自動車や家電、電子部品などを製造する工場において、決められた期間だけ労働契約を結び勤務する期間工。比較的時給が高い、まとまった手当が支給されることが多いといったメリットがある一方で、配属先を自分で選択することはできないという側面もあります。

働くのがつらいと感じるような、いわゆる「ハズレ工程」に当たってしまうケースも少なくありません。

今回のコラムでは、期間工において「ハズレ工程」と呼ばれる工程の特徴について詳しく解説していきます。ハズレ工程への対処法やハズレ工程を避ける方法も紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。

期間工の配属先は選べない

工場が期間工を募集する目的は、欠員が発生した部署の人員補充や、生産量を増やしたいタイミングでの大量採用など様々です。そのため、期間工として採用されると人材が不足している特定の部署に配属されたり、配属先がランダムに決定されたりすることがほとんど。

配属先の希望を出せる職場もありますが、自身が希望した配属先で勤務できる可能性はかなり低いです。

配属先が決定したら、基本的には契約期間が満了するまで同じ部署で働き続けなければなりません。そのため、期間工は配属先によって働きやすさが大きく変わる傾向にあります。期間工が「配属先によって運命が決まる」「工程ガチャ」などと言われるのはこのためです。

では、具体的にどのような工程が「ハズレ工程」だと言われるのでしょうか。

期間工のハズレ工程の特徴とは

「ハズレ工程」と言われる工程の特徴として、以下の3点が挙げられます。

  • 作業が難しすぎる
  • 体力的な負担が大きすぎる
  • 職場の人間関係が良くない

作業が難しすぎる

工場では1つ1つの工程が繋がって初めて製品が完成します。どの工程も製造ラインに欠かせない重要なものばかりですが、業務の難易度はそれぞれ異なります。

中には、作業量が多すぎる、作業量に対して作業時間が短すぎるなど、慣れていないと到底こなせないような難しい工程もあります。

例えば、自動車工場で部品を組み立てる工程の場合、限られた時間で多くの部品を正確に組み立てる必要があります。自身の作業が時間内に終わらないと後の工程が全てストップしてしまい、部品をつけ忘れてしまうと一度分解して組み立て直さなければなりません。

作業の遅れやミスを頻発してしまうと同僚から白い目で見られたり、上司に叱責されたりすることもあります。

このように、比較的難易度の高い工程に配属されると作業についていけず、工場内のラインを停止させてしまう、生産を滞らせてしまうというプレッシャーを感じてしまうでしょう。

生産が間に合わなければ同僚に残業させてしまうケースもあり、精神的なつらさからハズレ工程と呼ばれることが多いです。

体力的な負担が大きすぎる

工場の仕事は単純作業の繰り返しであることが多いです。1日中同じ動きを繰り返していると、身体の特定の部位に負荷が蓄積されていきます。

重い荷物を移動させる、しゃがむといった動作を繰り返していると、肩や腰、膝といった部位の筋肉痛や慢性的な痛みを発症してしまうことも。

特に、家具や自動車本体を組み立てる工程のように重くて大きな部品を繰り返し運ぶ工程に配属されると、膝や腰だけでなく全身の筋肉を酷使しなければなりません。身体的な負荷が大きい工程も、ハズレ工程と言われる傾向にあります。

職場の人間関係が良くない

業務内容に関わらず、人間関係が悪く円滑にコミュニケーションを取ることが難しい部署も、ハズレ工程だと感じてしまう方が多いです。

営業職や接客業といった他の職種に比べれば高い対人スキルは求められない工場勤務ですが、コミュニケーションを全く取らなくても良いというわけではありません。

  • わからないことを質問する
  • ミスをしてしまったことを報告する
  • 他部署と連携する
  • 同僚に指示をする
  • 作業の進捗を共有する

生産の遅れや災害を防ぐため、上記のような最低限のコミュニケーションは必須です。

悪口が飛び交っている、機嫌の浮き沈みが激しい上司がいるなど、コミュニケーションを取ることにストレスを感じるような環境では、働きづらさを感じてしまうでしょう。

期間工のハズレ工程に配属された時の対処法

やむなくハズレ工程に配属されてしまった際には、以下のように対処するのがおすすめです。

  • まずは頑張ってみる
  • 作業の改善を訴える
  • 配属を変えてもらう
  • 退職する

まずは頑張ってみる

大前提として、工場での勤務は体力的な負担が大きいです。配属されたばかりの頃は、初めて行う作業に苦戦を強いられ、毎日ドッと疲れてしまうでしょう。作業に慣れていないうちは、多少の大変さを感じることは避けられません。

心と身体の健康を保てる範囲で、慣れるまでは頑張ってみることをおすすめします。2週間から1ヶ月程度働いてみて、それでも耐えられないほどのつらさが続くのであれば、何らかの策を講じる必要があると判断して良いでしょう。

