どんな職場、職業でも「きつい」「つらい」「大変」と感じる場面はありますが、特に工場のライン作業は「きつい」と感じる事が多い職種の1つです。

製造業のライン作業では、作業スピード、品質基準、安全基準、顧客の要求などに対応しながら1つの作業を長時間反復するなど、肉体的にも精神的にもタフな仕事内容になっており、ストレスを感じやすい条件が揃っています。工場のライン作業によって生じたストレスが原因で健康や生産性に悪影響を及ぼすと、個人・会社の双方において大きな問題に発展してしまいます。

この記事では、工場のライン作業で感じる「きつさ」の理由と、それを軽減するための対策方法について詳しく解説します。

そもそもライン作業はどんな仕事?

ライン作業とは、製造業において一般的に採用されている生産方式の1つで、正式にはライン生産方式と呼ばれています。これは、ベルトコンベアなどの流れ作業を通じて製品を組み立て、加工、検査する一連の作業のことを指します。この作業方式は、大量生産を効率的に行うために設計されており、自動車工場や家電製品工場、食品工場など、さまざまな製造現場で広く利用されています。

ライン生産方式の特徴は?

ライン生産方式を採用する製造現場には、ライン作業を効率化し、大量生産を低コストで実現するためにいくつかの特徴があります。ライン生産方式の特徴は、以下の通りです。

  • 流れ作業による効率的な生産
  • 反復作業の多さ
  • 時間管理の厳しさ
  • 機械との協働による効率化
  • 安全・衛生対策の徹底

流れ作業による効率的な生産

ライン作業は、ベルトコンベアなどの移動するライン上で行われ、各作業員が細分化された特定の業務を担当します。細かく作業を分担し、それをライン上でつなぎ合わせることで段階的に製品を完成させるイメージです。

反復作業の多さ

ライン作業では、同じ作業を繰り返し行うことが求められます。これにより作業を効率化させ短期間で作業者の熟練度を向上させることができますが、一方で単調な作業となるため、飽きや疲労、ストレスも生じやすいです。

時間管理の厳しさ

ライン作業では、各工程が一定の時間内に作業を完了することが求められます。一部作業で遅れが発生するとライン全体の生産効率に影響を与えるため、作業者や時間の管理が非常に重要になります。

機械との協働による効率化

ライン作業では、人間の作業員と機械が連携して作業を行うことも多いです。機械化により、作業の効率化や精度の向上が図られます。近年では、完全機械化による省人化も進んでおり、一部の工程では人手を介さずに自動で行われるようになっています。

安全・衛生対策の徹底

工場内では安全(食品製造の現場では衛生面)が非常に優先され、個人防護具(PPE)の着用が義務付けられている職場もあります。また、定期的な安全教育や設備点検も行われています。

ライン作業の主な仕事内容は?

ライン作業は、製造工程における様々な業務を細分化することで、段階的に製品の完成を目指しますが、大きく分類すると下記のような作業に分類することができます。

  • 加工・機械オペレーション
  • 組立・組付け作業
  • 検査・検品作業
  • 梱包・仕分け作業

加工・機械オペレーション

加工・機械オペレーションは、金属やプラスチックなどの素材を切断、研磨、プレス、溶接などの方法で加工する工程です。この工程においては熟練技術者による高度な技術が必要となる場合も多く、機械を正確に操作することが求められます。

例えば、自動車部品の製造では、精密な寸法で部品を加工する必要があります。また、機械オペレーターは機械のセットアップ、操作、メンテナンスを担当し、作業の効率化と精度の向上を目指します。

初心者の方でも作業ができるようにマニュアルが準備されている場合もありますが、誤操作や設定ミスが起こると作業の遅延や材料のロスに繋がるので、丁寧・慎重な作業が求められます。

組立・組付け作業

組立・組付け作業は、上述した加工工程で作り上げられた個々の部品を組み合わせて、製品を完成させる工程です。

例えば、自動車や家電製品の製造では、エンジンやモーター、電子部品などが組み立てられます。食品製造のライン作業では、サンドイッチやお弁当に具材を盛り付ける工程を想像するとイメージしやすいでしょう。

手作業で行う場合もありますが、電動ドライバーや組立用の機械を使用することも一般的です。組立・組付け作業は、製品の品質水準を決める重要なステップであり、精度と一貫性が求められます。

検査・検品作業

検査・検品作業は、完成した製品に不良品がないかを確認する工程です。

この工程では、製品が設計通りに作られているか、品質基準を満たしているかをチェックします。多くの場合、マニュアルやチェックリストが用意されており、その基準にしたがって検品作業を実施していきます。

一般的には、目視検査や機械を使った自動検査が行われ、傷や汚れ、機能の欠陥などを見つけ出します。食品製造の場合、異物混入や賞味期限の確認、包装の不備などがチェックポイントとなります。

