現代社会に生きる人たちは、常にストレスにさらされています。とくに派遣社員は、雇用形態の特徴から、正社員とは違う問題に悩まされることもあるでしょう。
ストレスを放置しておくと心身に悪影響を及ぼしますが、どれだけのストレスを感じているかは自分で判断しにくいものです。そこで今回は、派遣社員が活用したいストレスチェック制度の概要と、精神的に辛いときの対処法を解説していきます。
ストレスが溜まっているときの注意点もまとめているので、ぜひ最後までご覧ください。
目 次
派遣社員の主なストレス要因

派遣者がストレスを感じる要因としては、主に以下の3つが挙げられます。
派遣先の人間関係
派遣社員として働いている人が、派遣先での人間関係に悩むケースは少なくありません。職場に溶け込むのが難しい、社員との間に壁を感じるといったことがあれば、ストレスを感じやすくなるでしょう。
外部の人として扱われてミーティングに参加させてもらえなかったり、仕事の相談をしにくい雰囲気があったりすれば、孤独や疎外感にもつながります。さらに、派遣社員というだけで能力を低く見られるなど、不公平感がストレスの原因になることもあります。
人間関係のストレスは業務パフォーマンスやメンタルに影響を及ぼし、就業の継続を妨げる要因になりかねません。
待遇への不満
時給や福利厚生、評価制度などの待遇面に不満を感じることも、派遣社員の大きなストレス要因です。同じ職場で似たような業務をしている正社員との間に待遇差があると、なぜ派遣は評価されないのかと不公平感を抱きやすくなります。
スキルや経験があるにもかかわらず単純作業ばかり任されることで、能力が活かせていないことへの不満を感じる人もいるでしょう。このような状況が続くと、モチベーションが低下し、仕事そのものへのやりがいを見失いがちになります。
更新への不安
派遣契約は基本的に有期契約で、数ヶ月ごとの更新が一般的です。そのため、派遣社員は「継続されないかもしれない」といった不安を少なからず抱えながら働くことになります。
いくら真面目に働いていても、会社の都合や予算の関係で契約が終了してしまうケースもあるため、人によっては無力感を覚えることもあるでしょう。このような先の見えにくさは、自身のメンタルヘルスに影響を及ぼす可能性があります。
自分のストレスはわかりにくい

ストレスは目に見えないものであるため、自分自身ではその存在に気づきにくいことがあります。とくに、日常に忙殺されていたり、真面目で責任感が強かったりする人ほど我慢を重ねてしまい、自分の限界に気づかず過ごしがちです。
ストレスはじわじわと心や身体に影響を及ぼすため、「疲れやすい」「集中力が続かない」といった些細な変化と結び付けにくく、悪化させてしまうことも少なくありません。自覚が遅れれば、体調不良やうつ病のきっかけにもなるため、心身の変化を軽視せず、自分の様子をチェックする習慣が大切です。
派遣社員も対象!ストレスチェックを活用

どの程度ストレスを感じているかは、なかなか自分で判断しにくいため、企業が実施するストレスチェックなどを活用するとよいでしょう。
ストレスチェックとは
ストレスチェックとは、労働者のストレス状態を把握するために実施される調査です。法令により、常時50人以上の労働者を雇用する事業場では、年1回の実施が義務づけられています。(令和7年8月現在)
調査は、主に次のような調査票の質問に答えていく形式で、医師や保健師などの専門家が監修しています。
- 職場の人間関係
- 業務量
- 仕事のやりがい
- 心身の不調の有無 など
結果は個人に通知されるため、自分のストレスレベルを客観的に把握することが可能です。集団分析の結果は、企業が職場環境の改善に活用できますが、本人の同意がなければ個人の結果が会社に共有されることはありません。
派遣社員は基本的に派遣元が実施
派遣社員もストレスチェックの対象に含まれますが、その実施主体は派遣先ではなく、派遣元である点に注意が必要です。これは、派遣労働者の健康管理に責任を持つのは、雇用主である派遣元と定められているのが理由です。
つまり、たとえ派遣社員が大企業で働いていたとしても、ストレスチェックの実施やその結果に対する対応は、登録している派遣会社が行うことになります。ただし、派遣先の集団分析に参加する場合もあるので、派遣先・派遣元双方でチェックを受ける人もいます。
結果を自分の体調管理に活用
ストレスチェックの結果は、単なる数値の確認にとどまらず、体調やメンタルの状態を見直す貴重な手がかりになります。見逃しがちな心身の変化を客観的に把握できるので、働き方や生活リズムに目を向けるきっかけにもなるでしょう。
派遣社員は、定期的に職場が変わる場合が多く、環境ストレスにさらされやすいため、こうしたチェックの機会をメンタルヘルスの維持に役立てるのがおすすめです。
【派遣】精神的に辛いときの対処法

