たまに耳にする「日雇い派遣」。文字通り、1日のみの単発の派遣のことを指しますが、すぐに収入を得ることができるといったメリットがあります。
ただ、実は現在日雇い派遣として働くことは原則禁止されています。詳しくない人からすれば単発のアルバイトと大きく変わらないようにも思えますが、なぜ日雇い派遣だけが禁止されているのでしょうか。
今回のコラムでそのような疑問を含め、日雇い派遣について詳しく解説していくので、ぜひ最後までご覧ください。
目 次
そもそも日雇い派遣とは?
最初に日雇い派遣の概要について解説していきます。
冒頭で述べた通り、「日雇い派遣」と聞くと多くの人が1日だけの単発の派遣をイメージしますが、正確には日雇い派遣とは30日以内で働く派遣のことを指します。
そのため、1日だけの派遣も日雇い派遣に含まれますが、それはあくまで日雇い派遣の一例であるというように理解しておきましょう。
日雇い派遣と単発アルバイトの違い
次に日雇い派遣と単発アルバイトの違いについても解説していきます。前述した通り、日雇い派遣は契約日数が30日以内の契約を指しますが、期間以外にもいくつか異なる点があります。
雇用主
日雇い派遣と単発アルバイトの違いとして、まず挙げられるのは雇用主です。契約期間に関係なく、アルバイトは直接雇用であるため、勤務先の会社が雇用主ということになります。
一方で派遣社員が雇用契約を交わすのはあくまで派遣会社。派遣先企業には労働力を提供しているだけであり、給料も派遣会社から支払われることになります。
厳密には他にもいくつかの相違点がありますが、派遣社員にとってのメリットは派遣会社のサポートを受けることができるということです。
- 希望条件にあう案件を紹介してもらえる
- 派遣先企業との仲介役として相談に乗ってもらえる
このように派遣会社のサポートを受けられることは派遣社員の特権だと言えるでしょう。
福利厚生の有無
雇用主が異なることで、福利厚生もその雇用主に帰属することになります。
そもそも短期契約のスタッフが受けられる福利厚生は限られていますが、よくある例としては交通費の支給が挙げられます。自宅と勤務先がどれだけ離れていても、派遣社員が交通費をもらえることは基本的にありません。単発アルバイトでも交通費が支給されるかどうかは案件によって異なりますが、割合としては派遣の方がさらに低くなっています。
ただ、福利厚生が少ない分、基本給は派遣社員の方が高くなる傾向にあります。単発での求人を探すときはその点も加味して選択するようにしましょう。
日雇い派遣はなぜ禁止になったのか?
日雇い派遣の概要について解説しましたが、現在日雇い派遣を行うことは原則禁止されています。ではなぜ日雇い派遣のみが禁止されるようになったのでしょうか。
日雇い派遣が禁止になったのは平成24年の労働者派遣法の改正時です。一部の例外を除いて日雇い派遣を行うことはできなくなりましたが、その理由は労働者の雇用を守るためです。
企業にとって派遣社員とは、人材採用に伴う様々なプロセスを省略しつつ、労働力を獲得できるというメリットがあります。加えて、いざという時に契約を打ち切りやすいという面もあります。
つまり、正社員やアルバイトといった直接雇用と比較し、派遣社員の雇用は少なからず不安定ということになります。
中でも日雇い派遣は特にそのリスクが大きく、突然働き口をなくし、収入がゼロになってしまうというケースが少なくありませんでした。平成20年に起きたリーマンショックの頃はその問題が深刻化していましたが、そのような背景を受け、現在は日雇い派遣は禁止されるようになりました。
日雇い派遣禁止によるジレンマ
解説した通り、日雇い派遣が禁止されたのは労働者の雇用を守り、収入の安定を図るためです。しかし、そもそも労働者が職を求めるのは収入を得るためですよね。中でも日雇い派遣のように手軽に応募できる求人は労働者にとって魅力的であり、もともとの収入を補填する目的にも合致していると言えるでしょう。
そのため、日雇い派遣の解禁を求める声も少なからず上がっています。派遣切りなどの深刻化を受けての法改正ではありましたが、一部の人にとってはデメリットになってしまうジレンマがあります。
日雇い派遣が認められる例外
原則禁止されている日雇い派遣ですが、実はいくつか例外もあります。どのような場合が当てはまるのか解説していくのでチェックしてみてください。
- 雇用管理に支障をきたさない業務の場合
- 雇用機会の確保が困難な派遣社員の場合
雇用管理に支障をきたさない業務の場合
1つ目の例外は「雇用管理に支障をきたさない業務」です。
- 機械設計
- 事務用機器操作
- 通訳、翻訳、速記
- 秘書
- ファイリング
- 調査
- 財務処理
- 取引文書作成
- 添乗
- デモンストレーション
- 受付・案内
- 研究開発
- 広告デザイン
- 事業の実施体制の企画・立案
- 書籍などの制作・編集
- OAインストラクション
- セールスエンジニアの営業・金融商品の営業
数は多いですが、上記の業務は専門性が高いため、適正な雇用管理に支障を及ぼす恐れがないと厚生労働省によって定められています。そのため、これらの業務に該当する案件については日雇い派遣も認可されています。
雇用機会の確保が困難な派遣社員の場合
もう1つ例外として取り扱われるのは「雇用機会の確保が困難な派遣社員」の場合です。具体的には以下のような労働者を指します。