不良品が発見された場合は、修理や再加工が必要になります。検査・検品作業は、最終的に顧客に届けられる製品の品質を保証するために非常に重要であり、高い注意力が求められます。

梱包・仕分け作業

梱包作業は、完成した製品を梱包し、出荷の準備を行う工程です。
この工程では、製品が損傷や汚損を予防するために適切に包装されます。製品の保護と輸送中の安全性を確保するために重要な工程で、食品製造においては、衛生面にも特に配慮し、真空包装や密封包装などの方法が採用されています。

また、仕分け作業では、各製品が正しい納品先や保管庫に届くように製品種別にそって仕分けを行います。効率的な梱包・仕分けをすることで、製品のスムーズな納品や、在庫管理の保管効率の向上に繋がります。

ライン作業がきついと感じる理由とは?

ライン作業は上述したように、作業効率化・生産性の向上において多くのメリットが得られる一方で、作業者にとっては一定のストレスも伴います。以下に、ライン作業がきついと感じる主な理由を解説していきます。

  • 単調な作業の繰り返し
  • スピード感に対応するのが大変
  • 体力的な負担
  • 職場からのプレッシャー
  • 人間関係の難しさ

単調な作業の繰り返し

ライン作業の一番の特徴ともいえるのが、同じ作業を長時間にわたって繰り返すことです。

これにより、作業の効率化と精度の向上という最大のメリットを得ることができるのですが、一方で単調さが生じやすく、精神的な疲労を感じる原因となります。同じ動作を何度も繰り返すため、集中力が持続しにくく、作業に対するモチベーションが低下することもあります。

スピード感に対応するのが大変

ライン作業では、生産ラインが一定のスピードで動き続けるため、作業者はそのスピードに合わせて仕事をこなさなければなりません。

このため、迅速かつ正確に作業を行う必要があり、特に初心者にとってはこのスピード感に慣れるのが大変です。ミスをするとライン全体に影響を与えるため、常にプレッシャーを感じながら作業することになります。

体力的な負担

ライン作業は立ち仕事である場合も多く、長時間にわたって同じ姿勢で作業を続けることが求められます。

これにより、腰や足、肩などに負担がかかり、体力的な疲労が蓄積します。また、重いものを持ち運んだり、力を使う作業が多い場合、筋肉痛や関節痛などを引き起こすこともあります。

適度に休憩が取れる職場環境であるかどうかで、作業者のストレスは大きく代わってきます。

職場からのプレッシャー

ライン作業では、一人ひとりの作業が製品の品質と生産効率に大きく関わってくるため、職場によっては強いプレッシャーが掛けられる場合があります。

常に一定の作業精度を維持する必要があり、ミスや遅延が許されない雰囲気の職場も多くあります。このような環境では、精神的なストレスが増加しやすく、プレッシャーに押しつぶされそうになることも、ライン作業がきついと言われる理由です。

人間関係の難しさ

ライン作業では、多くの人々が協力して作業を進めるため、人間関係のトラブルが生じやすいです。一度のミスをきっかけに職場内での関係性が悪化してしまい、職場の居心地が悪くなってしまった、という事例も。

特にコミュニケーションが不足している場合や、個々の作業ペースや仕事の進め方に違いがある場合、職場でのストレスが増加し、仕事に対する意欲が低下する原因となります。

ライン作業のきつさを軽減する方法は?

ここまでご紹介したように、ライン作業には一定のストレスを伴うことが常であり、多くの方がきつさを感じる仕事でもあります。企業によっては、ライン作業者のストレスが軽減するような取り組みをおこなっていることも多いですが、作業者レベルでも様々な工夫を取り入れることで、ライン作業のきつさを軽減することが可能です。

ライン作業がきついと感じている方は、下記のポイントに注意してみてください。

  • 効率的な作業方法と楽しみ方を見つける
  • 適切な休憩・定期的なストレッチを行う
  • 周囲の人とのコミュニケーション

効率的な作業方法と楽しみ方を見つける

ライン作業の作業効率を上げる方法をいくつかご紹介します。

最適な作業手順を覚える

多くのライン作業の現場では、効率的に作業を進めるためのマニュアルと研修が施されることが多いですが、自分なりに効率の良い作業の進め方をみつける意識を持つことが重要です。

効率のよい作業手順で仕事をこなせるようになることで、同じ物量の仕事をこなす際でも、精神的にも肉体的にも負担感を大きく減らすことにつながります。

また、ベテラン作業者のテクニックやコツを学ぶことでも、作業の効率を上げ、自分の作業方法を改善することができます。普段からコミュニケーションを取ることで仕事を教えてもらいやすい関係性を構築しましょう。

ゲーム感覚で仕事を楽しむ

作業をゲームのように捉え、目標達成や記録更新を楽しむことで、単調な作業も楽しく感じられます。例えば、自分自身に時間制限を設定して、特定の作業をより短時間で完了させることを目指したり、一日の終わりに作業達成度を記録して、それを翌日に更新することを目標にするというようなことが考えられます。

