離職者が受け取れる給付金にはさまざまなものがありますが、早期に再就職した場合には再就職手当がもらえます。派遣で働いていると、退職した場合に失業手当や再就職手当がもらえるのか不安になることもあるのではないでしょうか。
この記事では、派遣社員でも再就職手当がもらえるのかという疑問に答えるとともに、受給のための条件や手続きについて解説しています。
再就職手当とは
再就職手当は、失業手当の受給が決まった後で、早期に再就職した場合にもらえる手当です。
離職から再就職までの間には、申請すれば失業手当(基本手当)が受け取れます。しかし、受給者が「失業手当があるから就職しない」といった状況にならないよう、早めに再就職した場合に「お祝い金」のような意味合いで再就職手当が支給されます。
失業手当を満額もらいたいと考える人もいるでしょうが、多くの場合で早期に再就職した方が受け取れる総額は大きくなるので、可能であれば申請した方がよいでしょう。
派遣社員でも再就職手当はもらえる
失業手当や再就職手当は、正社員でなければ受けられないと思っている人がいますが、派遣社員でも受給できます。雇用保険に加入していれば、パートやアルバイトなど雇用形態に関係なく受給することが可能です。
派遣で離職して正社員で就職する、または個人事業主になるといった場合も受け取ることが可能です。もちろん正社員で離職して、派遣社員として再就職しても問題ありません。
ただし、失業手当を受け取っていなければ再就職手当はもらえないので、離職した場合はまず失業手当の申請をしてください。
再就職手当をもらう条件
再就職手当を申請する際には、以下8つの条件を満たさなければなりません。
条件に合わない場合は給付の対象外になる場合があるので、しっかり確認しておきましょう。
- 待機期間を満了している
- 雇用保険に加入している
- 過去3年以内に再就職手当を受給していない
- 失業手当の受給日が1/3以上残っている
- 再就職先と前職に密接な関わりがない
- ハローワークや人材紹介会社の紹介で就職する
- 受給決定前に内定していない
- 1年以内の有期雇用ではない
待機期間を満了している
失業手当の受給手続きのあと、7日間の待機期間を満了してからの再就職が条件になります。この7日間の間に内定が出てしまうと、失業手当が受給できなくなるので注意が必要です。
また、待機期間中にアルバイトをしたり、失業状態でなかったりした日は含まれないので気をつけましょう。
雇用保険に加入している
再就職手当は、原則として新しい勤務先の雇用保険に加入していることが条件になります。ただし、雇用保険に加入していなくても、個人事業主などとして起業した場合には対象になることがあります。
申請の時点で雇用保険に加入していない場合でも、加入の見込みがある場合には対象になる可能性が高いので、必ず再就職先に確認してください。
過去3年以内に再就職手当を受給していない
過去3年以内に、再就職手当または常用就職支度手当を受給していた場合は手当を受け取ることができないので気をつけてください。再就職、起業ともに対象になるため、申請する前に、過去に該当する受給歴がないか調べておきましょう。
常用就職支度手当とは、障害などにより就職が困難な人が受給できる手当です。
失業手当の支給日が1/3以上残っている
失業手当の支給日(就職日の前日までの日数)が1/3以下の場合は早期就職とみなされず、手当は支給されません。
たとえば失業手当の給付が90日間だった場合は、残り30日を切ってしまうと再就職手当の対象から外れてしまうので、失業手当の残り日数に気をつけて就職活動する必要があります。
再就職先と前職に密接な関わりがない
離職前と同じ会社に勤務する場合も、再就職手当は受け取れません。前職と再就職先に密接な関わりがある場合にも、支給されないことがあるので気をつけてください。
親会社、子会社の関係であったり、グループ会社であったりする場合、受給は難しいと考えられます。
ハローワークや人材紹介会社の紹介で就職する
自己都合退職で給付に制限がある場合は、ハローワークまたは人材紹介事業者(派遣会社や転職エージェントなど)の紹介による就職でないと対象になりません。
そのため、求人情報雑誌や転職サイトなどを利用して、自分で求職活動をして決まった場合は再就職手当の給付対象にならないので気をつけてください。
受給決定前に内定していない
受給資格が決定する前に、すでに内定していた会社に就職した場合は、再就職手当を受給することができません。退職した時点で、次の就職先が決まっているような場合には支給対象にならないので就職の時期に注意しましょう。
1年以内の有期雇用ではない
有期の派遣スタッフや短期雇用のように、1年以内に退職する可能性がある場合にも、給付の対象外になります。ただし、派遣スタッフでも契約更新される見込みがある場合には、再就職手当をもらえる場合もあるので、よく確認しておきましょう。
申請に必要な書類は?
再就職手当の申請には、以下の書類が必要になります。取得に時間がかかるものもあるので、余裕を持って準備しましょう。
- 再就職手当の支給申請書
- 雇用保険の受給資格証
- タイムカードまたは出勤簿のコピー
- 失業認定申告書(就職日前日までの)
- 返送用封筒
再就職手当の支給申請書は自分で記入するので、ハローワークで入手してください。新しい勤務先の採用証明のほか、タイムカードや出勤簿のコピーを求められた場合には勤務先からもらって提出してください。
再就職手当の申請手順
再就職手当の申請は、以下の手順で行います。
- 採用証明書(再就職先が記入)、雇用保険受給資格者証、失業認定報告書をハローワークに提出
- ハローワークから再就職手当支給申請書を入手し、再就職へ記入依頼
- 雇用保険受給資格者証と再就職手当支給申請書をハローワークへ提出
受理されれば、「再就職(入社日)が決まってハローワーク(公共職業安定所)に報告をしてから約1ヵ月後」に手当が支給されます。
再就職手当の注意点
再就職手当を受給するためには、条件や申請手順のほかにも気をつけなければならないことがあります。場合によっては受給できたとしても受取額が少なくなってしまうケースもあるので、しっかり確認しておきましょう。
申請期限がある
再就職手当には申請期限があるので、申請できるようになったらなるべく早く手続きを行ってください。申請できるのは、原則として再就職した日の翌日から1ヵ月となっています。
郵送でも大丈夫なので、出向く時間がない方は簡易書留などで送りましょう。時効が2年に設定されているため、期限を過ぎた場合でも2年間(再就職日の翌日から)は申請可能になっています。
参考:申請期限が過ぎたことにより給付を受けられなかった方へ|厚生労働省・都道府県労働局・ハローワーク
受給できない場合がある
前述した条件が満たされていなかったり提出書類に不備があったりする場合は受給できないことがあるので注意が必要です。再就職手当の申請中に退職した場合ももらえないケースがあるので気をつけてください。
不受理になった場合は、書類に不備がないか、受給の条件に当てはまっているかをしっかり確認しましょう。
再就職のタイミングで給付率が変わる
再就職手当は、失業手当が受給できる残りの日数に応じて給付率が変わるため、再就職のタイミングによってもらえる金額が変化します。
【再就職手当の計算式】
再就職手当の受給額=基本手当日額 ×支給残日数 × 給付率
給付率は、支給残日数が2/3以上残っている場合で70%、1/3以上で60%と決められているので、再就職日が1日ずれただけで支給額が変わるケースもあります。
早めの再就職で手当をもらおう
再就職手当は、離職者の早期の再就職を図るために給付される手当で、派遣社員やパート、アルバイトでも受給することが可能です。受給するためには8つの条件を満たす必要があるほか、申請時期によっては支給されないケースもあるので注意が必要です。
再就職のタイミングによっては受け取れる金額が変わることがあるので、失業手当受給の待機期間が終ったら、なるべく早く就職活動を行いましょう。