派遣社員として働いている方、もしくは検討をされている方の中には「病気や怪我をした場合、派遣社員だと休職できないかも…」「休職中は給料の支払いがストップしてしまうのでは」と不安に思うこともあるでしょう。

休職制度とは、従業員が心身の健康や何らかの事情があり働けなくなったときに労働契約を結んだまま、長期の休暇を取得できる制度を指します。実はこの休職制度は、労働基準法やその他の法令で定められた制度ではなく、取得する条件や内容は会社ごとに異なります。そのため、利用するためには少し注意が必要です。

今回のコラムでは派遣社員の休職について解説していきます。不安を解決して心身ともに健康に働けるよう、ぜひ参考にしてください。

派遣社員でも休職できる可能性がある

派遣社員は、派遣元の企業(派遣会社)と労働契約を結んでいるため、派遣先企業の休職制度は使用できないことは覚えておきましょう。つまり、派遣先企業に休職制度があっても、派遣会社に休職制度がなければ使用できません。

雇用主である派遣会社に休職制度が用意されていれば、使用できる可能性がありますが、派遣会社ごとに規定は異なっており、誰でも使用できるとは限りません。

また、派遣会社のみの判断で休職を決定することは実際には難しく、派遣先企業との調整も必要です。休職を検討し始めたら、まずは派遣会社へ相談してください。

これは、うつ病などのメンタルヘルスの不調に関しても同様です。心身ともに体調の変化を感じたら、営業担当者や人事へ早めに連絡しましょう。

有給休暇を活用するのが一般的

「派遣会社に休職制度がない」「数カ月ではなく数週間程度休む予定」このような場合は、有給休暇を使用するのが基本。

派遣社員でも以下の条件を満たしていれば、年次有給休暇を取得することが可能です。

  • 同じ派遣会社に6カ月以上継続して勤務する
  • 労働日の8割以上出勤する

取得可能な日数は、労働時間や勤務年数によって異なり、勤務年数が長いほど有給休暇の日数が増えていきます。

関連記事:派遣社員の有給日数はどれぐらい?派遣の有給事情を解説!

派遣社員が知っておきたい補償制度

多くの企業では、休職期間中は給料の支払いをストップすることの方が一般的です。こんな時に活用できる補償制度についても、知識をつけておきましょう。

  • 休業補償
  • 休業手当
  • 傷病手当金

休業補償

業務上または通勤中の怪我や病気など、労働災害により働けなくなった際に、賃金が補償される制度です。労働基準法で企業側に義務付けられており、休業1日あたり60%ほど補償されます。

休業補償、休業補償給付の対象となるのは以下の条件を満たす必要があります。

  • 業務災害(労働災害・通勤災害)にあい、療養している
  • 上記療養のため、労働が困難である
  • 休業中で会社から賃金が支給されていない
  • 災害発生から三日間の待機期間が過ぎている

注意しなければいけないのが、給付を受けるためには、働けない状態であることが条件です。配置換えで軽作業を行っている、残業の少ない部署の勤務になったなど、労働できる場合、給付はされません。

休業手当

経営不振や資材不足など、会社の都合によってやむを得ず長期休業となってしまった場合、企業側は労働者に平均賃金の60%以上の手当を支払う義務があります。

ただし、台風や地震などの自然災害などでの休業の場合、手当は支給されません。必ずしも手当が支給されるわけではないことを理解しておきましょう。

傷病手当

業務外の怪我や病気によって働けなくなった際に、生活を支援するために支払われるのが傷病手当です。社会保険加入者であること以外にも、以下の条件を満たさなければいけません。

  • 業務外の病気や怪我の療養であること
  • 仕事に従事できないこと
  • 連続する3日間を含み4日以上就労できなかったこと
  • 休業期間に給与の支払いがないこと

