品質管理はQC(Quality Control)とも呼ばれ、製品の品質を保ったり不良品の販売を防いだりするために必要な業務で、年々重要性が高まっています。
この記事では、品質管理者の仕事内容と求められる能力について解説しています。役立つ資格にも触れているので合わせてご覧ください。
目 次
品質管理(QC:Quality Control)の仕事内容とは
品質管理と似た業務に、品質保証があります。製品の質を保つという意味では両者同じ役割を担っていますが、業種や企業によって対応する範囲が異なります。
一般的に、品質管理は製造段階、品質保証は製品の設計から販売後のカスタマーサービスまでを対象にしていることが多く、品質管理は品質保証の一部と考えられています。以下、品質管理の仕事を具体的に見ていきましょう。
製造工程での品質管理
製造工程での品質管理は、工程表に基づき滞りなく現場が稼働するようにスケジュールを組んだり、作業手順をまとめたりします。稼働したあとは、進捗管理や製品のチェックを行い、問題があれば現場に指示を出さなければなりません。
万が一不具合や不良が発覚した場合は、再発防止策を提案するほか、考えられる同様のトラブルを未然に防ぐ工夫も必要になります。
部品・原料の品質管理
品質管理は、自社製品だけでなく、業者から仕入れた部品や原材料についても行われます。部品や原料が基準を満たしていなければ製品の完成度に影響を及ぼすため、規格や品質のチェックは必須業務です。定期的に監査を行うケースもあります。
業種によって検査内容は異なりますが、成分や異物の確認、保管状態の把握などを行い、不備があった場合には事故につながらないよう対処します。
品質管理職の年収
厚生労働省が提供している職業情報提供サイトjobtagによると、品質管理技術者の全国平均年収は644.5万円とされています。
ただし業種によって大きく差があり、食料品と化学製品では平均的な年収ベースで200万円ほどの開きがあるケースもあります。もちろん年齢や働いている地域によっても差異があるので一概には言えませんが、正社員として働く場合には高めの年収が期待できます。
品質管理担当者に求められる能力
品質管理は力仕事ではないので簡単な業務と思われがちなうえ、地味な印象を持たれますが、業務内容は多岐にわたるため、多くの能力が求められます。以下、品質管理者に求められる能力を確認していきましょう。
- データ分析
- コミュニケーション能力
- リスクマネジメントスキル
データ分析
品質管理担当者には、データを正しく理解する能力が必要です。グラフや数字を見て判断したり、理解したりする力が重要になります。生産ラインでトラブルが起こった際には、すぐに現状を把握し対処しなければなりません。
原因の分析や対策には、以下の「QC七つ道具」と呼ばれるツールや集めたデータを活用して対処します。
- ヒストグラム
- パレート図
- 散布図
- 特性要因図
- グラフ
- 管理図
- チェックシート
これらのツールを完璧に使いこなすのは難しいですが、上手く組み合わせて使えるようになると品質管理のレベルが上がります。
コミュニケーション能力
品質管理の仕事は、社内外の多くの人と関わるため、コミュニケーション能力が必須です。
品質管理者は、製品の質を高めるため、製造部門や企画・開発部門の人たちと意見を交わすことも少なくありません。
また、製品の不具合や不良品が出てしまった場合には、営業担当者とともに取引先に出向いて説明をしなければならない場面もあります。
品質管理者として状況を正しく説明することができなければ、会社の信用も落としかねないため、冷静にコミュニケーションを図ることが大切です。
リスクマネジメントスキル
起きうるトラブルを想定し防止策を講じるほか、迅速に対処できるようシミュレーションしておくことで被害を最小限にとどめることができます。完璧に思えるルールやマニュアルでも、予想外の問題は起こるものなので、状況に応じて適切な行動をとることが求められます。
製造現場では、機器のトラブルや人為的なミスなど、さまざまな問題が起こる可能性があり、それらをいかに防いだり、適切に対処したりできるかが大切です。そのため、品質管理者には「問題に対処できる能力」はもちろん、「問題を未然に防ぐ力」も重要になります。
