派遣社員の契約期間は一般的にどれくらい?

派遣社員の契約期間は人によって異なりますが、完全に自由に設定できるわけではありません。法律では契約の最短期間と最長期間について定められているため、これから派遣で働く方は理解しておくことが大切です。

本記事では派遣社員の契約期間や更新に関するルールなどについて詳しく解説いたします。

契約期間は最短で31日

派遣の最短期間は31日であり、週20時間の労働を前提としなくてはいけません。31日に達していない状態で解雇ができないのはもちろん、仕事を与えず実質的に解雇と同様の状態にすることもできません。

派遣社員は基本的に日雇い労働が認められておらず、月単位で働くのが一般的です。労働者派遣法三十五条の四では以下のように記載されています。

『派遣元事業主は、その業務を迅速かつ的確に遂行するために専門的な知識、技術又は経験を必要とする業務のうち、労働者派遣により日雇労働者(日々又は三十日以内の期間を定めて雇用する労働者をいう。以下この項において同じ。)を従事させても当該日雇労働者の適正な雇用管理に支障を及ぼすおそれがないと認められる業務として政令で定める業務について労働者派遣をする場合又は雇用の機会の確保が特に困難であると認められる労働者の雇用の継続等を図るために必要であると認められる場合その他の場合で政令で定める場合を除き、その雇用する日雇労働者について労働者派遣を行つてはならない。』

この法律から「政令で定められている業務」以外は日雇い派遣を行ってはいけないことがわかります。政令で定められている業務とは「ソフトウェア開発」「セールスエンジニア」「秘書」などが該当します。

契約期間は最長で3年

労働者派遣法では「同じ派遣先の同部署で3年以上働き続けてはいけない」と定められています。通称「3年ルール」とも呼ばれていますが、例外として正社員雇用や無期雇用派遣への切り替え、部署異動などの対応を行った場合は3年以上同じ会社で働き続けることができます。

派遣社員は3ヵ月で契約更新となることが多い

労働者派遣法では契約更新の期間については定められていません。派遣先企業と派遣会社との相談の元、契約更新期間が決定されます。一般的には3ヵ月で契約更新となることが多いですが、より短期間である1ヵ月で契約を結ぶこともあります。

1ヵ月更新で契約を結ぶメリット

1ヵ月更新で契約を結ぶと、派遣社員側が退職や契約内容の変更などの意思を伝えやすいというメリットがあります。契約で定められた期間は、契約内容に不満があったとしても、その内容に準じて労働をしなくてはいけません。

長期で契約を結んでしまうと、もし環境が合わなくてもその期間は労働を継続しなければいけませんが、1ヵ月契約であれば短期間で再度交渉が可能で、退職や部署異動の申し出などがしやすいです。

短期間契約のデメリット

短期間契約は短いスパンで契約更新の手続きを行わなくてはいけないため、派遣先企業、派遣会社、派遣社員それぞれに手間がかかることになります。更新自体はそれほど煩雑な手続きではありませんが、毎月行うとなるとそれだけ手間がかかってしまうことになります。

派遣契約の期間制限がないケース

派遣契約は政令で定めた特定の職種以外にも期限がないケースがあります。以下の条件に該当する場合は、契約期間が3年を超えていても継続して働き続けることが可能です。

  • 無期雇用
  • 派遣社員が60歳以上
  • 反復雇用

無期雇用

無期雇用は期間を定めずに派遣先企業と雇用関係を結ぶという契約であるため、3年ルールの制限は適用されません。しかし、無期雇用で契約を結ぶと原則として派遣先を選べなくなる点に注意しましょう。自由さという派遣社員としての大きなメリットの1つが失われてしまいます。

派遣社員が60歳以上

60歳以上の派遣社員についても3年ルールは適用されません。無期雇用の場合とは異なり、ある程度自由に派遣先を選ぶことが可能です。

反復雇用

派遣社員は「同じ会社の同じ部署」で働く限り、3年ルールに従って雇用されます。仮に同じ会社で同じ仕事内容だとしても、配属される部署が違えば再度3年契約を結ぶことが可能です。

