リモートワークが普及して場所を選ばずに働けるようになった昨今、複数の仕事を掛け持ちすることは決して珍しいケースではなくなってきています。

派遣として働く方の中には、もう少し収入を増やしたい、空いている時間に働きたいといった理由から、派遣の仕事の掛け持ちを検討している方も多いのではないでしょうか。

そこで、今回のコラムでは、派遣の仕事を掛け持ちできる条件や掛け持ちする際の注意点について詳しく解説していきます。

派遣の掛け持ちは基本的にはOK

結論から言うと、派遣の仕事を掛け持ちすることは違法ではありません。派遣の仕事とは別にアルバイトの仕事をしたり、派遣の仕事を複数掛け持ちしたりすることは可能です。

ただし、2つ以上の仕事を掛け持ちする際はスケジュールを正確に管理し、それぞれの仕事がおろそかにならないよう体調管理を徹底する必要があります。

法律で禁止されていないからといって、どの派遣会社に所属しても別の仕事との掛け持ちが可能というわけではありません。本業がおろそかになってしまうことや情報漏洩の懸念から、副業を禁止している派遣会社や派遣先企業も多く存在します

派遣の仕事を掛け持ちする際には、事前に派遣会社や派遣先企業の就業規則を確認しておくべきです。他にも、派遣社員が複数の仕事を掛け持つ上での注意点がいくつか存在しますので、後ほど詳しく解説します。

派遣の仕事を掛け持ちするメリット

派遣の仕事を掛け持ちするメリットとして、以下の2点が挙げられます。

  • 収入アップを目指せる
  • 幅広い業務経験を積める

収入アップを目指せる

派遣の仕事の中には、シフト制を採用しており労働時間が限られてしまうものも少なくありません。仕事を掛け持ちすると収入源を増やし、収入アップを目指すことができます

地域や勤務先によって異なりますが、派遣社員の時給はアルバイトやパート社員に比べて約400円以上高いことが一般的です。

そのため、派遣の仕事とは別でアルバイトやパートとして働くよりも、派遣の仕事を掛け持ちした方が効率良く稼げる可能性が高いと言われています。

幅広い業務経験を積める

膨大な数の求人を扱う大手から、特定の業界や地域の求人に力を入れているところまで、日本には様々な派遣会社が存在します。新たに別の派遣会社に登録すれば、今まで出会えなかったような業界や職種の求人を紹介してもらえるかもしれません

複数の職種を掛け持ちすることで、幅広い経験を同時に積むことが可能です。将来のキャリアを見据えて多様なスキルを身に付けたい方や、いろいろな仕事を経験して自分に合ったものを見つけたい方は、仕事の掛け持ちに向いていると言えるでしょう。

派遣の仕事を掛け持ちするデメリット

派遣の仕事を掛け持ちすると、以下のようなデメリットがあります。

  • プライベートの時間を確保するのが難しい
  • 体力を激しく消耗する
  • それぞれの仕事が中途半端になる

プライベートの時間を確保するのが難しい

派遣の仕事を掛け持ちすると業務時間が増え、自分の時間を十分に確保することが難しくなってしまいます。複数の仕事を掛け持つことを検討している派遣社員の方は、休息やリフレッシュのための時間を十分に確保できるよう勤務スケジュールを調整すると良いです。

休日に時間を割きたい大切な趣味がある、家族との時間をできる限り多く捻出したいといった方は、掛け持ちには向いていないかもしれません。

体力を激しく消耗する

業務時間が増えれば、体力的な負担も当然大きくなります。たとえ大きなやりがいを持って仕事に取り組んでいても、忙しく業務に追われ続けていると疲労やストレスが蓄積し、作業効率や集中力が低下してしまうでしょう。

無理をして疲れが溜まってしまうと集中力を保ちにくくなり、ミスや事故などに繋がってしまうかもしれません。怪我や病気をしてしまうと長期間業務から離れなければならず、収入が大幅に減るといったケースも考えられます。

健康を維持して安全に働くためにも、仕事を掛け持ちする場合は体力を消耗しにくい職種を選ぶことが望ましいです。

それぞれの仕事が中途半端になる

仕事以外の時間に頭の中を整理する、自宅で復習するといった方法で仕事を覚える方も多いのではないでしょうか。2つ以上の仕事を掛け持ちしていると、それぞれの仕事についてじっくりと振り返る時間を確保することが難しくなります。

業務の習得が遅れる、それぞれの派遣先での作業を混同してしまうといったことが起こる可能性が高くなります。万が一必要な作業や確認を失念してしまえば、重大なミスや事故に繋がりかねません。

派遣の仕事を掛け持ちする際の注意点

ここからは、派遣の仕事を掛け持ちする際の注意点を解説していきます。

  • 派遣会社の規則を確認する
  • 同じ派遣会社で掛け持ちしない
  • スケジュール管理を徹底する
  • 所属する派遣会社に報告する
  • 労働保険や社会保険の加入条件を確認する
  • 収入や労働時間の管理に注意する
  • 同業他社の掛け持ちは避ける

