「派遣社員は年末調整の対象になるのか」「確定申告が必要なのか」など、年末調整のことがよくわからないという方は多いのではないでしょうか。
そこで今回は、派遣社員が知っておくべき年末調整と確定申告の概要について解説していきます。それぞれを行う際の流れもまとめているので、あわせて確認していきましょう。
目 次
年末調整とは

日本では毎月の給与から所得税が天引きされていますが、その金額はあくまで暫定的なもので、実際の税額は次のような状況によって変動します。
- 年間の収入
- 扶養家族の有無
- 保険料 など
これらを含めて再計算し、天引きされた税金との差額を精算するのが年末調整です。源泉徴収によって払いすぎた分は還付され、万が一不足していれば徴収されます。
この手続きは会社が行うため、副収入などがない場合は従業員が自分で確定申告をする必要はありません。年末調整は「源泉徴収されている人」が対象になるので、アルバイトやパートであっても、給与から所得税が引かれていれば年末に必要書類の提出が求められます。
【派遣社員】年末調整の流れ

前述のとおり、給与から所得税が引かれている人はすべて年末調整の対象で、派遣社員も例外ではありません。ここでは、派遣社員が行う年末調整の流れについて解説していきます。
派遣会社から連絡を受ける
派遣社員の年末調整は、勤務している企業ではなく派遣会社が担当します。年末が近づくと、メールや郵便で派遣会社から年末調整の案内が届きます。
通常、10〜11月頃に届くことが多く、10日程度の提出期限が設けられているのが一般的です。案内には、提出期限、必要書類、提出方法などが記載されているので、必ずチェックしましょう。
案内を見落とすと還付の機会を逃す恐れがあるため、メールボックスやマイページをこまめに確認してください。
必要書類を記入・提出する
案内を受けたら、派遣会社が指定する「扶養控除等申告書」や「保険料控除申告書」などの書類を記入します。
これらの書類は、家族構成や加入している保険、住宅ローンの有無などによって控除額を正しく計算するために必要です。記入時には、生命保険会社から届く控除証明書の内容などを正確に記載しましょう。
提出期限を過ぎると年末調整が受けられないこともあるため、案内を受け取ったら早めに準備を進めてください。
還付金の確認
年末調整の結果、源泉徴収で引かれていた所得税が実際の税額より多かった場合は、差額が「還付金」として返ってきます。派遣社員の場合、派遣会社から支給される給与に還付金を上乗せして振り込まれるのが一般的です。
12月または翌年1月の給与明細に「年末調整還付」などの項目が追加されるので、返金額を確認しましょう。返金額は勤務期間や控除の内容によって異なりますが、数千円から数万円になるケースもあります。
不備があった場合
提出した書類に記入漏れ、証明書の添付忘れなどの不備があると、年末調整の手続きが遅れたり、対象外になったりする可能性があります。また、提出期限を過ぎると修正が受け付けられないこともあるので注意しましょう。
不備によって年末調整ができなかった場合でも、自分で確定申告を行えば、税金の還付が受けられます。書類の不備は記入ミスや添付忘れが多いため、提出前に必ず内容を見直すほか、必要書類をまとめて保管しておくとスムーズです。
掛け持ちの場合はどうなる?
ほかの派遣会社やアルバイトなどを掛け持ちしている場合でも、年末調整を受けられるのは1社のみです。1年間に受け取った給与のうち、勤務日数や収入が最も多いものを「主たる給与」として扱い、年末調整を行います。
その他の勤務先は副業扱いになるため、源泉徴収はされても年末調整は行われない点に注意が必要です。副収入がある場合は、自分で確定申告を行い、全体の所得税を再計算しましょう。
派遣で確定申告が必要なケース