派遣社員の契約に関するルール

派遣社員の契約に関しては、契約期間以外にも法律による規定があります。派遣先が守るべき法律がある一方で、派遣社員側が遵守しなくてはいけない内容もあるため注意してください。

契約終了は1ヵ月前までに告知が必要

派遣先から契約の終了を持ちかける場合、期限の1ヵ月前までに派遣会社から派遣社員に対して告知を行わなくてはいけません。急に契約終了を言い渡すことは認められておらず、余程の事情がない限り、契約更新のタイミング以外で終了することもできません。

契約内容が一方的に変更されることはない

契約内容を変更する場合は、派遣会社と派遣先、派遣社員全員の同意が必要です。そのため、一方的に契約内容が変更されることはありません。

しかし、不祥事を起こしたり、服務規程に反する行為を行ったりした場合は、解雇に繋がる可能性もあるので注意してください。

原則として契約期間中の退職はできない

派遣社員側も契約期間中に退職することはできません。職業選択の自由は憲法でも認められていますが、派遣社員は一定の契約期間労働することを前提に雇用されているため、契約更新のタイミングで退職する必要があります。

ただし、例外として以下の場合などに限っては契約期間中でも退職が可能です。

  • 契約内容と仕事内容に隔たりがある
  • 持病が急に悪化した
  • やむを得ない事情により引っ越すことになった

契約内容と仕事内容に隔たりがある

派遣社員と派遣先企業は契約の内容に準じて雇用されています。契約内容と実態が異なる場合は派遣先企業が責務を果たしていないことになるため、退職することが可能です。

「契約内容に記載された仕事内容と違う」「労働時間が契約内容に比べて長い」このような場合は派遣会社に相談してください。

持病が急に悪化した

持病が悪化して労働が困難になった場合は退職が可能です。ただし、判明している持病については、契約時にあらかじめ告知しておきましょう。持病を隠したまま契約を結ぶと、経歴詐称に該当する可能性があります。

ちなみに急に病気が発覚し、それまで通り働けなくなった場合も、やむを得ない事情と認められ退職は打倒と判断されることが多いです。

やむを得ない事情により引っ越すことになった

「親が事故に遭い介護が必要になった」「夫の転勤が決まった」など引っ越しが発生した場合は、その職場で派遣社員として勤務を続けることができないので、退職が認められます。

しかし、あくまでやむを得ない事情である必要があり、単に「引っ越したいから」という理由では退職は認められません。

契約満了後は失業保険が適用される場合がある

派遣社員が契約満了した場合は、失業保険を受け取れる場合があります。失業保険を受け取るためには、以下の条件を満たしていなくてはいけません。

  • 失業日から2年前の間に通算で12ヵ月以上の被保険者期間がある
  • ハローワークで失業保険の手続きを行っており、再就職のために活動をしている

派遣社員は社会保険に加入しているケースが多いため、上記の条件を満たすことは難しくありません。ハローワークと並行して派遣会社から新しい派遣先を探している場合も、失業保険は適用されます。

派遣社員の失業保険についてはこちらのコラムでより詳しく解説しております。良ければ合わせてご覧ください。

派遣で失業保険を受給するには?会社都合と自己都合の違い

派遣社員でも産休や育休は取得可能

派遣社員であっても産休や育休を取得可能です。取得する場合は派遣先企業に伝えるのはもちろんですが、派遣会社にも連絡の必要があることを忘れないようにしましょう。

同様に有休も取得可能です。取得できる時期については、派遣先企業によって異なるため、事前に相談するようにしてください。

派遣の契約期間に関するルールは多い

派遣の契約期間に関して定められているルールは多く、働いている派遣社員も知らないケースがあります。ずっと同じ会社で働き続けられると思っていたら、3年ルールによって派遣先が変更になったという方も少なくありません。

事前に派遣に関するルールについては理解を深めておき、派遣先変更に備えて心構えをしておきましょう。同じ派遣先で雇用され続けたい場合は、正社員への転換や無期雇用契約の締結などのために動き始めましょう。