派遣社員として働くにあたって、どのくらい稼げるのか、派遣社員と正社員にはどれだけ給与に差があるのかが気になる人は多いのではないでしょうか。また、同じ職場に派遣されるのに派遣元によって時給や給料日が違うのはどうしてなのかといった疑問もあるかもしれません。

この記事では、これらの疑問に答えるとともに、派遣社員の平均年収、給与の仕組みについて解説しています。派遣社員の年収をアップさせるポイントもまとめているので、あわせてご覧ください。

派遣社員の年収はどのくらい?


派遣社員として働く際に、まず気になるのはやはり給与面です。派遣社員の平均年収はいくらなのか、正社員と比べてどの程度の差があるのかなどを確認しておきましょう。

派遣社員の平均賃金

株式会社リクルートの調査によると、三大都市圏における派遣労働者の平均時給(2023年2月時点)は1,611円です。この時給で1日8時間、20日働くとすると月給はおよそ26万円で、年収は約309万円になります。

派遣社員の平均賃金は、地域や職種によって大きく異なり、次のように地域差だけ見ても違いがあることがわかります。

  • 関東:1,705 円
  • 東海:1,429 円
  • 関西:1,443 円

都市圏のほうが地方に比べて給与額が高いことから、人口の多いエリアではより時給が高くなるといえるでしょう。

参考:2023年2月度派遣スタッフ募集時平均時給調査|株式会社リクルート

【派遣社員】給与が高い職種

厚生労働省の調査によると、派遣社員の給与は、医療や法務、ITなどの専門性の高い職種で高く設定されていることがわかります。

とくにIT、技術系の職種は、その需要に伴って給与が増加しています。また、製造や運送業でも時給が増加していることから、人手不足による需要の高まりが見て取れるでしょう。またオフィスワーク系や営業職など、同じ職種でも業界や派遣社員のスキルによって給与が大きく変わります

参考:令和3年度労働者派遣事業報告書の集計結果(速報)|厚生労働省

労働市場・派遣市場の概要|一般社団法人日本人材派遣協会

正社員と派遣社員の給与差

正社員と派遣社員の給与は、月給で比較しても大きな差はありません。しかし、正社員には賞与や役職手当などがつくため、年収にすると400〜500万円程度になり、前述の派遣社員の平均年収より100〜200万円ほど高くなります。

また、派遣社員は残業や休日出勤を命じられることも少ないため、基本給以外の収入を得にくいのが特徴です。しかし、派遣会社によってはボーナス制度などを設けているケースもあり、利用する派遣会社によっては正社員に近い年収になることも可能です。

参考:令和3年分民間給与実態統計調査令和3年賃金構造基本統計調査|国税庁

派遣社員の給与の仕組み


派遣社員の給与は派遣会社から支払われるため、派遣先の従業員とは内訳や給料日が異なります。ここでは、派遣社員の給与に関する仕組みや疑問を解説していきます。

給与の内訳

派遣社員の給与は基本的に時給制で、働いた時間に応じて支払われます。給与には基本給に加えて、時間外労働手当や資格手当、交通費などが含まれるのが一般的です。

残業などの手当は、労働基準法により正社員と同様の割増賃金が適用されるため、働いた時間や条件によって変動します。

ここから各種保険料や税金が引かれて手取り給与となりますが、派遣会社によっては住民税を天引きしないといったケースもあるので、しっかり明細を確認しておきましょう。

派遣社員の時給が高い理由

派遣社員の時給が高く設定されているのには、次のような理由が挙げられます。

  • 採用コストがかからない
  • 人材の育成コストが低い
  • 賞与分が上乗せされていることがある

企業が従業員を雇用する際には採用や育成にコストがかかりますが、派遣社員を活用すれば、これらのコストを削減することができます。

また、中には賞与分や交通費などが上乗せされているケースもあり、正社員であれば別に支給されるものがすでに加算されているのが主な高時給の理由です。

同じ職場でも時給が違うのはなぜ?