作業の改善を訴える

業務の進め方をある程度掴んだ上で、それでも働きづらいと感じる場合は、業務内容を改善してもらえるよう上司に訴えるのも対処の1つです。とはいえ、具体的な根拠もなく不満を述べるだけでは、ただ文句を言っているだけのような誤解を与えてしまいかねません。

  • 具体的に伝える(例:部品Cと部品Dを組み立てる工程は1人で行うには複雑すぎる)
  • 数字を使って伝える(例:A工程1回あたり5秒のタイムロスが発生している)
  • 代案を挙げる(例:A工程とB工程の順序を入れ替えてみてはどうか)
  • 安全性に言及する(例:B工程は腰への負担が大きく痛めてしまう可能性がある)

上記のようなポイントを押さえて伝えることで担当者に納得してもらい、改善へと動いてもらえる可能性が高くなります。

配属を変えてもらう

期間工は契約期間中は同じ配属先で従事しなければならないとお伝えしましたが、配属の変更を希望することも不可能ではありません。しかし、代わりの人材が見つかる可能性は低いため、期間工の異動希望が受け入れられるケースはほとんどないです。

もし部署異動が叶わなかったとしても、申し出ることによって働きづらさを感じている事実を工場側に把握してもらえます。業務内容を見直す、教育担当をつけるといったフォローを受けられるかもしれません。

退職する

業務改善や部署異動を訴えても一向に状況が変わらない場合は、工場側に問題がある可能性が高いです。働き続けることで自身の健康に支障が発生してしまう場合は、退職することも選択肢の1つとして検討しましょう。

契約満了を待って円満に退職できると1番良いですが、契約途中に心や身体が限界を迎えてしまうこともあるでしょう。そういった場合は、契約期間中であったとしても自分の身を守ることを優先し、思い切って辞めるべきです。

ただし、契約期間中に退職してしまうと、入社祝い金や契約満了金を受け取れません。再び期間工の求人に応募する際に、担当者に「途中で辞められてしまうのではないか」という疑念を与えてしまい、採用に不利に働く可能性もある点に留意しておきましょう。

ハズレ工程を引く確率を下げるには?

配属先の希望を出したとしても、ハズレ工程に当たってしまうケースも多くあります。どうしてもハズレ工程を避けたい方は、ハズレ工程に配属される確率の低い求人に応募することをおすすめします。具体的には、以下のような特徴のある求人を選ぶと良いでしょう。

  • 部品を取り扱うメーカー
  • 女性・40代以上の従業員活躍中
  • 期間工未経験者歓迎

自動車や家具といった大きな製品を作る工場とは異なり、大きな製品の部品を作るメーカーでは、重い部品を運ぶといった全身を使う作業が少ない傾向にあります。

また、期間工の求人を見ると「女性・40代以上の従業員活躍中」「未経験でも安心」などと記載されているものもあります。こうした求人は体力に自信がない方の採用も受け入れており、肉体労働が少ない可能性が高いです。

期間工に応募する際には、求人や期間工専門の情報サイトをチェックしてハズレ工程が少なそうな求人を選んでみても良いかもしれません。

期間工がハズレ工程に当たったときの注意点

ハズレ工程に配属されてしまった場合、「もう辞めたい」「自分には向いていない」と感じる人も少なくありません。しかし、すぐに辞めてしまうと手当が受け取れなかったり、次の職場でも同じ悩みに直面したりする可能性もあります。つらい状況を少しでも良い方向に変えるために、ここではハズレ工程に当たったときに注意すべきポイントをいくつか紹介します。

  • まずは一定期間続けてみる
  • 冷静に状況を分析する
  • 自分のペースで作業する

まずは一定期間続けてみる

期間工として働き始めてすぐの時期は、どの工程でも慣れない作業に苦戦し、体力的にも精神的にもきつく感じるものです。「ハズレ工程」と感じる理由が、単なる慣れの問題である可能性もあります。

目安として、2週間〜1ヶ月ほどは様子を見ながら続けてみましょう。体の動かし方や作業手順を覚えるうちに、自然と効率が上がり、負担が軽減することも少なくありません。もちろん、明らかに危険を伴う作業や、健康に支障が出るほどの負担がある場合は無理をしてはいけません。

冷静に状況を分析する

「自分だけがきつい工程に回された」「上司が理不尽だ」と感じると、つい感情的に不満を口にしたくなります。しかし、怒りや不満をぶつけるだけでは問題が改善しないどころか、職場で孤立してしまうリスクもあります。まずは、なぜ自分がハズレ工程だと感じているのかを客観的に整理しましょう。原因を明確にすれば、上司や担当者に具体的な相談ができるようになります。

