一口に派遣社員といっても、その働き方はさまざま。特に長期、短期といった就業期間は働き方に大きく影響するため、その違いを知っておくことが大切です。
このコラムでは、長期派遣のメリットと注意点について詳しく解説しています。就業期間に関わる「3年ルール」、長期的に働く方法などもまとめているので、合わせてチェックしてください。
長期派遣とは

長期派遣とは、同じ派遣先で数か月から数年にわたり継続して勤務する働き方を指します。突発的な欠員の補充や繁忙期の応援ではなく、組織の一員として日常業務をこなします。
派遣社員は、基本的に3か月ごとの契約更新が多いですが、継続によって1年以上勤務するケースも珍しくありません。また、派遣先が希望すれば、半年や1年単位の長い契約になることもあります。
ただし、長期派遣に明確な期限の決まりはなく、6か月以上を中期、1年以上を長期と定義している派遣会社もあります。
長期派遣と短期派遣の違い
短期派遣は、1〜3か月ほどの期間限定で行われるケースが多く、主に欠員の補充や繁忙期の業務サポートを目的に受け入れを実施します。3か月未満の短期契約は基本的に更新がなく、満期で終了になるのが一般的です。
短いスパンで派遣先が変わるため、多くの企業を経験したい人には適していますが、スキルを磨きたい人は物足りなく感じるかもしれません。
- 短期派遣:自由度の高さやさまざまな職場経験を求める人向き
- 長期派遣:安定収入や専門性の積み上げを求める人向き
このように、期間の違いだけでなく、働き方やキャリアへの影響も異なります。
長期派遣のメリット

派遣社員として長期間働けると、収入やキャリアの面でのメリットが大きくなります。以下、長期派遣のメリットを見ていきましょう。
スキルを習得できる
長期派遣は時間をかけて業務に慣れ、幅広いスキルを積み重ねられるのが大きな魅力です。日々の定型業務によってスキルが磨かれるだけでなく、改善提案や業務の効率化などに関われることもあります。
派遣先が導入している専用システムやツールに触れる機会が多くなるため、履歴書や職務経歴書に書ける強みが増える点もメリットです。派遣会社によっては、eラーニングや資格取得支援が提供されるので、現場経験と学習を組み合わせてスキルアップできます。
収入面での不安がない
短期派遣では、契約が終了するたびに次の仕事を探す必要があり、スムーズに見つからなければ収入が途切れてしまいます。一方で長期派遣は、契約が更新される可能性が高く、収入を安定的に確保しやすいのが特徴です。
短期契約に比べて生活や貯蓄の計画が立てやすいので、精神的な安定やスキルアップへの自己投資といった余裕にもつながります。
直接雇用につながる可能性がある
派遣先で一定期間働くと、仕事ぶりが評価され、直接雇用を打診されるケースがあります。これは、紹介予定派遣のように最初から正社員になることを前提としていなくても、十分にあり得るチャンスです。
雇用が安定するだけでなく、派遣先の企業にとっても、教育コストをかけずに戦力を確保できるメリットがあります。ただし、直接雇用にはパートや契約社員も含まれるため、必ずしも正社員とは限らない点には注意が必要です。
長期派遣の注意点
長期派遣には多くのメリットがありますが、注意点もいくつか存在します。働き方を決める前に、それらの注意点についても把握しておきましょう。
契約が更新されないこともある
長期派遣は、短期契約に比べて安定している印象がありますが、必ずしも契約が更新されるとは限りません。たとえ仕事の成果・評価が良いとしても、派遣先の経営状況や部門の縮小によって、派遣の受け入れが終了するケースはあります。
このような事態に備えるため、契約更新のタイミングになったら派遣元に状況を確認し、必要に応じて次の就業先を探す準備をしておきましょう。更新されない可能性があることを理解しておけば、不安を減らして適切な行動がとれます。
派遣先と合わない場合はきつい
長期派遣は、同じ職場で長く働けるのがメリットですが、職場環境が自分に合わないと感じた場合には負担が大きくなりがちです。次のような点で相性が悪いと、毎日がストレスになりかねません。
- 仕事内容
- 人間関係
- 評価基準
- コミュニケーション文化
ハラスメントやいじめにあっている可能性もあるため、ストレスを感じたときは無理をせず、派遣元に相談しましょう。
同じ職場で働けるのは3年まで
労働者派遣法では、同一の派遣社員が同じ組織で働けるのは最長3年と定められています。これは、派遣労働者がいつまでも不安定な立場に置かれないようにするための仕組みで、3年を超える場合には直接雇用を検討することが求められます。
この制度は、派遣社員にとってキャリアの節目になるので、3年が近づいた時点で派遣元に相談し、自分の今後の働き方を整理しましょう。
派遣の3年ルールと例外

派遣の3年ルールは、労働者派遣法によって定められた就業期間の上限を指しています。前述のとおり、派遣社員は同一の組織において最長3年までしか働けず、原則3年を超えて継続することは原則できません。
一方で、次の派遣社員に対しては、例外として3年以上の就業が認められます。
- 派遣元と期間の定めがない雇用契約を結んでいる
- 60歳以上
- 産休・育休・介護休業の代替要員
- 日数限定(1か月の勤務日数が通常の半分以下かつ10日以下)
- 終了時期が明確なプロジェクトに従事する
3年ルールは、同じ人が同じ組織単位の部署で働き続けることに制限を設けていますが、条件によって長く働ける場合もあります。
同じ職場で3年以上働く方法

同じ派遣先で3年以上働きたい場合は、以下の方法を検討してみましょう。
派遣先で直接雇用される
同じ職場で3年以上働きたい場合、派遣先で直接雇用されるのが最も確実な方法です。正社員を希望するのであれば、はじめから紹介予定派遣として働くのがおすすめです。
紹介予定派遣でない場合は、契約を更新しながら長期的に働き、日々の業務改善や成果を積み重ねて信頼を高めましょう。必ず雇用主である派遣会社に相談し、適切なタイミングを見計らって話を進めることが大切です。
部署を異動する
派遣社員が同じ組織で働けるのは3年までとされていますが、派遣先企業が事業所単位の延長手続きを行い、部署を異動すれば同じ事業所で継続して働くことが可能です。
ただし、異動によってスキルが活かしにくくなる、人間関係の再構築が必要になるといった点には注意が必要です。また、新しい部署でも必ず契約更新が続くとは限らないため、慎重に検討してください。
派遣会社と無期雇用契約を結ぶ
同じ職場で3年以上働く方法のひとつとして、派遣会社との無期雇用契約が挙げられます。派遣社員ではあるものの、3年ルールの対象外になるため、上限を超えて同じ組織で働くことが可能です。
また、万が一派遣の仕事が途切れた場合でも、派遣会社から休業手当が支給されるため、収入がなくなる心配がありません。長期的に働けるので、スキルアップが図りやすいのも魅力です。
ただし、無期雇用になると、自分の都合で働き方をコントロールしにくくなる、派遣先の選択肢が狭まるといった可能性があります。
長期派遣で働いてみよう
派遣社員が同じ職場で長期にわたって働く長期派遣。同じ職場で働けるのは原則3年までというルールがあるものの、契約が更新されれば安定して働き続けられます。
長期的に働けると、スキルを習得しやすくなったり、収入面での不安が減ったりする点がメリットです。ただし、有期の派遣社員である以上、状況によっては更新されない可能性があるため注意が必要です。
同じ職場で3年以上働きたい場合には、直接雇用や部署の異動、派遣会社との無期雇用といった方法があるので検討してみるとよいでしょう。