同じ職場でも、派遣社員によって時給が異なるケースは珍しくありません。これは派遣社員のスキルや経歴によるところも大きいですが、派遣会社と派遣先企業の関係も影響しています

給与は派遣会社が決定しますが、その背景には派遣会社と派遣先企業との契約内容が影響します。派遣先企業から派遣会社に支払われる派遣料金を基に、派遣社員の給与が決まってくるという仕組みです。また、一般的に派遣会社のスタッフが時給交渉を行うため、営業担当者の交渉スキルによっても時給に差が出ます。

派遣社員の給料日

派遣社員の給与は派遣会社から支払われるため、派遣先の従業員とは別の日になることが少なくありません。月末締めの翌月払いが一般的ですが、給料日は15日、25日、月末など、派遣会社によってさまざまです。

給料日が土日祝にかかる場合は、基本的に休業日の前日振込みになりますが、中には対応していない派遣会社もあるため、事前に確認しておきましょう。

派遣社員が年収をアップさせる方法


派遣社員は、正社員に比べて平均年収が低くなる傾向がありますが、場合によっては変わらない収入を得ることも可能です。ここでは、派遣社員が年収をアップさせる方法について解説します。

専門性の高いスキルを身につける

前述のとおり、専門性の高いスキルを持っている派遣社員は時給が高く設定されています。下表のように、業種に合わせて専門的なスキルを身につけることで、収入アップが狙えます。

スキル 具体例
IT関連 プログラミング言語、Web開発、データベース管理、クラウドコンピューティング、ネットワークエンジニアリングなど
翻訳・通訳 ビジネスレベルで対応できる語学力、医療や法律、金融分野の専門用語に対応できる翻訳・通訳スキル
医療・介護関連 看護師、介護士、薬剤師、臨床検査技師といった資格のほか医療事務や調剤事務の専門知識
経理・財務 簿記資格や会計ソフトの操作経験、決算業務や国際会計の知識など

効果的なタイミングで交渉する

派遣社員の時給交渉は、まず派遣会社の担当者に申し出ますが、やみくもに交渉してもうまくいきません。最適なタイミングを見計らって交渉することが大切です。

たとえば、資格を取得したときや、ハイレベルな仕事を依頼されたときなどがチャンスになるでしょう。ただし、普段の勤務態度が悪ければ、どのようなタイミングであっても交渉が成功する確率は低いです。

素行に問題がなく、派遣会社と派遣先企業から信頼されていることも、時給交渉では重要なポイントになります。

無期雇用派遣を目指す

有期雇用の派遣契約の場合、派遣期間が終了すれば次の仕事に就くまで収入が途切れます。一方で、無期雇用契約の派遣社員は派遣会社に雇用されるため、仕事がない期間も給料が支払われます

そのため収入が安定しやすくなり、結果として年収アップにつながるでしょう。有期雇用の派遣社員が無期雇用になるためには、以下の選択肢が考えられます。

  • 5年ルールで無期転換する
  • 常用型派遣で雇用される

無期雇用契約は、派遣特有の自由度は下がりますが、そのぶん収入の安定が見込めます。

高時給の仕事を探す

派遣社員の時給は、登録する派遣会社によっても異なるため、複数の派遣会社に登録して案件を比較することが大切です。

また、求人が増える時期は、企業が人手不足になっていることが多く、いつもより高い時給を設定していることがあります。そのため、求人が増えやすい年明けや大型連休明けなどを狙って仕事を探すのもよいでしょう。

派遣社員でも年収アップは可能

派遣社員の月収は、正社員と比べて大きな差はありません。しかし、平均年収で見ると、賞与や各種手当がつく正社員のほうが100~200万円ほど高くなります。

派遣社員が年収を上げるためには、専門性の高いスキルを身につけるほか、効果的なタイミングで派遣会社に交渉することが大切ですまた、複数の派遣会社に登録して仕事を探せば、高時給の仕事が見つかる可能性が高くなるでしょう。