これから退職することを会社に伝えようとしている方のなかには、退職を引き止められないか不安に感じている方もいるのではないでしょうか。すでに退職の意を伝えて、引き止められている方もいると思います。
退職を引き止められた場合、上手に断ることができないと退職をなかったことにされたり、トラブルに発展したりする恐れがあるため、上手な断り方を理解しておくべきです。
今回は、退職を引き止められた際に、上手に断って円満に退職するためのポイントを解説します。退職を申し出る際の注意点も紹介しているので、ぜひ最後までご覧ください。
目 次
退職の際に引き止められることはよくある?
そもそも退職を引き止められることは、よくあることなのでしょうか。結論から申し上げると、ほとんどの場合、退職を引き止められると考えておきましょう。
将来を期待していたり、人材が不足していたりと、会社が退職を引き止める理由は様々です。よほど人手に余裕がある会社でもなければ、何らかの理由で「退職を考え直して欲しい」「退職時期を先延ばしにしてほしい」などのように引き止めてくるでしょう。
退職経験がない方は、引き止められることが怖いと感じるかもしれません。しかし、引き止められることはよくあることなので、深く考えすぎず勇気を持って退職することを伝えましょう。
会社が退職を引き止めるためのよくある対応
退職することを会社に伝えた際、以下のような対応をとられることがよくあります。
- 考え直すように説得される
- 退職時期を先延ばしにされる
- 部署異動を提案される
- 待遇改善を提案される
- 損害賠償などで脅される
考え直すように説得される
様々な理由をつけて、退職を考え直すように説得してくるケースはよくあります。考え直すように説得してくる際の上司の心理は、概ね以下のような場合が多いでしょう。
- 将来を期待している
- 人がいなくなることで仕事が回らなくなる
- 後任を任せられる人材がいない
- 退職することがもったいないと思っている
最初はソフトに説得されたとしても、引き止めが難しいと悟れば不安を煽ったり、罪悪感を抱かせるようなことを言われたりするかもしれません。どのような言葉をかけられたとしても、退職を決心しているのであれば動じずに淡々と対応しましょう。
退職時期を先延ばしにされる
退職する際は、退職時期について会社側と相談する必要があります。退職することをすんなり受け入れてもらえたとしても、退職希望日を伝えてもその期日を先延ばしにするように言われることもあるでしょう。
しかし、悪質な企業の場合、退職をすんなり受け入れたように見せても退職させるつもりがなく、退職時期を先延ばしにさせてそのままうやむやにされることもあります。すでに次の転職先が決まっている場合は、ハッキリと退職希望日を伝えましょう。
会社に迷惑をかけないように配慮する必要はありますが、「後任ができるまで」「人手が不足しているから」など、いつ解決されるかわからない課題を理由にされた場合は先延ばしに応じてはいけません。良心に付け込んで退職をなかったことにされる可能性があるので、十分に注意しましょう。
部署異動を提案される
もし、退職を考えている理由が職場の人間関係に悩んでいる場合や、仕事内容が合わないと考えている場合は、部署異動を提案されることがあります。これは退職する理由が解決できる可能性があるため、考慮する余地があるでしょう。
実際に部署異動をすることで環境が改善されて、退職せずに働き続けられたという経験がある方も多くいます。しかし、これは退職を引き止めるための口実ではないかを見極めなければなりません。
通常、部署異動を叶えることは容易ではありません。社内の制度や方針としてジョブチェンジを推進している会社であれば比較的実現しやすいです。しかし、多くの企業ではそのような制度は整っておらず、異動先の人事配置なども考慮しなければならないため、ある程度の期間が必要です。
そのため、部署異動をさせるからと退職を引き止められてもなかなか実現せず、結局うやむやにされてしまう可能性が十分にあります。もし、部署異動を理由に引き止められた場合は明確な期限を設定し、それまでに実現しない場合は退職するといった条件を交わしておきましょう。
待遇改善を提案される
退職を考えている理由が現在の待遇に不満がある場合、昇給や昇格などの待遇改善を提案されて引き止められることがあります。こちらについても退職したい理由が解消される可能性があるため、考慮する余地があるでしょう。
しかし、部署異動と同様にこちらもすぐに解決できる問題ではありません。会社では昇給や昇格のタイミングが定められていますし、周囲の社員と待遇のレベルを合わせなければ様々なところから不満の声が挙がることが懸念されるからです。
周囲から見ても明らかに仕事量に見合わない待遇だと感じるような状態であれば早急に対応してくれるかもしれませんが、そうではない場合すぐに実現することは難しいでしょう。待遇改善も、退職を引き止めるための口実として提案されることがあるので注意が必要です。
なお、退職を盾にして待遇改善を求めるようなこともするべきではありません。例え待遇が改善されたとしても会社や上司との関係が悪化し、その後は会社に居づらくなる可能性があります。
損害賠償などで脅される
最も悪質なケースは、「退職するなら損害賠償を請求する」「辞めるなら後任を探してこい」のように、脅迫めいた言葉で退職をさせないように脅してくることです。突然の強い言葉に動揺してしまい、要求を吞まなければ何かされるのではないかという恐怖心から退職を踏み切れなくなってしまう方も多くいるでしょう。
しかし、実際はこのような脅しに法的な拘束力はないため、要求を呑む必要はありません。法律では、退職を認めなかったり退職時に違約金などの金銭を要求したりすることはできないと定められているため、会社側の発言に違法性があります。
