派遣社員として働くにあたり、「雇用保険に入れる?」「失業保険はもらえる?」といった心配をしている人もいるのではないでしょうか。もちろん派遣社員も雇用保険の加入対象になりますが、働き方によっては加入条件を満たせないので注意が必要です。

今回のコラムでは、派遣社員も対象になる雇用保険の概要と給付、加入条件について解説していきます。万が一失業状態になった場合に備え、失業保険を受給する流れもまとめているので、あわせてチェックしてください。

派遣社員も加入できる!雇用保険とは

雇用保険は、労働者が失業したときや休業を余儀なくされたときに、生活の安定と再就職を支援するための制度です。一般的には正社員が対象だと思われがちですが、派遣社員も一定の条件を満たせば加入できます

派遣という働き方は、契約期間が定められていたり、次の仕事が見つからなかったりすることもあるため、収入が不安定になりがちです。そんなとき、雇用保険に加入していれば、失業時の給付金や職業訓練の受講、再就職支援といったサポートが受けられます。

【雇用保険】給付の種類

雇用保険の給付には、次のようなものがあります。

求職者給付

求職者給付は、働けない間の生活を支えるために支給される雇用保険の代表的な給付制度です。主な手当は以下のとおりです。

  • 基本手当(失業保険):次の仕事が見つかるまで一定期間支給
  • 傷病手当:ケガや病気で働けなくなった際に支給

仕事を探す意思と能力があるにもかかわらず、職を失った人に対して、次の仕事が見つかるまでの一定期間、基本手当が支給されます。ケガや病気が原因で15日以上働けない場合は、基本手当ではなく傷病手当を受給することになります。

就職促進給付

就職促進給付は、失業中に積極的な就職活動を行い、再就職を果たした人をサポートするための給付です。主な手当は以下のとおりで、さまざまな条件を満たすことで支給されます。

  • 再就職手当:早期の再就職によって支給
  • 就業促進定着手当:再就職で給与が下がった場合に支給
  • 広域求職活動費:ハローワークで紹介された遠方の企業へ出向くための費用として支給

再就職手当を受け取るためには、給付期間の3分の1以上支給日が残っている、1年以上の勤務が決まっているなどの条件を満たす必要があります。また、再就職先での賃金が前職より低い場合には、6か月以上働いていることなどを条件に、基本手当の40%を上限として就業促進定着手当の受給が可能です。

教育訓練給付

教育訓練給付は、働く人のスキルアップやキャリアチェンジを支援する制度です。国が指定した講座を受講し修了した場合、支払った受講料の一部が給付金として戻ってきます

対象になるのは雇用保険に一定期間加入していた人で、離職後でも一定の条件を満たしていれば利用できます。給付は原則として訓練経費の20%ですが、専門性の高い教育訓練では最大70%まで支給される場合もあり、医療・IT・保育など幅広い分野の資格取得を後押しします。

雇用継続給付

雇用継続給付は、さまざまな事情で働き方を変えながらも、同じ職場で仕事を続ける人を支援するための制度です。代表的なものには、次の3つがあります。

  • 育児休業給付
  • 介護休業給付
  • 高年齢雇用継続給付

たとえば育児休業給付は、子どもが1歳(条件により最長2歳)になるまで休業した場合に、休業前賃金の一定割合が支給されます。介護休業給付も同様に、家族を介護するために仕事を一時中断する際の生活を支えるものです。

また、定年後も働き続ける高齢者には、賃金が下がった際にその差を補う給付が設けられています。

派遣社員が雇用保険に加入する条件

派遣社員も、以下の条件を満たすことで雇用保険に加入できます。

31日以上の雇用見込みがある

雇用保険は、短期間のアルバイトや派遣ではなく、一定期間継続して働く見込みがある人を対象にしています

たとえば派遣社員の場合は、最初の契約期間が1ヶ月未満であっても、更新の可能性が高く、トータルで31日を超える場合には加入対象となります。一方で、数日のイベント期間限定のスタッフなど、期間が明確に短い仕事では加入できません。

派遣では1か月単位の契約もあるため、継続の可能性について確認しておくことが大切です。

週の所定労働時間が20時間以上

この条件は、勤務形態を問わず、安定した働き方で収入を得ている人を保護するためのラインとして設定されています。たとえば、週4日5時間勤務であれば20時間に達するので、雇用保険の加入対象になります。

就業先によって、シフトや勤務時間が変動することもありますが、派遣社員の場合は契約上の所定労働時間が基準になるので、登録時に確認しておきましょう。

昼間学生ではない

雇用保険は、主に生計を立てるために働く人を支援する制度なので、学生は原則として加入の対象外です。ただし、これは全日制の学生を指しており、通信制や夜間部の学生、あるいは大学を休学中でフルタイム勤務している場合などは該当しません。

そのため、学生であっても就労がメインで条件を満たしていれば、雇用保険に加入できます。派遣会社に登録する際は、自分の在学形態を正しく伝え、適正に保険加入できるようにしておきましょう

派遣社員が失業保険を受給する流れ

最後に、失業保険を受給する流れについて解説します。

雇用保険被保険者証と離職票をもらう

失業保険を受給するためには、まず派遣会社から離職票を受け取ります。これは派遣会社が手続きを行って発行されるので、辞めるにあたって離職票が必要な場合は、必ず派遣会社に依頼してください。

離職票には、離職理由や在職中の給与、出勤日数などが記載されており、給付内容や受給開始時期に関わってきます。もし、離職票が届かない場合は、派遣会社に早めに問い合わせましょう。

求職の申込み・受給資格の決定

離職票を受け取ったら、次はハローワークで求職の申込みを行い、受給資格の決定を受けます。このとき必要になるものは以下のとおりです。

  • 離職票
  • 本人確認書類(マイナンバーカード、免許証など)
  • 印鑑
  • 証明写真
  • 預金通帳

ハローワークで求職の申し込みをしますが、その後必ずしもハローワークから紹介された仕事を選ぶ必要はなく、派遣会社から新たな案件を提示されれば、そちらを選んでも問題ありません。

雇用保険受給説明会へ参加する

受給資格が決定しただけでは、失業手当を受け取ることはできません。受給するためには、ハローワークから指定された日に、雇用保険受給説明会へ参加する必要があります

これは、失業保険の制度説明を受ける場で、今後の手続きの流れや注意点を理解する大切な機会です。説明会では、給付金がいつ・どのように支払われるのか、認定日の説明、求職活動の証明方法など、受給に関する具体的なルールが詳しく解説されます。

その後、「雇用保険受給資格者証」と「失業認定申告書」が配布され、失業認定日が決定します。

失業の認定を受けて受給スタート

給付金を受け取るためには、定期的に失業認定を受ける必要があります。会社都合による失業の場合は認定日から数日で振り込まれますが、正当な理由がない自己都合退社の場合は2~3か月後に入金されます

ハローワークでは、おおむね4週間ごとに求職実績の確認や就労の有無などを確認します。問題がなければ給付は継続されますが、虚偽の申告をすると不正受給となり、返還や罰則の対象になるため注意が必要です。

派遣社員も雇用保険の対象になる

雇用保険には、派遣社員もいくつかの条件を満たすことで加入できます。派遣は不安定な働き方になる可能性もあるため、万が一に備えて雇用保険に入っていると安心です。

雇用保険の代表的な給付は失業保険で、次の仕事が見つからないときなどに活用できます。失業手当を受給する場合は、必ず派遣会社に離職票をもらってハローワークに提出してください。

失業認定にあたって虚偽の申告をすると支給がストップしてしまうので、アルバイトや求職活動については正確に報告しましょう。