
フォークリフト運転技能者の資格試験の概要は、以下の通りです。
受験資格 |
特になし (普通自動車免許を持っている場合、学科講習時間短縮) |
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合格率 | 90%以上 |
試験形式 |
・学科講習・・・11時間 (普通自動車免許を取得している場合は7時間) ・実技講習・・・24時間 |
受験料 | 講習機関による(一般的には3~5万円) |
目安学習時間 | 事前学習不要 |
公式サイト | http://rikusai.or.jp/event_schedule/forklift_niyaku/ |
フォークリフト運転技能者は講習を修了すれば合格することができます。講習機関は各都道府県労働局ごとに決まっており、開催日や受験料が異なるためそれぞれの講習機関の案内に従って申し込んでください。
他の資格と比較して取得難易度が低く、事前学習をしなくても取得できるためおすすめの資格です。取得することで待遇が見直されたり、業務の幅が広がるでしょう。
衛生管理者
衛生管理者とは、作業環境の衛生管理や労働者の健康管理など、労働環境の衛生管理を担当する資格です。衛生管理者に任命されると労働者に対する衛生教育や健康の保持・増進のための措置など、あらゆる業務を担当する責任のある立場として活躍できるようになります。
常時50人以上の労働者を使用する事業者は専属の衛生管理者を選任しなければならないため、多くの職場で必要とされる資格です。衛生管理者の資格は国家資格で、あらゆる業界や職場で活躍できるため、おすすめの資格といえます。
衛生管理者の資格は、第一種と第二種に分類されています。第一種は全ての業種の事業場において衛生管理者となれますが、第二種は有害業務と関連の少ない業種に限られます。工場は有害業務を取り扱う可能性が考えられるため、第一種を取得しておくべきでしょう。
衛生管理者の資格試験の概要は、以下の通りです。
受験資格 |
・高等専門学校や大学を卒業したもので、労働衛生の実務に1年以上従事した経験があること ・省庁大学校を卒業したもので、労働衛生の実務に1年以上従事した経験があること ・高等学校等を卒業したもので、労働衛生の実務に3年以上従事した経験があること ・学歴に関係なく、労働衛生の実務に10年以上従事した経験があること |
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合格率 |
・第一種衛生管理者・・・40~50% ・第二種衛生管理者・・・50~55% |
試験形式 | 筆記試験のみ・・・5択問題 |
受験料 | ¥6,800 |
目安学習時間 |
・第一種衛生管理者・・・90~110時間 ・第二種衛生管理者・・・50~70時間 |
公式サイト | https://www.exam.or.jp/ |
機械保全技能士
機械保全技能士とは、工場で稼働している機械の修理や定期メンテナンスなど、あらゆる機械のトラブルを解決する保全作業員としての知識を深めることができる資格です。機械は稼働を続けるといずれ故障します。
機械が故障すれば、後工程に迷惑がかかってしまうだけでなく、納期の遅れや品質不良を引き起こす可能性があるため、早急に対処しなければなりません。
機械保全技能士の資格を取得することで、機械の構造や仕組みに詳しくなり、保全業務を安全に、且つ、正確に遂行できるようになるでしょう。保全業務は様々な設備や部品の構造を理解しなければならず、危険も伴う業務内容が多いため、幅広い専門知識が必要です。
そのため、保全業務を任せられる人材というのは企業にとっては貴重な存在。機械保全技能士の資格を取ることで替えの利かない人材として重宝されるでしょう。
機械保全技能士の資格試験の概要は、以下の通りです。
受験資格 |
・特級・・・1級合格後5年以上の実務経験 ・1級・・・7年以上の実務経験 ・2級・・・2年以上の実務経験 ・3級・・・特になし |
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合格率 |
・特級・・・20~40% ・1級・・・20~30% ・2級・・・30~40% ・3級・・・65~75% |
試験形式 |
・筆記試験・・・多肢択一 ・実技試験・・・計画立案等作業試験 |
受験料 |
・学科/実技両方・・・¥20,000 ・学科のみ・・・¥4,600 ・実技のみ・・・¥15,400 |
公式サイト | https://www.kikaihozenshi.jp/ |
資格取得のコツ!おすすめの勉強方法
資格を取るには相応の勉強をする必要があります。勉強方法のコツを知っていれば、効率よく勉強を進めて短期間で取得できるかもしれません。効率よく勉強を進めるコツは以下の通りです。
- 質より量を重視する
- 過去問題を解く機会を多くする
- 完璧を求めない
質より量を重視する
資格の学習をする際は、参考書を購入して内容を覚えることから始めることが一般的でしょう。内容を覚えることは大事なのですが、1回で覚えようとして参考書をゆっくり丁寧に進めるよりも、何周も繰り返して量をこなすことがコツです。
参考書の内容を全て網羅して、綺麗にノートにまとめることが間違いだとは言いません。しかし、試験に出やすい部分や重要な部分の判断ができない状態で全てを覚えることは効率が悪く、多くの時間を必要としてしまうでしょう。勉強の質よりも量を意識して取り組むと効率的に進めることができます。
過去問題をたくさん解く
参考書の内容をインプットすることも大切ですが、資格試験は過去問題をたくさん解いて問題に慣れることが合格への近道です。過去問題をたくさん解くことで、出題傾向や問題として出やすい分野が把握できるため、復習も効率的にできるでしょう。
過去問題を解くことで自分の苦手な分野や、得意とする分野が明確になり、苦手な分野を集中して復習することで徐々に点数を伸ばしていくことができます。実際の試験時間と同じ時間で練習すると、試験のプレッシャーに慣れたり、時間のかかる問題は後回しにして解ける問題から解いたり、試験対策をすることもできるでしょう。
完璧を求めない
勉強を進めていると、自分の得意分野・苦手分野がわかるようになってきます。苦手分野を何度復習してもなかなか覚えられなかったり、計算問題に時間がかかってしまったりすると不安になるかもしれません。
そんなときは、「この分野は苦手だ」と割り切ってしまい、他の分野でしっかり問題を解けるようにする方が合格への近道になります。試験の合格点は決まっているので、苦手分野以外で合格点を取ってしまえば合格することができます。完璧を求めて、どちらの勉強も中途半端にするより、得意を伸ばしてしっかり点数を稼げるようにしましょう。
苦手分野を克服できることが理想ですが、試験本番は時間が決まっています。苦手分野の問題を解くことに時間をかけてしまい、次に進むのが遅れれば合格は遠のいてしまうでしょう。
工場で役立つ資格を取得してさらに活躍しよう
工場勤務の方におすすめの資格と勉強方法を紹介しました。資格を取得するためには、お金や時間をかけなければならないため、なかなか挑戦できないという方もいるかもしれません。
しかし、専門的な資格を取得して業務の幅を広げたり、知識・技能が向上したりすることで、将来的に給与が上がったり、役職に就けたりする可能性が高まります。仕事のやりがいにも繋がる可能性があるため、工場でさらに活躍したいと考えるならば、資格を取得することをおすすめします。