正社員であれば、一般的に住民税は給与天引きされるため自分で納める必要はありません。しかし、派遣社員の場合はどのように住民税を納税しなければいけないのでしょうか。

今回は、派遣社員の住民税について詳しく解説します。

納税方法や注意点など、住民税に関する情報を詳しく解説するので、ぜひ最後までご覧ください。

住民税とは?

そもそも住民税とはどのような税金なのでしょうか。

住民税とは、一定以上の所得がある人が、自身の居住する都道府県・市区町村に納める税金です。地域社会で使用される費用や公共サービスの費用を分担するための税金で、「道府県民税」と「市町村民税」の2種類を合わせたものです。

住民税の納税額は、所得や居住地域が設定している税率によって異なります。「均等割」と「所得割」の2つに分けられ、それぞれ以下の違いがあります。

  • 均等割:平等に一律で課される税金
  • 所得割:所得に応じて課される税金

所得割は、前年の1月1日~12月31日の1年間の所得から算出されるもので、算出方法は以下の通りです。

  • (所得-所得控除)× 税率-税額控除

住民税は前年の所得を基準として課されるため、前年に所得がない新卒社員は納税する必要がありません。基本的には、前年に100万円を超える給与所得がある人が納税義務者となります。

派遣社員の住民税の納税方法

住民税には納税方法が2種類あります。

  • 特別徴収・・・給与から天引きされる
  • 普通徴収・・・納税通知書が届いて自身で納める

正社員であれば、特別徴収によって給与天引きされるため、自身で納める必要がありません。しかし、派遣社員はどうでしょうか。

派遣社員の場合、ほとんどが普通徴収によって自身で住民税を納めなければなりません。これは派遣会社にもよりますが、一般的に住民税については関与しない派遣会社が多いです。

派遣社員が普通徴収になることが多いのは、派遣社員の働き方に理由があります。派遣社員は正社員と比較すると働き方が自由なので、派遣社員によってそれぞれ働き方が異なります。時短勤務をしていたり、複数の派遣会社を掛け持ちしていたりと、派遣会社は全ての派遣社員の働き方を把握することが難しいです。

住民税の処理まで関わると、派遣会社側の負担が大きくなってしまうということから、ほとんどの派遣会社は住民税を給与天引きすることはないということです。住民税の納税義務者に該当する場合、納税通知書が自宅に届くので、忘れずに納付してください。

自身の納税方法がわからないという方は、派遣会社の担当者に確認しましょう。

派遣社員の住民税の納付期限

住民税の納税義務者に該当した場合、普通徴収であっても特別徴収であっても6月頃に「住民税決定通知書」が届きます。特別徴収の場合、会社宛てに届くので会社から通知書を渡され、毎月住民税が給与天引きされるでしょう。

普通徴収の場合、支払い回数は全額一括か年4回の分割かを選択することができます。年4回の分割納付を選択した場合、以下の期日までに納付しなければなりません。

  1. 6月末日
  2. 8月末日
  3. 10月末日
  4. 翌年1月末日

決済方法は自治体によって異なりますが、金融機関への振り込みやコンビニ支払いで納付することが一般的です。納付期限の約1ヵ月前に納税通知書が自宅に届くので、納付期限・納税金額・決済方法を確認して、忘れずに納付しましょう。

住民税を払い忘れたらどうなる?

納税通知書が届いたとしても、忙しかったり面倒だったりして、支払いを先延ばしにしてしまうこともあるでしょう。納税通知書が届いてもすぐに目を通さず後回しにして、忘れてしまうかもしれません。

納付期限までに納税できなかった場合、以下のような流れで徴収されます。

  1. 納付期限が過ぎて3週間程度で督促状が届く
  2. さらに支払いを忘れていると再度督促状が届く
  3. 督促状を放置していると役所から催促の電話が来たり、差し押さえの予告書が届いたりする
  4. それでも払わなければ財産を差し押さえられる

納付期限を過ぎたからといってすぐに差し押さえが実行されるわけではありませんが、延滞金が発生する場合もあります。結果的に自分を苦しめることになるので、期日までに忘れず払いましょう。

どうしてもお金が足りなくて支払いが遅れる場合、該当の役所に事前に相談して支払いを待ってもらったり、分割してもらったりと何らかの対処をするべきです。くれぐれも放置してトラブルに発展しないように注意しましょう。

住民税に減免制度はある?

結論から申し上げると、減免制度は自治体によって定められています。一般的には、災害によって被害を受けた方や、生活保護法に定められた各種扶助を受けている人は減免される場合が多いです。

前年の所得が低く、そこからさらに著しく本年の所得が下がる見込みのある人に対して減免する自治体もあります。「住民税 減免制度 〇〇市(お住いの地域)」で検索すると、各自治体が定める減免制度を調べることができるので、気になる方は調べてみてください。

派遣社員の住民税に関する注意点

派遣社員が住民税を納付するにあたって、以下の3点に注意しましょう。

  • 所得税は給与天引きされる
  • 現在仕事をしていなくても納める必要がある
  • 確定申告しなければならない場合がある

所得税は給与天引きされる

派遣社員が納めなければならない税金は、住民税だけではありません。年収103万円を超えた場合、所得税も納める必要があります。

しかし、所得税は源泉徴収制度によって給与から天引きされています。住民税のように納税通知書が届いて自身で納税しなければならないということはないので、安心してください。

なお、所得税の納税義務者は、年間103万円以上の給与所得がある人です。

現在仕事をしていなくても納める必要がある

住民税は前年の所得に対して課税されるものです。そのため、現在は仕事を辞めて収入がないとしても、住民税が免除されることはありません。

住民税の負担は決して小さくありません。目安としては、前年の年収が300万円で特別な控除がなければ、住民税は年間約12万円前後になります。仕事を辞めて収入源がなくなった場合、計画的に生活しなければ住民税を納める余裕がなくなり、納税できなくなってしまう可能性があるでしょう。

住民税は、1年先に持ち越している税金だということを忘れないでください。

確定申告をしなければならない場合がある

住民税の納税額を決定するためには、確定申告をして前年の給与所得を正確に申告しなければなりません。通常、派遣社員は自身で確定申告する必要はなく、派遣会社が年末調整をして確定申告するケースが一般的です。

しかし、以下の条件に該当する人は自身で確定申告をする必要があります。

  • 年末調整時に派遣会社と雇用関係がない
  • 本業の仕事を除いた収入が20万円を超えている
  • 医療費控除や住宅ローンがある
  • 派遣会社が年末調整を行っていない

派遣を掛け持ちしている場合、登録している派遣会社からそれぞれ源泉徴収票が発行されるので、12月時点で在籍しているメインの派遣会社に年末調整を依頼しましょう。

自身で確定申告が必要な場合、翌年の2月16日~3月15日(土日祝の場合は次の平日)の間に忘れず確定申告をしてください。

派遣社員の確定申告については、こちらの記事で詳しく解説しています。気になる方は、参考にしてください。

派遣社員は確定申告が必要?確定申告が必要なケースや流れを紹介

派遣社員の住民税に関する知識を深めよう

派遣社員の住民税に関する情報を詳しく解説しました。

正社員とは違い、働き方が自由な派遣社員は基本的に普通徴収によって自身で住民税を納める必要があります。特別徴収になる場合もあるので、自身がどちらの納税方法になるか派遣会社の担当者に確認しましょう。

普通徴収の場合、納税通知書が自宅に届くので納付期限までに必ず住民税を納めてください。