品質管理の仕事に向いている人
品質管理の業務には向き不向きがあります。ミスやトラブルを見過ごしたり誤魔化したりすれば会社の損失につながるため、不誠実な人には向かない仕事です。以下、品質管理の仕事に向いている人の特徴をご覧ください。
- 変化や違和感に気付きやすい
- 冷静に状況判断ができる
- 論理的に考えられる
変化や違和感に気付きやすい
業種によって異なりますが、品質管理は「検査システム」や「チェックシート」などを用いて行うことが一般的です。
目で見る、データを踏まえて判断するなどさまざまな確認方法がありますが、小さな違和感や変化でも見落とせばクレームやリコールにつながりかねません。そのため、日頃から物事の違和感や変化に敏感だという人は品質管理に向いているでしょう。
日常生活では「細かい」「神経質」などと指摘される性格も、品質管理の現場では強みになります。
冷静に状況判断ができる
トラブルが起こったときにパニックになってしまうと、かえって問題を大きくしたり重要な問題を見逃してしまったりする可能性があります。冷静に状況を判断できれば、今自分がすべきことや、誰にどんな指示を出すべきかといったことが迅速に導き出されます。
冷静に行動できる人はその場の感情に左右されることも少ないので、正しい決断を最速で行えるでしょう。普段からあまり動じない、思考の切り替えが早いという人は品質管理者に向いています。
論理的に考えられる
データを見て分析できるだけでなく、相手に分かりやすく説明できる人も品質管理に向いています。
分かりやすく解説するためには、論理的に考えた上で要点を押さえなければなりません。自身の感情や余計な情報を入れてしまうと途端に分かりにくくなってしまうので、伝えるべきことを正確に伝えられる力がある人は適任といえるでしょう。
勘や経験に頼らず論理的に原因と解決策を追求し、再発防止案を組み立てられる能力が品質管理には重要です。
品質管理に役立つ資格
品質管理でキャリアアップを図る場合は、資格の取得も検討してみましょう。以下、品質管理の技術者に役立つ資格の一部を紹介します。
- 品質管理検定(QC検定)
- 信頼性技術者資格認定制度(JCRE)
- QCサークル指導士資格認定制度
品質管理検定(QC検定)
品質管理において最も一般的な資格で、品質管理に関する幅広い知識がレベルに応じて出題されます。
- 1級/準1級
- 2級
- 3級
- 4級
上記すべての級において実務経験がなくても受験できるため、製造業での就職に備えて受験するのも良いでしょう。
受験資格は問われませんが、2級以上は実務経験がないと合格することは難しいとされるので、自分のレベルに合った級を受験してください。
信頼性技術者資格認定制度(JCRE)
信頼性に関わる知識を持った品質管理や品質保証に関わる技術者を認定、評価登録する制度です。
初級に受験資格は設けられていませんが、中級からはレポートや論文を提出して実務経験を証明しなければなりません。実務経験者でも、中級以上に合格するためには信頼性について基礎から学ぶ必要があり、自身のスキルアップにつながるでしょう。
QCサークル指導士資格認定制度
QCサークル活動とは、品質管理を向上させるために企業が行う改善活動のことを指します。製品の品質向上のため多くの企業で取り入れられていますが、活用できずに形骸化してしまったり成果に結びつかなかったりといった企業は少なくありません。
時代遅れと廃止する企業もある一方で、QCサークルを有効活用して成果を上げている企業もあります。指導士の資格があれば、社内のQCサークル活動を見直し、成果アップに貢献できるかもしれません。
品質管理でキャリアアップを目指そう
品質管理は商品の質を守り、会社の信頼を維持するためにかかせない業務です。生産工程の管理から品質チェックまで、業務内容は多岐にわたり、データ分析やリスクマネジメントといったスキルが求められます。
トラブルが起こっても冷静に状況判断ができ、論理的に考えて対処できる人は生産管理者に向いています。品質管理でキャリアアップを目指す場合には、資格の取得も有効です。業種や企業によって有用な資格は異なるため、自分のキャリアに活かせる資格を探してみましょう。