派遣社員として働きながら、副業に興味があるという方は多いのではないでしょうか。さまざまな働き方を考えるうえで副業は有効な選択肢ですが、場合によってはトラブルの原因になるため、慎重に検討する必要があります。

そこで今回は、派遣社員が副業する際の注意点と、メリットデメリットについて解説していきます。副業のコツについてもまとめているので、あわせてチェックしてください。

派遣社員も副業OK

派遣社員として働いている場合でも、副業を行うのは個人の自由です。労働基準法では、労働者が複数の仕事に従事することを禁止していません。

そのため、派遣会社に登録して働きながら、空いた時間を活用して別の仕事に取り組むことが可能です。働き方改革の流れもあり、派遣社員であってもスキルアップやキャリアの選択肢を広げる手段として注目されています。

ただし、法定労働時間が本業と副業で合算される点には注意が必要です。派遣先と派遣元が36協定を結んでいない場合、法定労働時間の上限によって副業ができない可能性があります。

【派遣社員】副業の注意点

派遣社員が副業をする際は、以下の点に注意が必要です。

  • 就業規則に従う必要がある
  • 本業に支障が出ないよう注意
  • 収入によっては確定申告が必要

就業規則に従う必要がある

派遣社員は、就業先企業や派遣会社の規則に従うことが求められます。たとえば、就業規則で副業が禁止されていれば、違反によって契約更新が難しくなったり、最悪の場合は契約解除につながったりする可能性があります。

また、就業規則には「会社の信用を損なう行為の禁止」のように曖昧な表現で記載されていることも多く、副業の内容によっては規則違反とみなされかねません。副業を始める際には必ず契約書や就業規則を確認し、必要であれば派遣元に相談しておくと安心です。

本業に支障が出ないよう注意

副業は、収入を増やす手段として魅力的ですが、あくまで本業が安定してこそ成り立つものです。とくに派遣社員は、本業のパフォーマンスが低下すれば更新されないリスクが高まります。

たとえば、副業の疲れで本業中に集中力が切れたり、シフトに柔軟に対応できなくなったりすれば、評価に悪影響を及ぼしかねません。派遣社員が本業と副業を両立させるためには、スケジュールや体調管理が重要になります。

情報漏洩に気をつける

副業を行う際には、情報の取り扱いに十分注意しなければなりません。派遣先や派遣元で得た業務上の知識・データは機密情報であり、副業に利用することはもちろん、うっかり外部に漏らしてしまえば大きなトラブルにつながります

とくにIT関連や顧客情報を扱う業務では情報管理が厳しく求められるため、副業の内容が情報の持ち出しと見なされれば、信頼を損なうリスクがあります。また、反対に副業先で知り得た情報を本業に流用するのも不正行為です。

自分自身を守るためにも、情報を混ぜない、本業と副業を完全に切り離すという意識が必要です。

収入によっては確定申告が必要

副業で得た給与所得または事業所得・雑所得が年間20万円を超える場合、原則として確定申告が必要です。派遣社員としての給与は派遣会社から源泉徴収されますが、副業収入は自動で処理されないことが多いです。

副業で20万円を超えたにも関わらず申告を怠ると、延滞税が課されるリスクがあるため、必要に応じて確定申告を行いましょう。

また、副業の形態によっては「雑所得」「事業所得」など課税区分が異なり、経費計上できる項目も変わってきます。所得金額に応じ、確定申告が必要になるタイミングに注意しましょう。

派遣社員が副業するメリット

派遣社員の副業には、収入とキャリアの面で大きなメリットがあります。

キャリアの幅が広がる

派遣社員が副業を行う大きなメリットは、キャリアの選択肢を広げられる点です。本業では経験できない分野の仕事に取り組むことで、新しいスキルや知識を習得しやすくなります

たとえば、事務職として派遣勤務をしながら、副業でWebデザインやライティングを行えば、クリエイティブ分野のスキルを身につけることが可能です。これらの経験は、転職活動などで「強み」としてアピールでき、キャリアの幅を広げる武器になるでしょう。

