労働者が失業状態になった場合には、離職票をもらって手当を受給するための申請が行えます。しかし、「派遣社員は離職票をもらえないかも……」と不安に感じている人もいることでしょう。

そこで今回は、派遣スタッフも離職票がもらえるのか、という疑問にお答えするとともに、離職票がもらえる条件、必要ないケースについて解説しています。また、失業手当を受給する手順も紹介しているので、退職後の参考にチェックしてください。

離職票とは

離職票は、離職した(仕事を辞めた)ことを証明する書類です。正式には「雇用保険被保険者離職票」といい、ハローワークで失業給付の申請をするときに必要になります。

離職票には、次の項目が記載されます。

  • 退職日
  • 雇用期間
  • 給与額
  • 退職理由 など

退職理由は「会社都合」か「自己都合」かによって区分され、給付の開始日や期間が決められます。たとえば、会社都合の退職の場合、自己都合よりも早く給付が開始され、給付期間も長くなることが一般的です。

派遣社員スタッフが離職票をもらえる条件

派遣スタッフでも離職票はもらえますが、すべての人が対象になるわけではありません。退職時に困らないよう、条件を確認しておきましょう。

雇用保険に加入している

派遣スタッフが離職票を受け取るためには、雇用保険に加入していることが条件です。雇用保険は、派遣社員が次の基準を満たすことで加入できます。

  • 週20時間以上の労働をしている
  • 31日以上の雇用見込みがある

自分が雇用保険に加入しているかどうかわからない場合は、給料明細に記載されているので確認してみましょう。派遣社員は、派遣会社と雇用契約を結んでいるため、離職票は派遣会社から受け取ることになります。

退職後に失業手当を受給する

退職後に失業手当の受給を希望する場合は、必ず離職票をもらってください。離職票は失業手当の申請に必須の書類です。

離職票を持ってハローワークに行き、失業認定を受けることで、失業手当の支給が開始されます。ただし、あなたが失業手当を受給するかどうかは派遣会社にはわからないため、依頼がなければ発行しないケースも少なくありません

失業手当の受給を希望しない場合は、離職票の発行を求める必要はありませんが、受給する際には必ず発行を依頼しましょう。

離職票が必要ない人は?

失業しても、すぐに働く予定がなかったり、次の仕事が決まっていたりする場合には、離職票は必要ありません。ただし、状況が変われば必要になることもあるため、自分の予定をしっかり確認しておくことが大切です。

すぐに働く予定がない

すぐに働く予定がない場合、離職票は必ずしも必要ありません。離職票は主に失業手当を申請するための書類であり、退職後にハローワークで手続きを行う際に提出します。

したがって、再就職の意思がない、もしくは一定期間働かない予定の方は、失業手当の受給対象外になるため、離職票は不要です。

ただし、のちのち受給を考えている場合は、退職のタイミングで発行を依頼しましょう。離職票は再発行に手間がかかるため、今すぐ使わなくても手元に保管しておくと安心です。

次の仕事が決まっている

次の仕事が決まっている場合も、離職票は不要です。離職票はハローワークに提出する書類であるため、すぐ再就職のする場合には使い道がありません。

とくに、転職先での勤務開始日が明確に決まっている場合は、失業状態とはみなされず、失業手当の申請対象外となります。

また、転職に必要な書類に離職票が含まれるケースもほぼありません。離職票は失業保険申請以外の用途がないため、再就職が確定している場合は不要です。

失業保険とは

そもそも失業保険とは、雇用を失った場合に、国から一定期間支給される生活保障のための給付金のことです。「雇用保険の失業給付」という正式名称のとおり、失業者が次の仕事を見つけるまでの生活を支えるために設けられた制度です。

退職前に一定の期間雇用保険に加入し、退職後に「求職活動を行っていること」が受給の条件になります。失業保険はハローワークへの申請が必要で、定期的な求職活動の報告や認定も必要になるため、再就職支援の意味も含まれています。