こうした小さなゲームを作業に設定することで、作業に対するモチベーションが高まり、日々の仕事に新たな楽しみを見出すことができます。

適切な休憩・定期的なストレッチを行う

長時間の立ち仕事や同じ姿勢での作業は、体に大きな負担をかけます。職場環境やルールにもよって休憩の形態は様々ですが、適切な休憩とストレッチを取り入れることで、体力的な疲労を軽減することができます。

定期的に休憩を取る

一定時間ごとに休憩を取り、リフレッシュすることが重要です。15分程度の短い休憩でも、体を休めることで作業効率が向上します。
休憩中には、目を閉じて脳や体を休めたり、深呼吸をしたりして、精神的なリフレッシュを図りましょう。また、休憩中に好きな音楽を聴いたり、軽い読書をすることで、心身ともにリフレッシュできます。

また、休憩中にスマートフォンをみる方も多いですが、スマートフォンを休憩中に利用すると脳が休まらず、疲労がたまり生産性が落ちるという研究もあるので注意しましょう。

ストレッチや軽い運動

休憩中に簡単なストレッチや軽い運動を行い、筋肉の緊張をほぐすことも効果的です。

例えば、肩や首のストレッチ、腰をひねる運動、脚の筋肉を伸ばす運動などを取り入れることで、長時間同じ姿勢で作業をしたことによる筋肉のこわばりを解消することができます。

また、軽いウォーキングやジョギングを行うことで、心肺機能や血流を高め、全身のリフレッシュを図ることができます。

職場でのコミュニケーション

良好な人間関係を築くことと、仕事について十分に理解しておくことで、職場でのストレス軽減に重要な要素になります。

悩みの共有と解決

同僚や上司と積極的にコミュニケーションを取り、助け合いの精神を持って仕事に取り組むことで、職場全体の協力体意識が高まります。

困ったことや問題が発生した場合は、すぐに周囲の人と共有し、解決策を一緒に考えることが重要です。

積極的なコミュニケーションが、問題解決を迅速にし、ストレスを減少させる助けとなります。このような取り組みが、職場の生産性向上にも繋がります。

仕事の内容をよく理解する

仕事をする際には、作業の目的や今の仕事が社会的にどのように役立っているのかを理解することでモチベーションの向上につながります。上司や先輩とコミュニケーションを取る中で、仕事の目的や進め方についてアドバイスを求めるようにしましょう。

また、そもそも仕事に応募する前や面接の段階で、作業内容について十分に質問をして、自分の体力や考え方にあった仕事であるかを十分に確認しておくことも大切です。

ライン作業に向いている人はどんな人?

ライン作業はきつい仕事と認識されがちですが、そもそもライン作業に向いているか向いていないか、個人の体力や性格に依存する部分があります。

同じ作業でも、あまりストレスを感じない人もいれば、強くストレスを感じる人まで様々です。ライン作業への求人応募を検討している方は、下記でご紹介するライン作業が向いている人の特徴を確認して、ご自身の適正を確認してみましょう。

  • 手先が器用な人
  • 忍耐力と持久力・集中力がある人
  • ストレス耐性が高く、冷静に対処できる人

手先が器用な人

ライン作業では、細かい部品を取り扱ったり、精密な作業を行ったりすることが多いです。

そのため、手先が器用で、細かい作業が得意な人には向いている仕事と言えます。正確な動きと迅速な対応が求められるため、器用さは大きな強みとなり、職場で重宝される人材になればモチベーションも更に高まります。

忍耐力と持久力・集中力がある人

単調で反復的な作業に耐える忍耐力や集中力も重要です。

ライン作業では、同じ動作を繰り返すことが多いため、飽きや疲れを感じやすいです。しかし、忍耐強く作業を続けられる人は、ライン作業の職場で強みを発揮することができます。長時間の作業に耐えられる体力も重要です。

逆に、1つの作業にすぐに飽きてしまう性格の方は、あまりライン作業は向いていません。

ストレス耐性が高く、冷静に対処できる人

ライン作業は、自分の作業工程を停滞させてしまうと、その後の作業にも影響を及ぼしてしまうため、高いプレッシャーの下で働くことが多いです。ストレスに強く、トラブルにも冷静に対処できる人は、ライン作業に向いています。

仕事への習熟度も、冷静さには大きく関わりますが、トラブルがあるとすぐにパニック状態に陥ってしまう自覚がある方には、ライン仕事はあまりおすすめできません。

ライン作業を快適にするために

ライン作業にはきついと感じてしまう要素が沢山ありますが、業務スキルとその対策を身につけることで、効率的かつ楽しく働くことができます。

効率的な作業方法や適切な休憩等、ポイントを抑えてライン作業のきつさを軽減させていきましょう。