派遣社員も年末調整の対象になりますが、場合によっては確定申告が必要になるケースもあります。
副業で一定の収入がある
年末調整が行われるのは主たる給与に対してのみで、副業の収入は対象外です。また、給与取得者の副業所得が年間20万円を超える場合は、原則として確定申告を行う必要があります。
たとえば、派遣の仕事とは別にアルバイトやフリーランスとして報酬を受け取っている場合は、それらを合算して所得税を再計算しなければなりません。もし申告を怠ると、後に追徴課税の対象になる可能性もあるため注意が必要です。
給与に交通費が含まれている
派遣社員の給与には、時給に交通費が含まれているケースがあります。本来、通勤交通費は非課税なので、給与としてまとめて支給されている場合は、払いすぎた税金が返ってくる可能性が高いです。
ただし、年末調整では正確に控除されないため、確定申告で修正する必要があります。交通費について確定申告を行う場合は、派遣会社から「通勤交通費証明書」を発行してもらい、申告書に添付しましょう。
交通費の扱いは会社によって異なるので、不明点があるときは派遣会社に問い合わせてください。
住宅ローンや医療費控除を受けたい
住宅ローン控除や医療費控除など、一部の控除は年末調整では対応できないため、派遣社員でも確定申告が必要になります。
たとえば、1年間に支払った医療費が一定額(原則10万円または所得の5%)を超える場合は、医療費控除の対象となり、所得税の一部が還付されることがあります。住宅ローン控除は、マイホームを購入した最初の1年について確定申告が必要で、2年目以降は年末調整で対応可能です。
これらの控除を適用するためには、領収書や支払証明書を保管し、申告時に添付する必要があります。
【派遣社員】確定申告の流れ

派遣社員が確定申告をする際の流れについても、確認しておきましょう。
必要書類を準備する
派遣社員が確定申告を行う際には、以下のような書類が必要です。
- 源泉徴収票:年間の給与収入と源泉徴収された税額を証明
- 控除証明書:生命保険料・地震保険料・社会保険料の支払いを証明
- 金融機関の残高証明書や登記事項証明書:住宅ローン控除に必要
- 医療費控除の明細書:医療費控除に必要
これらの書類を整理しておくことで、申告書をスムーズに作成でき、誤りや申告漏れが防げます。
申告書を作成する
必要書類を揃えたら、次に確定申告書を作成します。国税庁の「確定申告書等作成コーナー」を利用すれば、オンラインで簡単に作成できるので便利です。
入力ミスを防ぐため、源泉徴収票や控除証明書を手元に置いて作業を進めましょう。作成コーナーでは、申告書を印刷して提出する方法のほか、マイナンバーカードを利用したe-Taxでの電子申告も可能です。
申告書には、給与所得のほかに副業やフリーランス報酬、医療費控除、寄附金控除などを記載します。複数の雇用先がある場合は、それぞれの収入を合算して入力することを忘れないようにしましょう。
申告書を提出する
申告書が完成したら、税務署に提出して手続きを完了させます。提出方法は次の3つから選べます。
- 税務署へ持参
- 郵送
- e-Tax(電子申告)
e-Taxを利用すれば、自宅から24時間いつでも申告でき、還付金の振り込みも比較的早いのが特徴です。紙で提出する場合は、税務署の窓口や郵送で行い、必ず申告期間内(例年2月16日〜3月15日頃)に到着するようにしましょう。
提出後に控えを保管しておくと、翌年以降の申告や手続きがスムーズです。
年末調整の対象かわからないときは派遣会社に確認
派遣社員の場合、実際に働いている派遣先企業ではなく、給与を支払っている「派遣会社」が年末調整を行います。そのため、自分が年末調整の対象になるかわからない場合は、必ず派遣会社に確認しましょう。
年の途中で契約が終了した、複数の派遣会社に登録しているなど、状況によって対象かどうかが変わるため、自己判断しないことが大切です。多くの派遣会社では専用窓口やマイページでの問い合わせ機能を設けているので、早めに確認しておくとよいでしょう。
派遣社員も年末調整の対象になる
年末調整は、給与から所得税が引かれている人すべてが対象になります。派遣社員も例外ではありませんが、一定額の副収入があったり、医療費などの控除を受けたりする場合には確定申告が必要です。
年末調整や確定申告は正しい税額で納税するために必要なので、期限を守って書類を提出しましょう。自分が年末調整の対象であるかわからない場合は、早めに派遣会社に問い合わせてください。