派遣会社の規則を確認する

前述したように、派遣会社によっては就業規則で副業を禁止しているところもあります。必ず事前に派遣会社の就業規則を確認した上で、掛け持ちを始めるようにしてください。

就業規則に反して複数の仕事を掛け持ちしたことを派遣会社に知られてしまえば、間違いなく信用を失ってしまいます。

契約を更新してもらえない、次の仕事を紹介してもらえないなど、今後の派遣生活に悪影響を与えてしまうでしょう。最悪の場合、派遣会社を解雇されてしまうかもしれません。

同じ派遣会社で掛け持ちしない

同じ派遣会社に複数の仕事を紹介してもらうことは、あまりおすすめできません。

正社員と同様に、派遣社員も労働基準法に従って1日8時間、1週間40時間を超えて働いた分だけ残業代が支給されます。派遣社員の場合、残業代を支払うのは派遣先企業ではなく派遣会社です。

むやみな残業代の支払いを避けたい派遣会社にとって、所属している派遣社員が仕事を掛け持ちすることはあまり好ましいことではないでしょう。

就業規則で禁止されていなければ掛け持ちを希望する旨を申し出ることはできますが、積極的に求人を紹介してもらえる可能性は低いです。複数の派遣会社に登録し、それぞれで紹介してもらった仕事を掛け持ちする方が良いと言えます。

スケジュール管理を徹底する

派遣の仕事を掛け持ちする場合、出勤日が重ならないようスケジュールを調整しなければなりません。シフトが不定期な職場で勤務している、繁忙期に急遽シフトを増やすといった場合は特に注意が必要です。

休みだと思ってシフトを出したら別の派遣先の出勤日だったといった事態が起こってしまうと、一方の勤務先を突然休まなければならず、多大な迷惑をかけてしまいます。

スケジュール帳を持ち歩いて都度予定を書き込む、シフト管理アプリを利用するなど、勤務日程を正確に管理できるよう工夫が必要です。

所属する派遣会社に報告する

掛け持ちする派遣の仕事を探す際には、所属する派遣会社に必ず報告するようにしてください。掛け持ちすることを派遣会社に黙って就職活動をしていると、思わぬ不都合が生じる可能性があるためです。

例えば、別の派遣先で仕事をしながら就職活動をする場合、仕事の合間を縫って担当者からの連絡に対応したり、顔合わせの日程を確保したりしなければなりません。

別の仕事をしていることを担当者に知らせておかないと、勤務中にこまめな連絡ができず、就業意欲が低いのではないかという誤解を与えてしまうでしょう。

労働保険や社会保険の加入条件を確認する

社会保険 1週間の所定労働時間が正社員の4分の3以上
(1ヶ月の所定労働日数が15日以上かつ1週間の所定労働時間が30時間以上)
労働保険 1週間の所定労働時間が20時間以上かつ31日以上の雇用が見込まれる

全ての企業には、労働者を労働保険や社会保険に加入させる義務があります。しかし、この義務が発生するのは労働者が以下のような条件を満たしている場合に限られます。

派遣社員の場合、社会保険と労働保険ともに支払いの義務は派遣会社にあります。2つ以上の派遣会社に登録して働く場合、それぞれの職場において上記の条件を満たしているかどうかを確認しなければなりません。

仕事を掛け持ちする際のルールは社会保険と労働保険で異なるため、以下で解説していきます。

社会保険

勤務先に入社すると同時に加入する社会保険ですが、先述した条件を満たしている全ての派遣会社で加入しなければなりません

社会保険に重複して加入してしまったら、10日以内に「健康保険・厚生年金保険 被保険者所属選択・二以上事業所勤務届」を提出してください。その際には、メインとなる派遣会社を1つ選択する必要があります。

労働保険

社会保険とは異なり、労働保険に重複して加入することはできません。主とする派遣会社を1つ選択し、選んだところでのみ労働保険に入るようにしてください。

収入の管理に注意する

掛け持ちした派遣の仕事によって得られる収入についても、十分注意して管理しなければなりません。

扶養内で収まるように働きたい方は、それぞれの勤務先で得た年収の合計を正確に確認しておくべきです。年間の収入が103万円を超えてしまうと自動的に扶養から外れてしまい、所得税の支払い義務が生じてしまいます

仕事を掛け持ちする場合は、自分で確定申告を行わなければならない点も頭に入れておきましょう。というのも、年末調整は1箇所の勤務先でしか受けられないためです。以下のような流れで確定申告を行ってください。

  1. メインで収入を得ている勤務先で年末調整を受けて源泉徴収票を受け取る
  2. 別の勤務先で源泉徴収票を受け取る
  3. それぞれの勤務先で受け取った源泉徴収票を持って税務署で手続きを行う

ルールを守って無理なく掛け持ちしよう

収入アップや幅広い経験を得ることを目的として派遣の仕事を掛け持ちすることは可能です。しかし、派遣会社に黙って仕事を掛け持つ、ダブルブッキングを繰り返すといった事態が生じると、派遣先企業や派遣会社からの信頼を失いかねません。

派遣の仕事をうまく掛け持ちするためには、ルールを守り、スケジュールや収入などをしっかりと管理することがとても重要です。

派遣会社や求人について丁寧にリサーチを行い、必要に応じて派遣会社に相談することで、無理なく掛け持ちを続けてみてください。