同業他社への転職は、業界内での経験を活かしてキャリアアップを目指すために有効な手段です。しかし、「同業他社に転職していいの?」「禁止されているのでは?」と、一歩踏み出せずにいる人は少なくありません。

そこで今回は、同業他社へ転職する際のリスクや注意点と共に、転職を成功させる5つのポイントについて解説します。ぜひ最後までお読みいただき、同業他社への転職でキャリアアップを目指してください。

同業他社へ転職できる?

日本国内においては、憲法によって職業選択の自由が保障されています。そのため、たとえ同業他社であっても転職するのは求職者の自由です。憲法は、他の法律や企業の規則などより優先されるため、基本的に転職を制限されることはありません。

同業他社への転職は、個人のキャリア形成やスキルアップのために重要な要素で、転職により得られる新しい経験や知識は、業界全体の発展にも寄与します。ただし、企業との間に競業避止義務や秘密保持契約に関する条項がある場合は、これに違反しないように注意する必要があります。

契約により制限されるケースがある

企業との契約に、競業避止義務や秘密保持契約に関する条項が含まれている場合は注意が必要です。このような契約では、退職後一定の期間は同業他社で勤務しない、ノウハウや顧客情報を用いて競合会社を起業しないといった取り決めをしているケースがあります。

これは、企業が自社の利益や機密情報を保護するために設けるもので、このような契約条項がある場合、従業員は同業他社への転職が制限されることがあります。

転職を検討する際には、これらの契約内容を十分に理解し、再就職への障害になる場合は必要に応じて専門家のアドバイスを受けることが重要です。適切な手続きを踏むことで、安心して次のキャリアを築けます。

同業他社への転職が制限される契約とは?

同業他社への転職が制限される契約の代表的なものとして、以下の2つが挙げられます。

  • 競業避止義務
  • 秘密保持契約

競業避止義務

競業避止義務とは、特定の期間や条件を設けて、元従業員が自社の競合に値する企業や組織に属したり、会社を設立したりといった行為を禁止する義務のことです。企業の利益を保護するためには欠かせない契約で、自社のノウハウや戦略などの流出を防ぐために契約します。

競業避止義務は、就業規則で定められていることが多く、退職時に会社と誓約書を交わすこともあります。しかし、労働者には職業選択の自由や営業の自由が法律で定められているため、不当な制限を受けることはないでしょう。

秘密保持契約

秘密保持契約とは、自社が持つ秘密情報を外部に開示・流出することを禁止する契約のことです。在職中に得た秘密情報やノウハウを、転職先で元従業員が開示してしまうと自社の優位性が失われ、大きな損失を生んでしまう恐れがあるため、入社時や退職時に契約を結ぶケースが多くあります。

秘密保持契約を破ってしまうと、不正競争防止法違反として裁判を起こされたり、刑事罰の対象となったりすることがあるため、しっかり契約内容を確認しておきましょう 。

同業他社への転職で起こりうるトラブル

同業他社への転職は、トラブルを引き起こす可能性があるので注意しましょう。競業避止義務に関する契約条項に違反すると、法的措置を取られて訴訟問題に発展する可能性があります。

そのため、転職の際には就業規則や契約書を確認して、違反にならないか調べておくことが大切です。たとえ違反にならないケースでも、前職で得た技術や営業情報などの重要なデータを取り扱って、企業に損害を与えた場合などは訴訟リスクが高まることを覚えておきましょう。

このほか、前職の同僚や上司との人間関係が悪化することも考えられます。同業他社への転職が裏切りと見なされる場合、元の職場での評判が悪くなる可能性も高いです。

これが悪い噂となって業界内に広まれば、将来的なキャリアに悪影響を及ぼすかもしれません。

同業他社への転職を成功させる5つのポイント

同業他社への転職を成功させるためには、相手に良い印象を与え、自分のスキルや熱意をアピールすることが大切です。以下のポイントを押さえて、転職を成功させましょう。

  • 転職の目的を明らかにする
  • 話さない情報を決めておく
  • 前向きな姿勢で臨む
  • 等身大の自分をアピールする
  • 円満に退職する

転職の目的を明らかにする

面接では転職の理由を尋ねられますが、同業他社への転職の場合、とくに「競合に転職する理由」について詳しく聞かれることがあります。理由がしっかり答えられないと、転職を安易に考えている、熱意を感じられないと捉えられかねないため、企業研究をして意見をまとめておきましょう。