失業手当の受給手順

失業保険を受給する場合は、次の手順で手続きを進めましょう。

  • 派遣会社への依頼
  • ハローワークでの手続き
  • 受給者説明会への参加
  • 失業認定後に受給開始

以下、それぞれ詳しく解説していきます。

派遣会社への依頼

失業手当の受給手続きを始めるには、まず派遣会社に離職票の発行を依頼します。

離職票は、派遣会社が手続きを行ってから発行されます。通常、退職後数日から1週間ほどで発行されるため、退職時に依頼しておくとスムーズに受け取れるでしょう。

また、派遣会社の中には、依頼がなければ離職票を発行しない方針の会社もあるため、待っているだけではもらえないケースが多いです。失業手当を受給したい場合は、必ず担当者に依頼して発行してもらってください。

ハローワークでの手続き

離職票を受け取ったら、住所管轄のハローワークで失業手当の手続きを行います。手続きには、以下の書類が必要です。

  • 雇用保険被保険者離職票
  • マイナンバーカード
  • 身元確認書類(運転免許証、パスポートなど)
  • 証明写真
  • 本人名義の通帳

マイナンバーカードがない場合は、通知カードか個人番号が記載された住民票が必要になります。

受給者説明会への参加

ハローワークでの手続き後、受給資格があると判断されたら「受給者説明会」の日程が知らされます。この説明会は、失業手当の受給に関する注意点やルール、求職活動に関する情報を学ぶ場で、受給者が制度を理解するために行われます。

説明会への参加は、失業保険を受給するための必須条件です。そのため、参加しなければ給付金を受け取ることはできません。また、説明会では再就職に役立つ情報や支援制度についても案内されるため、しっかりと確認しておくとよいでしょう。

失業認定後に受給開始

受給者説明会では次の書類が渡されるため、これらを持参してハローワークに行き、認定を受けましょう。

  • 失業認定申告書
  • 雇用保険受給資格者証

受給資格決定日から7日の待機期間を経て、給付制限がない場合には、待機満了日の翌日から給付が開始されます。自己都合での離職など、理由によっては給付制限があり、7日間の待機期間のほか、2または3か月の制限期間ののちに給付が始まります。

失業保険を継続的に受け取るためには、定期的に失業認定を受け、定められた回数の求職活動を行わなければなりません

失業保険受給の注意点

失業保険を受給するときには、ルールを守らなければ受給資格が取り消されることがあります。場合によっては給付金を返還する事態になりかねないため、注意点を確認しておきましょう。

アルバイトは慎重に

失業保険の受給中にアルバイトをする場合は、慎重に行いましょう。

失業保険は、失業状態で再就職を目指している人に支給される給付金です。そのため、アルバイトの勤務時間や収入が多ければ、失業状態とみなされない可能性があります

雇用保険加入の対象になる、週20時間以上の勤務や、31日以上の雇用見込みがある場合は就職と判断されかねません。事前にハローワークに相談し、どの程度の勤務であれば可能か確認しておくと安心です。

また、待機期間中は一切アルバイトできない点にも注意が必要です。待機7日の間に働いてしまうと、待機期間が延長されます。

不正受給しない

失業保険の不正受給は厳しく罰せられるため、正しい手続きを行うことが重要です。次のような不正が発覚すると受給資格が取り消され、過去に受け取った金額の返還や追加の罰金が課せられます

  • 求職活動をしていないのにしていると偽る
  • アルバイト収入を報告せずに受給する
  • 自営や請負などで事業を始めているのに申告しない

不正受給は、報告漏れや手続きの誤りでも発生しかねません。受給中は、ハローワークに必要事項をしっかり報告し、疑問があれば事前に確認するようにしましょう。

不正受給は今後の再就職にも影響を及ぼすため、慎重に対応してください。

派遣の離職票は派遣会社に依頼しよう

派遣社員が失業状態になる場合は、派遣会社に依頼して離職票を発行してもらいましょう。離職票は、失業手当を受給する際に必要になる書類です。

ただし、雇用保険に加入していないと対象にならないほか、次の仕事が決まっている場合なども対象外です。自分の状況をよく確認し、必要に応じて離職票を受け取りましょう。