一度退職した会社に再び戻って働くことを「出戻り転職」と呼ぶことがありますが、近年この転職スタイルが注目を集めています。出戻り転職は、既に職場の環境や文化を理解しているため、スムーズに再スタートが切れるといった利点があるのが特徴です。
一方で、同僚や上司に歓迎されない、以前の退職理由が再び問題になる可能性がある、などのデメリットも存在します。
この記事では、出戻り転職のメリットとデメリットを詳しく解説し、さらに成功する人の特徴についても説明します。出戻り転職を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
転職して出戻るのはアリ?
日本では、一度会社を辞めた人が出戻ることを良しとする企業は多くありませんでしたが、最近は出戻り転職を歓迎する企業が増えています。これは、キャリアへの価値観が変わっていることが大きく影響を与えていると考えられ、転職によって経験値を高めることがビジネスパーソンのスタンダードになりつつあります。
また、労働人口の現象を背景に人手不足に悩む企業も多く、出戻りであっても受け入れるという姿勢の会社も少なくありません。ただし、すべての人が出戻り転職に成功するとは限らないので、慎重に検討する必要があるでしょう。
出戻り転職のメリット
出戻り転職には、「慣れ親しんだ環境で働ける」「雇用の条件が良くなる可能性がある」など、さまざまなメリットがあります。
以下、それぞれ詳しく見ていきましょう。
- 慣れた環境で働ける
- 条件が良くなる可能性がある
- 状況によっては即戦力として活躍できる
慣れた環境で働ける
前職への再就職は、慣れ親しんだ環境で働ける点が大きなメリットです。機器の操作や備品の保管場所、仕事の流れなどを一から覚える必要がないので、ほかの会社への転職に比べて負担が少なく済みます。
メンバーや人間関係に大きな変化がなければ、よりスムーズに馴染めるでしょう。社風は実際に働かなければわからないことが多いので、それを知っているだけでも気が楽です。
条件が良くなる可能性がある
会社側から出戻りを提案された場合には、以前より良い条件で働ける可能性があります。最近は、他社で働いた期間のキャリアや、実績に応じて報酬を上乗せする制度を取り入れている企業も見受けられます。
もちろん出戻りによって会社側にメリットがなければ交渉の余地はないかもしれませんが、リソース不足が深刻な場合などは、条件面について協議することもできるでしょう。
状況によっては即戦力として活躍できる
以前と同じ職種やポジションへ復帰できる場合は、即戦力として活躍できる可能性があり、成果を出しやすいのが利点です。即戦力の採用は、会社側にも新人教育にかかる研修コストを抑える、人員不足に対して迅速に対応できるといったメリットがあります。
特定のスキルや会社が求めるキャリアを持っている場合は、在籍中と同じポジションに配属される可能性が高くなるでしょう。
出戻り転職のデメリット
出戻り転職には、多くのメリットがある一方でデメリットも存在します。
デメリットを把握しておかなければ、出戻り転職に失敗する可能性が高くなるので注意が必要です。
- 以前と同じ条件で働ける保障はない
- 出戻りを快く思わない人もいる
- 後輩が上司になることもある
以前と同じ条件で働ける保障はない
出戻りだからといって、以前と同じ条件で働けるとは限りません。自身が抜けた後に他の誰かが後任として入る場合が多いため、ポジションが空いていない可能性を留意しておきましょう。
また、在職中の評価があまり良くなかった場合は、提示される給与や雇用形態、勤務時間などが大きく変わることもあります。経験があるから同じ条件で働けるだろうと期待していると、「思っていた待遇じゃない」と不満を抱える事態になりかねません。
楽観視せず、きちんと雇用条件を確認することが大切です。
出戻りを快く思わない人もいる
出戻りに対して快く思わない人がいることも、念頭に置いておきましょう。転職に対して良くないイメージを持つ人は少なからずいますし、辞めたことに対して裏切られたように感じる人もいます。
