派遣社員として働くうえで、平均的な時給水準や相場は気になるポイントです。経験やスキルが増えるにつれて、適正時給で働けているのかといった疑問がわくこともあるのではないでしょうか。

そこで今回は、派遣社員の平均時給や、高めに設定されている理由などについて解説していきます。派遣社員が時給をアップさせる方法もまとめているので、あわせてご覧ください。

【派遣の平均時給】相場はいくら?

派遣社員の平均時給は地域や業種によって大きく異なりますが、全国的な相場は1,500円前後になっています。とくに派遣の需要が高い大都市圏が全体の平均を押し上げており、3大都市圏に限定すれば、平均時給は1,600円を超えています

また、職業ごとの全国的な時給相場は以下のとおりです。

  • 事務職:1,200~1,600円程度
  • サービス:1,200~1,500円程度
  • ITエンジニア:1,500~2,000円程度
  • 軽作業:1,300円程度
  • 医療・介護:1,300円程度

全体としては、専門スキルや資格の有無が時給に直結する傾向が強く、経験とキャリアアップによって報酬の水準を上げやすいことがわかります。

派遣社員の時給を決める方法

派遣社員の時給は、「派遣先均等・均衡方式」または「労使協定方式」によって決定されます。派遣会社によって採用している方式が異なるので、それぞれの違いを確認しておきましょう。

派遣先均等・均衡方式

派遣社員と派遣先の正社員との待遇を比較し、仕事内容や責任の度合いが同じであれば、賃金・福利厚生の水準をできる限り合わせる方法です。同じ部署で同じ業務を行う場合、正社員が受けている手当や休暇制度を派遣社員にも反映させ、極端な格差が生じないよう調整します。

この方式のメリットは正社員に近い待遇になりやすい点ですが、派遣先の制度や基準に左右されるため、必ずしも全ての待遇が一致するとは限りません。また、派遣先が変われば、そのたびに待遇が変わる可能性もあります。

労使協定方式

派遣会社が労働組合または労働者の代表と協定を結び、その協定に基づいて賃金や待遇を決定する方法です。厚生労働省が毎年公表する「職種別・地域別の賃金統計」を基準に、一般労働者の平均水準以上になるよう設定されます。

つまり、派遣先の正社員が受けている待遇に関わらず、あくまで統計に基づいて公平性を確保する仕組みです。派遣会社がこの方式を採用している場合は、どの派遣先で働いても一定の水準が保証されます。

一方で、派遣先が高待遇の企業であっても、それが反映されないので、均等・均衡方式に比べて上限が抑えられる可能性があります。経験やスキルによって高い待遇を狙う場合には、やや不利になるかもしれません。

派遣の時給が高い理由

派遣社員の時給は、パートやアルバイトなどに比べて高く設定されていることが多いです。その理由としては、主に以下の3つが挙げられます。

人材不足が企業の課題になっている

近年、多くの企業では少子高齢化や働き手不足の影響から、人材の確保が大きな課題となっています。とくに、専門知識や経験が必要な業務では、正社員を募集してもすぐに集まらないことが少なくありません。

そのため、短期間で人材を確保できる派遣のニーズが高まり、時給の相場を押し上げています。必要な期間だけ採用できるため、企業にとって柔軟な人材戦略になりますが、早く確実に人材を確保するためには報酬を上げる必要があります。

特に、慢性的に人材不足の業界では競争が生じやすく、自然と時給が高くなりがちです。

即戦力が求められる

受け入れ先の企業は、派遣社員に「即戦力」としての役割を求めています。経験やスキルを持った派遣社員を受け入れたい場合には、高めの時給を設定する必要が出てきます

派遣会社もスキルの高い人材を確保・維持するために、適正以上の待遇を提示しているケースが多いです。たとえば、経理やITエンジニア、語学を活かした職種などは、専門知識がなければ対応できないため、必然的に高時給での募集になります。