- 60歳以上の者
- 雇用保険の適用を受けない学生
- 副業として従事する者(生業収入が500万円以上の者に限る。)
- 主たる生計者以外の者(世帯収入が500万円以上の者に限る。)
60歳以上の者
労働契約を締結する時点で満60歳以上になっている人が該当します。
雇用保険の適用を受けない学生
学生の場合、世帯の中の主な生計者は親ということになります。つまり、学生の収入が生活に影響する範囲は小さいと判断されるため、日雇い派遣が認められています。
ただし、通信制の学校や夜間学校に通っている学生の場合、労働をするには雇用保険に加入する必要があります。「雇用保険の適用を受けない」という条件から外れてしまうため、日雇い派遣を行うことはできません。
副業として従事する者(生業収入が500万円以上の場合)
副業として働く場合も日雇い派遣を行うことが可能です。ただし、「生業収入が500万円以上」という条件もある点に注意しましょう。
生業収入とは、複数の収入源を持っている際、最も金額が大きい収入源を指します。つまり、派遣以外に安定した収入源があるということになるため、例外として取り扱われます。
主たる生計者以外の者(世帯収入が500万円以上の場合)
「主たる生計者」とはその世帯収入の中で50%以上を占める収入源を持つ者を指します。日雇い派遣が認められるのはそれ以外の者とされているため、例えば夫の年収が500万円、妻の年収が200万円の場合、主たる生計者は夫になるため、妻は日雇い派遣が可能です。
ただ、こちらの例外も「世帯収入が500万円以上」という条件が課せられているため、世帯収入が500万円に満たない場合は日雇い派遣を行うことはできません。
年収を証明するために必要な書類
上記の通り、日雇い派遣が認められる例外には年収に関する条件もいくつか含まれています。そのため、日雇い派遣を行う場合は自身や自身が属する世帯の年収を証明する書類の提出を求められることがあります。
具体的には以下のような書類が証明書として利用できるため、もし必要になりそうな場合は事前に用意しておきましょう。
- 源泉徴収票
- 所得証明書
- 確定申告書の控え
- 給与明細
- 給付通知書(年金給付・失業給付・育児休業給付・児童手当など)
実際にどの証明書が認められるかは派遣会社によって異なります。派遣会社によっては指定されている場合もあるため、あらかじめ確認するようにしましょう。
日雇い派遣に罰則はある?
「もし嘘の申告をして日雇い派遣を行った場合、何か罰則はあるのか?」
中にはこのような疑問を抱く人もいるかもしれません。
結論をお伝えすると、もし例外となる条件を満たさないにも関わらず、日雇い派遣を行ったとしても、特に罰則が課せられることはありません。もちろん契約途中である場合には契約打ち切りの処置が取られますが、もし何らかの理由で意図せず日雇い派遣を行ってしまったとしてもご安心ください。
ただ、基本的に日雇い派遣を始める際には派遣会社からきちんと条件を満たしているかのチェックが入ります。誤って認可されてしまうようなことも考えにくいでしょう。
日雇い派遣はどういう時におすすめ?
最後に日雇い派遣はどういった時におすすめなのか解説していきます。もちろん認可されるための条件を満たしている必要があるという前提はありますが、それを踏まえた上でいくつかのシチュエーションを紹介していきます。
- 早急に収入を得たい
- 専門的なスキルを持っている
- もともと派遣会社に所属している
早急に収入を得たい
日雇い派遣をおすすめできるシーンとしてまず挙げられるのは、やはりできるだけ早く収入を得たい場合です。この点は単発アルバイトにも共通していますが、違いとして日雇い派遣は福利厚生がない分、基本給が高くなっています。
募集要項をよく理解して総合的に判断する必要がありますが、場合によっては単発アルバイトよりも効率良く稼げる可能性もあります。
ただし、1点注意が必要なのは、日雇い派遣だからといって即日給料が支給されるとは限らないということです。給料が振り込まれるまでに数日間を要する場合も珍しくないため、即日払いを希望する方は事前に確認しておきましょう。
専門的なスキルを持っている
次に挙げられるのは専門的なスキルを持っている場合です。
先ほど定められた特定の業務であれば日雇い派遣を行うことができると解説しましたが、その多くは専門的なスキルを要するが故に、雇用が安定しやすいと言われている業種です。
同時に他の業種と比較して給与相場が高く設定されていることも多いため、自身が有しているスキルを活かせそうな業種があればチャンスだと言えるでしょう。
もともと派遣会社に所属している
最後におすすめしたいのはもともと派遣会社に所属している方です。
求人に応募する際の各ステップを省略できる点が日雇い派遣のメリットの1つですが、既に派遣会社に所属していれば尚更でしょう。派遣社員としての登録も済ませている状況なので、気に入った案件があれば、応募から実際に働く段階までスムーズに進められるでしょう。
条件が合えば日雇い派遣を検討してみてください!
現在は原則禁止となっている日雇い派遣ですが、少なからずメリットもあります。条件を満たしている方はぜひ検討してみてください。
マルジョブでは他にも派遣に関する様々なコラムを発信しています。既に派遣社員として働いている方、派遣社員を検討している方はぜひチェックしてみてください。