万が一、このような脅迫の被害にあってしまった場合は、労働基準監督署や弁護士に相談しましょう。程度によってはパワハラとして労働者側が会社に損害賠償を請求できるケースもあります。
円満退職のための引き止めの上手な断り方
上記のような引き止めにあってしまった場合、上手に断って円満退職をするためには、以下のポイントを押さえておきましょう。
- 退職する意思は変わらないことを明確に伝える
- ポジティブな転職理由を伝える
- 感謝の気持ちを伝える
退職する意思は変わらないことを明確に伝える
退職を引き止められた際に、あいまいな返答をしていると明確な意思がないと思われてしまい、何とか言いくるめようとしつこく引き止められる可能性があります。情に訴えかけてきたり、罪悪感を抱かせるようなことを言ってきたりされても、ハッキリと退職する意思が変わらないことを伝えましょう。
そうすることで退職する気持ちが変わらないことを相手も悟り、無理な引き止めはされなくなるでしょう。「将来を期待している」と言われたとしても、「そのように言っていただいてありがたいのですが、退職の意思は変わりません」というように毅然と対応しましょう。
しかし、相手に冷たい印象を与えないように慎重に言葉を選びましょう。態度が悪い印象を与えてしまうと、退職までの期間に気まずい状態で過ごさなければならなくなってしまうため、伝え方には注意が必要です。
ポジティブな転職理由を伝える
現在の職場環境や待遇に不満があって退職したいと考えている場合でも、ネガティブな理由で退職することを会社には伝えないようにしましょう。原因を解消するから退職を考え直してほしいとしつこく迫られる可能性があり、退職する理由が解消されてしまうため断りづらくもなります。
現在の会社に不満があって退職をしたいと考えていても、「新しいことにチャレンジしたい」「キャリアアップを叶えたい」のように、ポジティブな理由を伝えましょう。そうすることで誰も嫌な気持ちにならず、新しい環境での挑戦を応援してもらえるでしょう。
感謝の気持ちを伝える
引き止められた際に、「退職する意思は変わりません」とだけ伝えてしまうと、相手に冷たい印象を与えてしまう恐れがあります。また、伝え方次第では相手の感情を刺激して、叱責されたり脅されてしまったりするかもしれません。
相手に冷たい印象を与えず、円満に退職するためにはこれまでお世話になった会社や上司に対して感謝の気持ちも一緒に伝えるようにしましょう。感謝された側からすれば、心理的にこれ以上引き止めることは辞めておこうと感じ、すんなりと受け入れてもらえる可能性が高まります。
どうしてもしつこく退職を引き止められたら?
退職をどうしてもしつこく引き止められ、なかなか承認してくれない場合は、まずは退職を伝えた上司よりさらに上の立場の上司に相談しましょう。退職を伝えた上司が個人的な判断で引き止めている場合、さらに上の上司に相談することですんなり解決する場合があります。
それでも解決しない場合は、会社全体として辞めさせない風土があるものだと判断し、労働基準監督署や弁護士に相談しましょう。外部機関に仲介を依頼し、正当な法律によって会社から労働者を守ってくれるので、退職の手続きを進められるようになるでしょう。
また、近年では退職代行サービスの普及が拡大しており、年々利用者が増加しています。労働基準監督署や弁護士に依頼することが難しい場合、退職代行サービスを通して退職の手続きを進めることができます。しかし、会社によっては就業規則で退職代行サービスの介入を認めないと定めていることもあるので、事前に確認しておきましょう。
退職を申し出る際の注意点
円満でスムーズな退職を叶えるためには、退職を申し出る際にもいくつか注意しなければいけないことがあります。以下の3点に留意して、退職を申し出るようにしましょう。
- 転職先の情報は必要以上に伝えない
- 繁忙期はできるだけ避ける
- 遅くても退職希望日の1ヵ月以上前に伝える
転職先の情報は必要以上に伝えない
転職先が決まってから退職を申し出るという方もいるでしょう。退職を申し出た際に、次の転職先のことを聞かれることも考えられます。しかし、転職することを伝えたとしても転職先の情報を必要以上に伝える必要はありません。
転職先企業の情報が特定されてしまえば、悪い噂を流されたり強く引き止められたりする可能性があります。トラブルを回避するためには、転職先企業のことは伝えない方が賢明です。
繁忙期はできるだけ避ける
スムーズに退職を進めるためには、プランニングが重要になります。会社の繁忙期に退職したいと伝えても、それどころではなくまともに対応してくれない可能性があります。
退職する際は業務を後任者に引き継ぐ必要があり、その後任者の手が空かなければ引き継ぎも進められません。退職することは労働者の権利とはいえ、会社や周囲の事情にも考慮する必要があるので、しっかりと状況を把握してタイミングを見計らいましょう。
遅くても退職希望日の1ヵ月以上前に伝える
法律では、原則として退職の2週間前までに申し出れば問題ないと定められています。しかし、実際は2週間で退職の手続きを進めることは難しく、後任への引き継ぎの時間を確保できないため、退職時期を先伸ばすように説得されるでしょう。
多くの企業では、就業規則で退職を申し出る期限を定めています。そのような場合は、できるだけ会社が定めている期限までに伝えるようにしましょう。期限が定められていない場合でも、マナーとして遅くても退職希望日の1ヵ月前までに伝えると良いです。
会社の事情に考慮して円満退職を叶えよう
退職をスムーズに進め、円満退職を叶えるためには一方的な要求を突きつけるのではなく、会社側への事情にも配慮して手続きを進めましょう。退職を引き止められた際は、これまでお世話になった感謝を伝えつつも、「新しい環境で頑張りたい」という意思をハッキリと伝えると良いです。
お互い納得して円満に退職することで、その後の転職を気持ちよくスタートさせることに繋がります。