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派遣社員でも社会保険に加入できる?
「派遣社員でも社会保険に加入できるのか?」
これから派遣社員になる、あるいは派遣社員になったばかりの人の中には、このような疑問を持っている方も多いのではないでしょうか。
結論からお伝えすると、派遣社員でも社会保険に加入することは可能です。一定の条件さえ満たせば、一般的な会社員と同じように安心して働くことができます。
ただ、「社会保険に加入するには具体的にどのような条件があるのか」「そもそも社会保険に加入するメリットは何なのか」といったことが気になる方も多いでしょう。今回のコラムで詳しく解説していくので、派遣社員の社会保険事情が気になるという方はぜひチェックしてみてください。
そもそも社会保険とは?
最初に「そもそも社会保険とは何なのか」ということについて解説していきます。
普段から耳にすることも多い社会保険ですが、実はそのような名目の保険はありません。正確には、以下の5つの保険を総じて「社会保険」と呼びます。
- 健康保険
- 厚生年金保険
- 介護保険
- 雇用保険
- 労災保険
次から詳しく解説していきますが、それぞれ内容も加入条件も異なります。社会で働き、保険料を支払うからには、一通り理解しておくことが望ましいです。
派遣社員が社会保険に加入する条件
前述した5つの保険について、それぞれどのような内容なのか、どのような加入条件になっているのかを解説していきます。
健康保険
病気にかかったり、ケガを負った際、少ない自己負担で医療機関に通うための保険が健康保険です。日常生活で活用する機会も多いですよね。
- 病院で診察を受ける
- 薬局で薬を購入する
このような場合に自身が支払うのは実際の料金の3割であり、残りの7割は健康保険の給付を受けていることになります。
大まかな加入条件は以下の3つです。
- 所定労働時間(週):正社員の3/4以上
- 雇用期間:2カ月以上、あるいは2カ月以上の見込みがある
- 年齢:75歳まで
厚生年金保険
いわゆる年金について、日本では国民年金と厚生年金の2階層に分かれています。
まず基礎部分である国民年金に関しては、日本に戸籍がある20歳以上の人であれば必ず加入する義務があります。民間企業に所属している会社員であれば、さらに厚生年金にも加入し、追加で保険料を支払わなければなりませんが、その分老後に支給される年金の額が上乗せされます。
また、障がいを負った際の障害年金、被保険者または被保険者だった方が亡くなってしまった際の遺族年金が給付されることも年金保険の特徴です。
- 所定労働時間(週):正社員の3/4以上
- 雇用期間:2カ月以上、あるいは2カ月以上の見込みがある
- 年齢:65歳まで
介護保険
健康保険加入者のうち、40歳から65歳までの人に支払いの義務が生じるのが介護保険です。要介護者が少ない負担で介護サービスを受けられるようにするための保険です。
他の保険と同じように、保険料は事業者と事業主で折半して支払いますが、支払額は給与に応じて細かく段階分けされています。
- 所定労働時間(週):正社員の3/4以上
- 雇用期間:2カ月以上、あるいは2カ月以上の見込みがある
- 年齢:40~65歳
雇用保険
次に雇用保険について解説していきます。
- 自己都合での退社
- 会社都合のリストラ
例えばこのような場合において、次の職が決まるまでの生活費や活動費の支援金が支給されますが、そのような失業保険も雇用保険の1つです。
- 所定労働時間(週):20時間以上
- 雇用期間:31日以上、あるいは31日以上の見込みがある
- 年齢:65歳まで
労災保険(労働者災害補償保険)
労災保険も全ての会社員が加入する義務がありますが、他の社会保険と違って加入条件がありません。そのため、就業が開始された瞬間から、自動的に加入することになります。
労災とはいわゆる労働災害のことを指し、労働者が業務中に負ったケガ・病気・死亡などを保障します。基本的に事業主が全額支払うことになっており、労働者の負担はありません。
社会保険の加入条件まとめ
保険の種類 | 加入条件 | ||
---|---|---|---|
所定労働時間 | 雇用期間 | 年齢 | |
健康保険 | 正社員の3/4以上 | 2カ月以上、あるいは2カ月以上の見込みがある | 75歳まで |
厚生年金保険 | 65歳まで | ||
介護保険 | 40~65歳 | ||
雇用保険 | 週20時間以上 | 31日以上、あるいは31日以上の見込みがある | 65歳まで |