また、副業を通じて人脈が広がることも多く、本業では出会えない業界や職種の人とつながれる点も魅力です。

収入が途切れにくくなる

派遣社員は、基本的に契約期間が定められているため、更新がなく、次の派遣先も決まっていなければ、収入が一時的に途切れてしまうリスクがあります。その点、副業があれば、本業の契約が終了しても一定の収入源を確保できるため安心です。

また、在宅でできる仕事を副業にしておけば、派遣先が変わっても継続して仕事を受けられます。複数の収入口を持つ働き方は、将来の不安を軽減し、リスクを分散する役割を果たします。

派遣社員が副業するデメリット

一方で、副業にはデメリットもあるため、慎重に検討する必要があります。

生活リズムが崩れやすい

派遣社員が副業を行う際に注意したいデメリットの一つが、生活リズムが乱れやすい点です。本業の勤務時間に加えて副業をこなすと、どうしても睡眠時間や休養の確保が難しくなります

とくにシフト制の派遣勤務をしている場合、勤務日ごとに生活パターンが変わるため、副業を詰め込みすぎると体調管理が難しくなります。また、プライベートな時間が減ることで、精神的な負担が生じることもあるでしょう。

長期的に疲労が蓄積すれば、本業のパフォーマンスに影響が出て、評価に響くリスクがあります。

社会保険に影響がある

社会保険は、以下の条件を満たすことで加入対象になります。

  • 週の所定労働:20時間以上
  • 所定内賃金:月額8.8万円以上
  • 2か月を超える雇用見込みがある
  • 学生ではない
  • 勤務先の従業員数51人以上

これは副業においても同様なので、場合によっては2箇所で社会保険に加入しなければなりません。社会保険の二重加入は、将来的に年金が増えるといった利点があるものの、煩雑な手続きと手取り額の減少などがデメリットでもあります

派遣が副業をするときのコツ

派遣社員が副業を始める際は、本業への影響やトラブルの可能性を考慮することが大切です。安定して副業を行えるよう、コツを押さえておきましょう。

柔軟なスケジュールが組める仕事を選ぶ

副業は、時間の融通が利く仕事を選ぶと成功しやすくなります。たとえば、シフト変更や残業がある派遣先で働いている場合、固定的な副業だと両立が難しくなりがちです。

こうしたケースでは、在宅ワークのように、柔軟なスケジュールが組める仕事がおすすめです。ライティングやデザイン、アンケートモニターなどは、自分のペースで進められるため、本業に影響を与えにくい副業といえます。

派遣会社に伝えておく

副業を行う際には、前もって派遣会社に相談しておくことも大切です。法律上は副業が可能でも、派遣元や派遣先の就業規則には抵触する可能性があります。

とくに、同業他社での副業や、情報管理に関わる仕事を選んだ場合、利益相反、情報漏洩などの懸念が生じます。副業を派遣会社に黙っていると、万が一トラブルがあった際に信用を失ってしまうため注意が必要です。

派遣会社との信頼関係は契約更新にも影響があるので、正直に相談して円滑な関係を保っておきましょう

単発の仕事も検討

派遣社員が副業をする際は、単発の仕事を選ぶのも一案です。単発の案件であれば、本業のスケジュールに合わせられるため、負担が少なく取り組みやすくなります。

たとえば、イベントスタッフや試験監督、データ入力など、短期間で完結する仕事は本業と両立しやすいです。とくに初めて副業を行う場合は、単発の案件を繰り返して、自分に合っている仕事を見つけるのもよいでしょう。

派遣の副業は就業規則に従って

日本の法律では、労働者に対して副業が認められているため、派遣社員も副業を行うことが可能です。しかし、企業によっては副業を禁止しているケースもあるため、就業規則に則って判断する必要があります。

副業によってトラブルになる可能性もあるため、前もって派遣会社に相談しておくと安心です。このほか、本業に支障が出ないよう、スケジュール管理がしやすい在宅ワークや単発の仕事も検討してみましょう。