傷病手当は、支給を開始した日から通算して1年6ヵ月まで保障されます。

休職を申請する流れ

以下の流れで、休職まで手続きが進行していきます。

  • 派遣元に相談する
  • 医師の診断を受け診断書を受け取る
  • 診断書の提出する
  • 所定の手続きを行う

派遣元に相談する

休職制度は、労働基準法や条例などに基づくものではなく、会社独自の制度です。そのため、会社によって申請方法や期間、条件などもさまざま。

まずは就業規則や労務担当者に申請方法を確認してみましょう。

医師の診断を受け診断書を受け取る

一般的に病気や怪我を理由として休職する場合、診断書の提出を求められることが多いです。

まずは、該当する専門医を受診し、診断書(病気休職診断書)を発行してもらいます。病院によって異なりますが、費用は数千円~1万円程度、即日~2週間ほどかかるのが一般的です。初診のケースは診断書発行までにもっと時間を要することもあるので、体調不良を感じたら早めに受診しておくといいでしょう。

注意したいのが、多くの場合休職は自己都合と判断されるため、この費用は自身で払わなければなりません。

診断書の提出する

既定の部署へ診断書と申請書を提出すると、多くの場合、担当スタッフや人事との面談が行われます。

  • 精神的な理由の場合、派遣先企業を変更すれば問題ないのか
  • 怪我の場合、復職の際に業務内容に注意する必要があるか
  • 復職する予定、意思があるか

メンタルの不調や怪我により、業務が困難になる場合など、今後の働き方も含めて相談をします。面談の中で「明確に働くことへの意欲がない」「業務を続けることが困難」などと判断された場合は、休職が認められない可能性もあることは覚えておきましょう。

所定の手続きを行う

面談により、休職の可否、期間などが決定したら、所定の手続きを行います。傷病手当などの手続きが必要であれば、一緒に準備しましょう。

休職する前に知っておきたい注意点

お話してきた通り、派遣社員でも派遣会社に休職制度があれば利用することは可能で、ある程度の収入補償もあります。しかし、休職する前に注意しておきたいことが4点あります。

  • 休職している期間は収入は減額する
  • 早めに申し出るように心がける
  • 同じ派遣先企業には戻れない可能性が高い
  • 病気や怪我が理由で解雇される可能性がある

休職している期間は収入は減額する

休業補償や休業手当、傷病手当などさまざまな制度がありますが、給与の満額ではなく60%~80%程度の金額しか補償されません。

同水準の暮らしをしていたら生活を圧迫するのは当然。休んでいる間の生活をどうするのかもしっかり考えておきましょう。

早めに申し出るように心がける

派遣元の派遣会社に休職制度があっても、すぐに休職できるとは限りません。

多くの場合、派遣先企業は人員補充のために派遣社員を採用しています。長期の休みを取得するとなれば、その分の労働力が欠けてしまいます。

派遣会社と派遣先企業で「いつから休業するのか」「休職中の人員はどうするのか」など、調節が必要です。できる限り早めに申し出たり、体調不良であれば早めに相談したりするようにしましょう。

同じ派遣先企業には戻れない可能性が高い

派遣会社で休職制度があっても、派遣先企業は退職することになるでしょう。前述した通り、長期休職すると別人材を派遣してほしいと依頼されることがほとんど。

もちろん、「また戻ってきてほしい」と言われる可能性はゼロではありませんが、実際は難しいことは覚えておいてください。そのため、休職明けは新しい派遣先企業での勤務が始まります。またゼロから人間関係を築いたり、業務を覚え直しになったりと、心身ともに負荷がかかる可能性が少なからずあります。

病気や怪我が理由で解雇される可能性がある

業務外での病気や怪我の場合、派遣会社の就業規則によっては解雇、退職扱いになる可能性があることも忘れてはいけません。

休職期間の満了時に復職できなければ、自然退職となる定めのある場合もあります。

解雇(会社都合)となるか退職(自己都合)となるかで、失業保険の支払いタイミングや退職金の基準額が異なる場合があります。トラブルを避けるためにも、休職前に万が一復帰できなかった場合の対応も質問しておくと安心です。

派遣社員でも休職は可能!制度の確認を

前述した通り派遣会社に制度があれば、派遣社員でも休職できる可能性があります。ただし、派遣元との関係性などを考えると、有給休暇で取得するのが一般的なのも事実。健康上の不安がある場合は、派遣会社の制度や条件もあらかじめ確認しておくと良いでしょう。

万が一休職する場合は、療養が終わったら仕事に復帰できるように、復帰後の労働環境についてもしっかり話し合いを行ってください。どれだけ気を付けていても、病気や怪我、休業のリスクは避けることができません。制度を正しく知り、不安な思いを軽減しながら安心して働きましょう。