日雇い派遣を活用しようと考えているものの、ルールがよくわからないとお悩みではありませんか。法律によって、日雇い派遣は原則として禁止されていますが、例外があるため、それに該当すれば活用することが可能です。
このコラムでは、日雇い派遣の概要と例外について解説しています。労働者と受け入れる側の企業それぞれのメリット・デメリットもまとめているので、あわせてご覧ください。
日雇い派遣とは

まずは、日雇い派遣の概要を把握しておきましょう。
日雇い派遣は原則禁止
派遣法では、原則として日雇い派遣が禁止されています。短期間の雇用は不安定な労働環境を生みやすいため、派遣社員が安心して働けるよう、2012年の法改正で定められました。
現在は原則として31日未満の派遣契約はできず、企業側にも一定の雇用責任が求められるようになっています。ただし、労働者の収入や業務内容などの条件によっては、例外として日雇い派遣が認められています。
日雇いバイトとの違い
日雇い派遣と日雇いバイトは、似ているようで異なる働き方です。日雇いバイトは企業が直接雇用する形態で、派遣会社を介さずに労働契約が成立します。
一方の日雇い派遣は、派遣会社と労働者が契約を結び、別の企業に労働力を提供する三者構造です。そのため、法的な規制や給与の取り決め、福利厚生などに差があります。
日雇いバイトでは企業が直接労務管理を行うのに対し、日雇い派遣では派遣会社が管理責任を負うのが特徴です。
例外もある
日雇い派遣は原則禁止ですが、厚生労働省が定めた以下の業務については、例外的に認められています。
- ソフトウェア開発
- 機械設計
- 事務用機器操作
- 通訳・翻訳・速記
- ファイリング
- 調査業務
- 財務処理
- 取引文書作成
- デモンストレーション
- 添乗
- 受付・案内
- 研究開発
- 事業の実施体制の企画・立案
- 書籍等の制作・編集
- 広告デザイン
- インテリアコーディネーター業務
- 放送機器等の操作
- 建築物の模型等の製作
このような業務は専門性が高く、適正な管理に影響を及ぼす可能性が低いとして、例外的に日雇い派遣が認められています。企業は急な需要の増加や短期間のプロジェクトに派遣社員を活用しやすくなっています。
ただし、あくまでも業務内容が該当していなければならず、これらの業務に関わる単純作業などでは認められません。派遣契約時には、業務内容がこれらに該当するかしっかり確認することが大切です。
日雇い派遣が可能な労働者

日雇い派遣が認められるのは、前述の業務に携わる場合に限らず、労働者の状況によっても可能になるケースがあります。以下、日雇い派遣が可能な労働者について解説していきます。
60歳以上
日雇い派遣は原則禁止とされていますが、60歳以上の方は例外として認められています。これは、定年退職後の再就職や、年金を受給しながら働く高齢者に配慮した制度です。
年齢を重ねてからの就業では、短期や柔軟な働き方を望む人が多く、日雇い派遣がそのニーズに合致します。長期雇用の負担を避けつつ、派遣労働者の経験やスキルを活かせる点は、企業側にとっても有益です。
雇用保険の対象にならない学生
昼間学校に通っているフルタイムの学生は、基本的に雇用保険の適用対象外とされています。そのため、日雇い派遣の禁止対象からも除外され、例外的に働くことが可能です。
学業を優先しながら空いた時間に短期で働ける日雇い派遣は、学生にとって柔軟性があり魅力的な選択肢です。ただし、夜間や通信制の学生、休学中の人などはこの条件に当てはまりません。
内定が出たあとにその企業で働く場合は、すでに雇用保険の対象になっているため、とくに注意が必要です。
一定の収入がある人の副業
すでに安定した収入がある人においては、副業としての日雇い派遣が認められています。生業収入といわれるメインの収入が500万円を超えている場合、安定して収入を得られていると判断されます。
これにより、日雇い派遣であっても生活が不安定になることはないため、30日以下の派遣契約を結ぶことが可能です。フリーランスであっても年収が500万円以上であれば収入が安定しているとみなされ、日雇い派遣で働けます。
ただし、かけもちなど、2つの収入を合計して500万円を超えるような場合には、日雇い派遣は認められません。
主たる生計者ではない
労働者本人の収入が家計の中心ではない場合も、日雇い派遣で働くことが認められます。配偶者や親が世帯収入のほとんどを稼いでいれば、そのパートナーや子は日雇い派遣で働けます。
ただし、主たる生計者に関しては、前述のとおり収入が500万円を超えなければ、日雇いの派遣契約は結べません。以下のような家計の場合は、妻と子は30日以下の派遣契約が可能です。
- 夫:年収400万円
- 妻:年収120万円
- 子:年収80万円
【日雇い派遣】労働者側のメリット・デメリット

日雇い派遣で働くことが可能な人は、そのメリットとデメリットを把握したうえで、働き方を検討する必要があります。
メリット
スケジュールの柔軟さが、日雇い派遣の最大のメリットです。30日以下の契約、1日単位で働けるため、学業や家庭、副業との両立がしやすく、自分のライフスタイルに合わせた働き方が可能です。
そのため、決まった曜日だけ働きたい人や、空いた時間を有効活用したい人にとっては理想的な選択肢といえます。また、さまざまな職場での経験を積めるので、自分に合う仕事を見つけるきっかけにもなります。
登録から勤務までのスピードも早く、働きたいときにすぐ仕事が見つかる点も魅力です。
デメリット
一方で、日雇い派遣は継続的な収入を得にくく、生活の安定には向いていません。
仕事はその都度応募し、採用されないこともあるため、収入が不定期になりがちです。基本的に社会保険の対象にもならないので、扶養に入っていたり国民健康保険に加入していたりしないと、長期的な保障は乏しいです。
職場が毎回変わるケースが多いため、人間関係を築きにくく、業務内容の把握にも時間がかかります。スキルアップの機会が少なく、キャリア形成につながりにくい点もデメリットといえるでしょう。
【日雇い派遣】企業側のメリット・デメリット

日雇い派遣を受け入れる側の企業には、メリット・デメリットを理解し、適切に活用することが求められます。
メリット
必要なときに必要なぶんだけ人材を確保できる点が、企業側の大きなメリットです。繁忙期や突発的な欠員が出た際など、短期間だけ即戦力を投入できれば、効率的な人材活用が可能になります。
派遣会社が人選するため、採用コストや教育コストが抑えられ、業務の波に合わせて柔軟に体制を整えられます。契約期間が限定されているため、人件費のコントロールがしやすく、長期雇用によるリスクも軽減できるのが大きな利点です。
デメリット
一方で日雇い派遣は、短期就業であるため、業務内容をしっかり覚える前に契約が終了してしまうのが一般的です。そのため、定期的に受け入れる場合には、その都度、教育や指示が必要になります。
自社で人選できないため、派遣されてくる人のスキルや適性にはバラつきがあり、業務品質が安定しにくいリスクもあります。業務やチームプレーに適していない人が派遣されれば、管理負担が増えるかもしれません。
日雇い派遣のルールを把握しておこう
日雇い派遣は派遣会社と30日以下の雇用契約を結ぶ働き方ですが、労働環境が不安定になりやすいことから原則禁止されています。ただし、例外になる人と業務があるため、事前に該当するか確認しておきましょう。
労働者、受け入れ企業側それぞれにメリット・デメリットがあるため、それらを理解したうえで検討する必要があります。日雇い派遣のルールをしっかり把握し、不利益を被らないように活用していきましょう。