賞与や交通費が含まれている

派遣社員の給与は、時給だけで見た場合に正社員よりも高くなることがあります。しかし、その中には賞与や交通費といった手当が含まれているケースが多いです。

正社員であれば、基本給のほかにボーナスや交通費、各種手当が支払われます。しかし派遣の場合、それらをあらかじめ時給に組み込んで支払うのが一般的です。

このように、派遣の高時給には、総合的な待遇の補填という側面がある点を理解しておく必要があります

派遣の時給を上げる方法

より高い時給を目指すためには、スキルアップや派遣会社との関係などが重要になります。ここでは、派遣社員として時給を上げる方法を具体的にご紹介します。

資格取得・スキルアップを図る

派遣社員が時給を上げるために有効なのが、資格取得やスキルアップです。企業は即戦力を求めて派遣を利用するため、業務に直結する資格を持っていると評価が高くなります。業種ごとに次のようなスキルが活用できるので、資格取得や学習を検討してみましょう。

  • 経理職:簿記資格
  • 貿易事務:TOEIC、貿易実務検定
  • IT:基本情報技術者、各種プログラミングスキル など

こうした資格は客観的にスキルを証明できるため、派遣会社から高時給の案件を紹介されやすくなります。スキルを上げるほどに選択肢が広がるので、より自分の希望に合った派遣先で働ける可能性が高まります。

派遣会社に交渉する

時給を上げてほしい場合は、登録している派遣会社に交渉してみましょう。

案件の終了時や契約更新のタイミングは、これまでの実績を根拠に交渉しやすいのでおすすめです。同じ職場で長期的に働いている人は、派遣先からの信頼があるため、派遣会社も待遇改善に応じやすくなります。

このほか、業務範囲の拡大や市場相場との差などの根拠がある場合は、あわせて提示することで交渉を進めやすくなります。単に「時給を上げてほしい」と要求するのではなく、業務上の貢献や実績を具体的に伝えることが大切です。

複数の派遣会社に登録する

派遣社員は複数の派遣会社に登録して、さまざまな応募を比較検討することが可能です。

派遣会社によって保有する案件の種類や得意とする分野が異なるため、「登録を1社に絞ると、選択肢が狭まってしまう可能性があります。全国展開している大手の派遣会社は豊富な求人数が、地域密着型の会社は地元企業にコネクションがあるというように、強みもそれぞれです。派遣先と派遣会社の関係によっても時給が違ってくるので、比較対象を複数持っておくことが、時給を上げる手段の1つになります

時給アップの注意点

派遣社員が時給アップを目指す際には、いくつかの注意点を理解しておく必要があります。

まず大前提として、派遣の時給は派遣会社と派遣先企業の契約に基づいて決められているため、一度の交渉で大幅に上がることは期待できません。時給交渉までにスキルや実績を積んでいたとしても、数十円〜百円ほどの上昇にとどまるケースがほとんどです。

また、交渉相手を間違えないことも重要。派遣社員の雇用主はあくまで派遣会社であり、派遣先企業に直接交渉するのはマナー違反です。

派遣会社との交渉においては、根拠のない要求や無理な金額の提示は関係の悪化を招き、案件を紹介されにくくなるといったリスクがあるため注意しましょう。

【派遣】時給アップを目指そう

派遣社員の時給は、地域や業種によって差があり、大都市圏、専門性の高い職種で高めに設定される傾向にあります。派遣会社が採用している待遇の決定方法によっても時給が異なるため、総合的に条件の良い求人を見つけることが大切です。

比較的高めに設定される派遣の時給ですが、その中に賞与や交通費が含まれているケースも多いので、働きはじめる前にしっかり確認しておきましょう。

派遣社員として時給アップを目指す際は、資格やスキル、経験を根拠にして派遣会社と交渉するのがおすすめです。求人によっても時給に違いがあるので、複数の派遣会社に登録し、より条件の良い案件を探すのも有効です。