ストレスが溜まって精神的に辛くなってしまったときは、次のような対処法が有効です。
プライベートを充実させる
仕事が精神的に辛いと感じたときは、プライベートの時間を大切にし、気分転換を図るのが有効です。派遣社員は、正社員に比べて残業が少ない傾向があるため、意識的に趣味やリラックスできる時間を確保しやすい環境にあります。
自分の好きなことに没頭したり、友人や家族との交流を深めたりして、心のバランスを整えましょう。仕事がすべてになってしまうと精神的に追い詰められやすいため、仕事とプライベートを切り分ける意識を持つことが大切です。
スキルアップに取り組む
今の職場で不安やストレスを感じているときは、自分の将来のためにスキルアップに目を向けてみるのもおすすめです。現状から抜け出すための手段として、資格取得や新しい分野の学習に取り組めば、前向きな気持ちを取り戻すきっかけになります。
業務に関連する資格を取得すれば、それを武器に違う職場を紹介してもらうことも可能です。目の前の悩みに振り回されているときこそ、未来を見据えた行動によって、気持ちの切り替えをしてみましょう。
派遣会社に相談する
ストレスで辛いと感じたときは、ひとりで抱え込まずに派遣会社へ相談しましょう。仕事内容や人間関係の悩み、勤務条件の不満など、具体的な問題点を話すことで、状況改善に向けたアドバイスを受けられる場合があります。
派遣会社によってはメンタルヘルスに関する相談窓口やカウンセラーを置いているところもあるので、それらを活用するのもよいでしょう。今の職場が合っていないと感じる場合には、更新せずに別の案件を紹介してもらうことも可能です。
ストレスが溜まっているときの注意点

ストレスを抱えているときは、感情に任せた行動に出やすくなるため、注意が必要です。
たとえば無断欠勤は、派遣先だけでなく派遣元にも大きな迷惑をかけ、信頼を損なう原因になります。体調不良や精神的に辛い場合でも、必ず連絡を入れてから休むようにしましょう。
派遣先に直接不満や要求を伝えるような行為も、トラブルのもとになるため避けてください。派遣社員は派遣元と雇用契約を結んでおり、待遇や環境に関する相談・交渉は派遣元を通して行うのがルールです。
感情的な態度や言動が職場で出てしまうと、人間関係の悪化、契約更新への悪影響も考えられます。ストレスを感じたときこそ冷静に対処し、信頼関係を崩さない対応を意識することが大切です。
派遣社員はストレスの把握と管理が大切
派遣社員は一定の期間で職場が変わることが多いため、人間関係や更新についてのストレスを感じがちです。しかし、ストレスがどのくらい溜まっているかは目視できないため、気づかずに心が疲れ切ってしまうケースも少なくありません。
そうした事態を避けるためには、企業が実施しているストレスチェックをうまく活用するのがおすすめです。調査によって自分のストレス度が可視化されるので、自身の生活や職場環境を見直すきっかけになります。