同じ業界に応募するからこそ、入社後に達成したい目標や意欲を具体的に示し、即戦力としてアピールすることが大切です。

話さない情報を決めておく

同業他社への転職時には、情報漏洩に注意しましょう。同業種ということで面接がスムーズに進むことがありますが、話が盛り上がる中でつい情報を漏らしてしまうケースも少なくありません。

また、前職で身につけたスキルや経験を話すのは問題ありませんが、具体的な機密情報について話すのはNGです。面接の前には、話す内容だけでなく「話さないこと」を決めておくと安心です。

前向きな姿勢で臨む

転職先で前職への不平不満を言うのは避けましょう。同業種である以上、似通った業務や社風がある可能性が高く、また同じ不満を理由に辞めるかもしれないと思われかねません。

また、口が軽いという印象を持たれてしまうと、責任ある仕事を任せてもらえないケースもあります。ネガティブな発言は極力避け、前向きな姿勢で面接や業務に臨んでください。

等身大の自分をアピールする

面接時や入社後すぐは、自分を良く見せたくなるものですが、実力以上に大きく見せてしまうのは危険です。スキルや実力は一緒に仕事をしていればわかってしまうものなので、見栄を張らずに等身大の自分をアピールしましょう。

また、同業種の会社であれば、前職の従業員が在籍している場合もあるため、何かのきっかけで嘘がバレてしまうかもしれません。できること、できないことを正直に伝えることで適切な協力を得られ、スムーズに会社に馴染んでいけるでしょう。

円満に退職する

同業他社への転職を成功させるためには、何より前職を円満に辞めることが大切です。業界の規模にもよりますが、業界内で悪い噂がたてば同業他社への転職は厳しくなるでしょう。

そのため、退職時に引き止めや妨害といったトラブルに遭わないよう、転職先については詳しく伝えないのが賢明です。悪い印象を残さないよう引継ぎをしっかり行い、やるべきことはすべて終わらせて退職するよう心掛けましょう。

同業他社へ転職するときの注意点

同業他社への転職は、場合によっては訴訟トラブルに発展しかねないため、慎重に進めることが大切です。転職時の注意点を把握し、トラブルに巻き込まれないように注意してください。

  • 就業規則や誓約書に違反してないか確認する
  • 情報漏洩や引き抜きに加担しない
  • モラルある行動をする

就業規則や誓約書に違反しないか確認する

就業規則や誓約書には、在職中のみならず退職後の行動についても記載されていることがあります。これらをきちんと確認し、自分がどのような義務を負っているかを把握しておくことが大切です。

契約内容に違反してしまえば、法的なトラブルに発展する可能性があり、知らなかったでは済まないかもしれません。

しかし、過度に厳しい契約内容の場合には、その妥当性について専門家に相談するべきケースもあるため、やはり内容を理解しておくことが重要になるでしょう。

情報漏洩や引き抜きに加担しない

同業他社への転職では、たとえ競業避止義務に関する契約を結んでいなかったとしても、前職の機密情報や顧客データを使用するべきではありません。コンプライアンス違反として大きな問題に発展すれば、転職先での信用を失うことも考えられます。

自身のキャリアを守るためにも、退職時にはデータをすべて返却し、デバイスやクラウドに情報が残らないようにしてください。

また、転職の際に同僚を誘うのは、引き抜き行為にあたる可能性があるため避けた方が賢明です。仮に、転職先から情報提供や引き抜きを提案された場合は、コンプライアンスに問題のある会社だと判断し、転職を考え直すとよいでしょう。

モラルある行動をする

同業他社への転職は、就業規則や契約によって制限されているケースがあり、これに違反してしまえば企業から訴えられる可能性もあります。そのため、情報漏洩に注意することはもちろん、前職を悪く言わない、前職の損害になるような行為をしないことが大切です。

モラルのある行動は、転職の成功と自分のキャリアを守ることにつながるため、しっかり意識したうえで転職活動に臨んでください。

同業他社への転職は前職への配慮を忘れない

転職の際に同業他社を選ぶこと自体は問題ありませんが、契約によって制限が設けられている場合は注意しなければなりません。たとえ故意でなくても、前職の損害になるような行為はトラブルの原因になるため、情報の取り扱いには細心の注意を払ってください。

同業他社へ転職する際は、前職に迷惑をかけないよう情報の取り扱いや行動に配慮し、円満退職することが大切です。