求人を検索していると、「入社祝い金〇万円支給」のように、入社祝い金を支給することをアピールしている求人を見つけることがあります。就職が決まるだけでなく祝い金までもらえるということで、魅力的に感じる方も多いのではないでしょうか。

一方で、「なんで就職が決まっただけでお金がもらるんだろう。」「入社祝い金をもらったら厳しい条件があるのでは。」と疑問に思う方もいると思います。

今回は、入社祝い金がなぜ支給されるのか、その仕組みを詳しく解説します。一般的な支給条件やメリット・デメリットも詳しく紹介するので、最後までご覧ください。

入社祝い金とは?

そもそも、入社祝い金とはどういうものなのでしょうか。

入社祝い金とは、会社が募集している求人に応募し、採用が決まって入社すると支給される特別手当・一時金のことです。入社祝い金は必ず支給されるわけではありませんが、慢性的に人手不足だったり、すぐに人手が欲しかったりする企業が、求職者からの興味を惹くために支給することが多いです。

入社祝い金は基本的に金銭で支払われます。入社祝い金と似たものに「入社特典」というものがありますが、入社特典は金銭以外のサービスを受けられるものが一般的でしょう。例えば、「寮費無料」や「提携施設の利用料割引」などです。

入社祝い金のからくり

入社祝い金には怪しいからくりはありません。企業が支給する場合と求人サイトが支給する場合があるので、それぞれの狙いを解説します。

企業から支給される場合

企業が入社祝い金を支給する目的は、主に以下の3つがあります。

  • 採用コストを削減するため
  • 入社後に長く働いてもらうため
  • 迅速に人員補充するため

採用コストを削減するため

「入社祝い金を支給することが、なぜ採用コスト削減になるのか」と疑問を持つ方も多いでしょう。それは採用方法の違いにあります。

通常、企業から直接入社祝い金を支給する場合、自社の採用サイトから応募して採用が決まった従業員に対して支払うことが一般的です。自社サイト以外でも様々な媒体で求人を募集していますが、それらの媒体から採用が決まった場合、企業は求人媒体に対して成功報酬を支払わなければなりません。

成功報酬の金額は、求人媒体によって異なりますが採用者の年収の15~30%程度が相場です。つまり、年収400万円の人材を1人採用した場合、求人媒体に対して60~120万円支払う必要があります。

上記のことから、入社祝い金を支給してでも自社サイトから採用した方が、企業側からすると採用コストをかけずに採用することができます。

入社後に長く働いてもらうため

企業は人材の採用に多くのコストをかけています。せっかく採用した人材がすぐに辞めてしまっては、採用コストが水の泡となってしまうので、それは何としても避けなければなりません。

入社祝い金の支給条件は後ほど解説しますが、入社が決まった時点で無条件に支給されるわけではなく、ある程度の期間働いてから支給されることが一般的です。少しでも採用者のモチベーションとなるように、入社祝い金を支給する企業もあります。

迅速に人員を補充するため

慢性的に人手不足の企業や、人手不足で業務に支障が出る企業は、一刻も早く新しい従業員を雇用したいと考えています。少しでも早く求人に応募してもらうため、求職者へのメリットとして入社祝い金を支給する企業も多いでしょう。

入社祝い金を支給すれば求職者の目に留まりやすくなるため、支給しないよりも早く新しい人材を採用できる可能性が高まります。

求人サイトから支給される場合

求人サイトから入社祝い金が支給される場合、主に以下の2つの目的があります。

  • 多くの実績を作るため
  • 他の求人サイトと差別化するため
  • マーケティング活動に活かすため

多くの実績を作るため

求人サイトは、企業からの掲載料や成果報酬で収益を確保しています。つまり、多くの求人を掲載すればするほど、多くの採用者を出せば出すほど、より多くの収益を得ることができるという仕組みです。

多くの採用実績を作ることで、求人を掲載したい企業だけでなく、仕事を探している求職者から信頼されることになり、求人も求職者も集まります。そのため、求人サイトはいかに多くの採用実績を作ることができるかが売上を上げる大きなポイントなのです。

少しでも多くの採用実績を作るために、入社祝い金を支給する求人媒体もあります。

他の求人サイトと差別化するため

企業は様々な求人サイトに求人を掲載することが一般的です。求人サイトが求人情報を差別化することはできないため、求職者からすればどの求人サイトから申し込んでも同じ条件で採用されることになります。

しかし、上記でお伝えしたように求人サイトは少しでも多く採用実績を作りたいと考えています。入社祝い金を支給することで、他の求人サイトと差別化を図ることが狙いです。

マーケティング活動に活かすため

多くのユーザーに快適に使ってもらうために、ユーザーアンケートを行っている求人サイトも珍しくありません。採用が決まった人に対してアンケートを実施することで、ユーザーのリアルな感想やサービスの改善点、強みなどを聞くことができます。

しかし、ユーザーにとってメリットの少ないアンケートは、ユーザーからすると面倒な作業となるため、回答率は良くないでしょう。そこで、アンケートに答えてもらうことを条件に、入社祝い金を支給する求人サイトがあります。

アンケート回答のお礼として入社祝い金を支給することで、アンケートの回答率が上がり多くのデータを集めることができます。集めたデータからサービスを改善すれば、より多くのユーザーに快適に使ってもらえるようになり、結果的に売上を上げることに繋がるでしょう。

このようなマーケティング活動を行う上で、入社祝い金を支給してユーザーからデータを集めるという求人サイトもあります。

一般的な入社祝い金の支給条件

先述の通り、入社祝い金は採用が決まった時点で無条件に支給されるものではありません。企業が支給する場合でも、求人サイトが支給する場合でも、支給条件が定められていることがほとんどでしょう。

企業から入社祝い金が支給される場合、一般的には

  • 〇ヵ月以上勤務
  • 入社後1ヵ月間の出勤率が〇%以上
  • 入社〇ヵ月経過で〇万、さらに〇ヵ月経過で〇万

のような条件が挙げられます。

支給条件は企業や求人サイトによって様々です。入社祝い金を支給している場合は、公式サイトに情報が掲載されていることが多いので、事前に確認しましょう。

入社祝い金の支給金額の相場は?