たとえ円満に辞めていた場合であっても、すべての人に歓迎されるとは限りません。以前は仲が良かった人でも、同じような人間関係に戻れる保障はなく、出戻りを後悔する原因になることもあります。
後輩が上司になることもある
退職してからある程度の時間が経っている場合は、後輩や元部下が出世している可能性も考えなければなりません。出戻ったときに後輩が上司になることもあり、気まずい状況になってしまうケースも多く見受けられます。
部下になったにも関わらず先輩風を吹かせてしまうと、「面倒くさい人」「扱いづらい人」と思われかねないので気をつけましょう。
出戻り転職が成功しやすい人3つの特徴
出戻り転職が成功しやすい人には、円満退職している、転職でスキルアップしているといった特徴があります。以下、成功しやすい人の特徴を詳しく解説します。
- 円満に退職している
- 信頼や評価が高かった
- 転職によってスキルアップしている
円満に退職している
前職を円満に退職し、今も元上司や同僚と良好な関係を築いている人は、出戻り転職が成功しやすいでしょう。定期的に情報を得ていれば会社の状況がリアルタイムでわかるため、転職に適したタイミングも判断しやすくなります。
希望のポジションに必要なキャリアやスキルが確認できるほか、同僚や上司が出戻りのサポートをしてくれるかもしれません。場合によっては、人手不足や新規プロジェクトの立ち上げに伴って声がかかることもあるでしょう。
信頼や評価が高かった
在職中の仕事に対する姿勢や実績が高く評価されていたり、周りからの信頼が厚かったりした人は出戻り転職しやすいでしょう。惜しまれて退職した、目立つ実績があったという場合は出戻りを歓迎される可能性が高くなります。
また人間関係のトラブルがなく、誰とでも良好なコミュニケーションがとれる人材は受け入れられやすい傾向にあります。入社後、業務やチームにすんなり馴染めるだろうと思える人は、会社も安心して再雇用できるでしょう。
転職によってスキルアップしている
以前の退職理由が明確であったり、その転職によってスキルアップしていたりする人は出戻りでも成功しやすくなります。転職先で得たスキルや新しい視点は、元の職場に戻った際に即戦力として活かされ、より高度な業務に対応できる能力として評価されるでしょう。
また、外部での経験を通じて広がったネットワークや新たな業務手法は、企業にとっても大きな資産となります。企業側も、スキルを磨いた出戻り転職者を積極的に受け入れることで、競争力を高めることができるでしょう。
出戻り転職を避けるべきケース
前述のとおり、出戻りによる転職は誰でも成功するわけではありません。そのため、失敗する可能性の高い人は出戻りを避け、別の就職先を探す方が懸命です。
以下、出戻り転職を避けるべきケースについて解説します。
- トラブルが原因で辞めている
- 短期間でやめている
トラブルが原因で辞めている
職場の人間関係や、業務上のトラブルなどが原因で退職している場合、出戻り転職は避けた方がよいでしょう。たとえほかの職場で良い業績やキャリアを積んでいても、在職中にトラブルがあった人は、「また問題を起こすのでは」と懸念されがちです。
そのため、応募しても採用される可能性は低いことを念頭に置いて、出戻りに挑戦すべきか慎重に検討する必要があるでしょう。
短期間で辞めている
前職を短期間で辞めている場合も、再度入社できる可能性が低くなるでしょう。仮に採用されたとしても、「またすぐに辞めてしまうのでは」といった懸念から、責任のある仕事を任せてもらえないケースが多いです。
ただし、家族の介護や自身の病気療養など、やむを得ない事情があって短期で転職した場合には問題にならないケースもあるので、自身の状況によって判断してください。
出戻り転職は慎重に検討しよう
元の職場に再就職する「出戻り転職」は、慣れ親しんだ環境で働ける、即戦力として活躍できるなど、さまざまなメリットがあります。一方で、以前と同じ待遇や条件で働けるとは限らない、周囲から快く思われない可能性があるといったデメリットも存在します。
出戻りを考える際は、前職での評価や退職後に得たスキル、転職したい理由などを元にメリット・デメリットを照らし合わせ、慎重に検討することが大切です。