労災保険 | なし |
社会保険の一つひとつについて解説してきましたが、各保険の加入条件をまとめると上の表のようになります。介護保険のみ、年齢の下限が定められていますが、中期間以上の労働を想定している場合、その他の保険にはおおよそ加入することになるでしょう。
健康保険と国民健康保険の違い
健康保険 | 国民健康保険 | |
---|---|---|
対象者 | 公務員・会社員とその扶養家族 | 個人事業主・パート・アルバイトなど |
保険料の自己負担 | 半分負担 (もう半分は勤務先) |
全額負担 |
保険料の支払い | 給与から天引きされる | 自身で支払う |
医療費の自己負担 | 原則3割負担 | 原則3割負担 |
出産育児育児一時金の支給 | 原則42万円 | 原則42万円 |
出産手当金の支給 | あり | なし |
傷病手当金の支給 | あり | なし |
家族が増えた場合の保険料 | 変わらない | 増える |
ちなみに、健康保険には一般的な健康保険と、内容が異なる国民健康保険があることをご存知でしょうか。最も大きな違いは各保険の対象者であり、健康保険は公務員や会社員、およびその扶養家族が該当します。
一方、個人事業主やパート・アルバイト、さらに農業や漁業の従事者などは国民健康保険の対象になりますが、支払方法や支給金の内容が少し異なります。混同してしまうことも多いので、念のため把握しておくと良いでしょう。
派遣社員が社会保険に加入しないことは可能?
ここまで社会保険の加入条件やそれぞれの内容をお伝えしてきましたが、条件を満たした派遣社員であれば、全員加入する義務があるのでしょうか。というのも、派遣社員は派遣会社に所属している状態であり、保険料の半分を支払ってもらえますが、少なからず負担があることは間違いありません。
中には社会保険の加入を拒む方もいますが、従業員がいる法人事業所は事業者を必ず社会保険に加入させなければならないと法律で定められています。
もし加入させなかった場合、事業所は懲役や罰金といった刑事罰が科せられ、さらに追尾金を徴収される恐れもあります。そのため、本人の希望に関わらず、条件を満たす派遣社員は必ず社会保険に加入しなければいけません。
社会保険に加入するメリット
社会保険に加入したい方も、そうでない方も、加入することでメリットがあるのか人通り確認しておきましょう。実際は多くの恩恵を受けられますが、中でも特筆すべきなのは以下の項目です。
- 個人事業主よりも負担が少ない
- 年金受給額が増える
- 各種手当金・給付金を受け取れる
個人事業主よりも負担が少ない
派遣社員が社会保険に加入することのメリットの1つは、個人事業主など、特定の職業の人たちより、支払う金額の負担が少ないということです。
給与の額によって異なりますが、給与明細などを見ると、毎月数万円程度が差し引かれていることがわかります。ただ、事業者が負担しているのはあくまで半分であり、もう半分は事業主、つまり派遣会社が負担してくれています。
その状態で各保険の恩恵を受けられるというのは、派遣社員や会社員のメリットだと言えるでしょう。
年金受給額が増える
先ほども解説した通り、年金保険は国民年金と厚生年金に分かれていますが、厚生年金保険に加入することで、老後の年金受給額が高くなります。
ちなみに厚生年金の保険料、及びそれに対する支給額は所得によって異なりますが、2023年現在において、厚生年金の支給額は国民年金のおよそ2〜3倍になっています。将来的な年金の支給額の減少を不安視する声も多いですが、そのような状況だからこそ厚生年金保険に加入し、支給額をアップすべきとも言えるでしょう。
各種手当金・給付金を受け取れる
社会保険の支給金の中で特に馴染み深いのは
- 医療費
- 失業保険
- 年金
などですが、実際はその他にも細かい手当金・給付金が多く用意されています。
「自分には関係ないから保険料を支払うのはもったいない」と考える方も少なくありませんが、万が一のことを考えると、社会保険に加入するのは決して無駄ではありません。特にライフステージが変化したタイミングで何らかの手当金・給付金の対象になることが多いです。
社会保険加入は義務!疑問があれば派遣会社に相談!
既にお伝えした通り、派遣社員であっても社会保険に加入することは義務になっています。余計なストレスや不安を感じることなく働くためにも、せっかく条件を満たすのであれば加入しておくべきだと言えるでしょう。
何か不明点などがあれば、派遣会社に相談してみてください。保険料の詳細など、担当のスタッフに聞けば具体的に教えてもらえます。