入社祝い金について最も気になるのが、どれくらいの金額がもらえるのかということだと思います。先述の通り、支給金額は企業や求人サイトによって様々で、企業から支給される場合と求人サイトから支給される場合でも相場は異なります。

企業から支給される場合、10~20万円程度が一般的な相場でしょう。中には月給並みの金額(20~30万円)を支給する会社もあります。

一方で求人サイトから支給される入社祝い金は企業と目的が異なるため、企業と比較すると少額であることがほとんどです。1万円以下の金額であることも珍しくありません。

入社祝い金のメリット

求職者にとって入社祝い金は、以下のメリットがあります。

  • 就職への意欲に繋がる
  • 入社後に金銭的余裕が生まれる
  • 仕事を継続するモチベーションになる

就職への意欲に繋がる

仕事をする目的ややりがいは人それぞれ異なりますが、給料が最も大きなモチベーションになるという方は少なくないでしょう。多くの給料がもらえることは、就職への大きな意欲に繋がります。

入社1年目はボーナスが支給されないことも珍しくありませんが、入社祝い金がモチベーションとなって就職を決断することもあるでしょう。

入社後に金銭的余裕が生まれる

入社後、なるべく早い段階で入社祝い金が支給されれば、金銭的な余裕を生むことができます。転職するまでに期間が空いてしまった場合や、もともと貯金が多くなかった場合は、入社後初めての給料が支給されるまで、金銭的に厳しい状況が続くという人も珍しくありません。

他にも、新たな道具を揃えなければならなかったり、新生活を始めるために引越しをしなければならなかったりと、環境が変わることによって出費がかさむ場合もあります。就職によってお金が必要になる場面もあるので、入社祝い金があることによって金銭的な余裕を生むことができるでしょう。

仕事を継続するモチベーションになる

入社祝い金は入社後に仕事を継続するモチベーションになります。先述したような支給条件を満たさなければ、入社祝い金は受け取ることができません。

実際に就職してみると、なかなかモチベーションが上がらなかったり、うまくいかないことが続いたりと仕事に対して悩むことも増えてくるでしょう。そうなった場合でも、入社祝い金があることで、すぐに辞めず「入社祝い金がもらえるまでは頑張ろう」という動機付けになります。

入社祝い金のデメリット

入社祝い金は、決してメリットばかりではありません。以下のようなデメリットもあります。

  • 入社祝い金の支給条件が厳しい場合がある
  • 入社祝い金に釣られて失敗する

入社祝い金の支給条件が厳しい場合がある

入社祝い金の支給条件は、企業や求人サイトによって異なります。就職する前は「この条件なら満たせるだろう」と思っていたとしても、いざ就職してみると条件が厳しく感じられることがあるかもしれません。

例えば、入社祝い金の支給条件に業績を求められることがあります。入社時の説明では簡単な条件だと説明を受けていたとしても、実際に働いてみると難易度が高く条件を達成できない可能性もあるでしょう。

条件を満たすことができなければ入社祝い金が支給されることはありません。金額だけでなく、支給条件もしっかり理解したうえで応募しましょう。

入社祝い金に釣られて失敗する

入社祝い金の金額や条件に釣られて就職先を決めると、失敗してしまう可能性があります。どれだけ入社祝い金の金額が多かったり、支給条件が簡単だったりしても、それだけで就職先を判断するのは辞めましょう。

入社祝い金にばかり注目していると、仕事内容や福利厚生、賞与や昇給などの待遇を見逃してしまうかもしれません。長く働き続けることを意識して、入社祝い金以外の条件をしっかり確認して就職先を検討しましょう。

再就職手当がもらえる可能性も

入社祝い金は企業や求人サイトから支給されるものですが、国から手当を支給してもらえる制度もあります。それが「再就職手当」です。

再就職手当とは、失業保険の受給を受けている人が、受給期間が多く残っている段階で早期に再就職した場合に受け取れる手当です。失業した人がより早く安定した職業に就くことを促進するために、再就職手当が支給されます。

再就職手当の支給を受けるためには、以下の8つの条件を満たさなければなりません。

  1. 受給手続き後、7日間の待機期間満了後に再就職、または事業を開始すること
  2. 失業手当の受給残日数が、1/3以上残っていること
  3. 前職と再就職先の間に密接な関わり合いがないこと
  4. ハローワーク、または職業紹介事業者の紹介で就職すること
  5. 再就職先で、1年を超えて勤務する見込みがあること
  6. 雇用保険に加入していること
  7. 過去3年以内に、再就職手当や常用就職支度手当の支給を受けていないこと
  8. 受給資格決定後に、再就職先の採用が内定すること

上記のように、様々な条件が定められていますが、受給資格がある方はぜひ申請して手当を受け取りましょう。

入社祝い金に怪しいからくりはない!

入社祝い金について詳しく解説しました。

入社祝い金は、企業から支給されるものと求人サイトから支給されるものがあり、それぞれ目的があって必要コストとして支給しています。怪しいからくりがあって支給されているわけではないので、安心して受け取りましょう。