自分のペースで作業する

ハズレ工程に当たると、どうしても「他の人の方が楽そう」「自分ばかり損している」と感じやすくなります。しかし、工程ごとに仕事内容や負担の種類が異なるため、単純に比較しても意味がありません。

焦って周囲のスピードに合わせようとすると、ミスやケガのリスクが高まります。また、無理にペースを上げようとすれば、心身の疲労も蓄積します。「自分にできる範囲で正確に作業する」「少しずつ効率を上げていく」という意識で取り組むことが大切です。仕事の精度を保ちながら、自分のリズムを守ることが長く続けるコツです。

期間工の働き方を見直すべきタイミング

期間工の仕事は、短期間で高収入を得られる反面、体力的・精神的に負担が大きい働き方でもあります。「もう少し頑張るべきか」「限界が近いのか」を判断するのは難しいですが、我慢しすぎて体を壊してしまう前に、自分の働き方を見直すタイミングを見極めることが大切です。ここでは、期間工が働き方を見直すべきタイミングをいくつか紹介します。

体調不良や痛みが続いているとき

期間工の仕事は立ちっぱなしや中腰、重量物の運搬など、体を酷使する作業が多くあります。腰痛・関節痛・腱鞘炎などの痛みが長引いている場合は、すでに体が限界に近づいているサインかもしれません。

「一晩休めば治るだろう」と軽視せず、1週間以上同じ痛みが続く場合は早めに医務室や病院を受診しましょう。その上で、現在の配属先や作業内容を見直してもらうことも必要です。

出勤するのがつらい・モチベーションが続かないとき

期間工の仕事は単調な作業が多く、精神的に張り合いを失いやすい職種でもあります。毎日が義務的で、何をしても楽しめない状態が続くと、軽度のうつ状態に陥る危険もあります。

モチベーションの低下が一時的なものであれば休暇を取って回復を待つのも良いですが、長期間改善しない場合は、部署異動や転職といった選択肢を検討しましょう。精神的な負担を抱えたまま働き続けることは、自分自身を追い詰める原因になります。

ミスが増えて集中力が続かなくなったとき

「いつもなら簡単にできる作業でミスをした」「注意しているのにケアレスミスが多い」といった変化が見られる場合、心身の疲労が限界に達しているかもしれません。

集中力が続かない状態でライン作業を続けると、自分だけでなく周囲の安全にも関わります。特に自動車や電子部品など精密な工程では、小さなミスが大きな不良品や事故につながる可能性もあります。「作業ペースは自分に合っているか」「休息を取れているか」を見直すことが大切です。

職場の人間関係に強いストレスを感じるとき

上司や同僚との関係が悪化すると、たとえ作業が楽でも精神的に大きなストレスを感じます。特にハズレ工程に配属されている場合、仕事のきつさと人間関係の悪さが重なって「職場に行くのが怖い」「話しかけられるのも苦痛」と感じる人も少なくありません。

職場の人間関係はすぐに改善できないことも多いため、我慢を続けるよりも、部署変更・契約更新の見送り・転職といった形で環境を変えるのがおすすめです。

期間工のハズレ工程に関するよくある質問

期間工のハズレ工程に関するよくある質問に回答します。

Q. 期間工のどんなメーカー・職種にハズレ工程が多いですか?

一般的に自動車メーカー系の工場は、製造工程が多く人手も必要なため、ハズレ工程に当たる確率が高いと言われています。一方で、電子部品・食品・小型家電などの軽作業系メーカーでは、比較的負担が少なく「当たり工程」と感じる人が多い傾向にあります。

Q. ハズレ工程でも慣れれば楽になりますか?

ほとんどの工程は「慣れ」で大きく変わります。最初の2週間〜1ヶ月は覚えることが多く、筋肉痛や疲労で「もう無理」と感じる人も少なくありません。しかし、動きや手順を体が覚えると、自然とペースをつかめるようになります。しかし、どうしても体質的に合わない場合は、無理をせず働き方を見直すことが大切です。

Q. ハズレ工程がつらい場合は我慢して働き続けるべきですか?

我慢しすぎるのは危険です。一時的なきつさであれば慣れる可能性もありますが、身体の痛み・睡眠不足・精神的なストレスが続く場合は、早めに上司や人事に相談しましょう。

それでも改善されない場合は、契約満了を待たずに退職するのも選択肢のひとつです。期間工の契約は比較的短期(3〜6ヶ月)なので、無理をしてまで続ける必要はありません。自分の体と心を守ることが、最も大切です。

状況に応じてハズレ工程と上手に向き合おう

期間工として配属された部署がハズレ工程であるかどうかは、自身の捉え方によって異なります。配属されたばかりの頃はつらいと感じても、努力して慣れていくうちにやりがいや働きやすさを見出せるかもしれません。

しかし、工場側に問題がある場合は我慢せず、自分の身を守ることを優先しましょう。場合によっては、職場を離れることも検討するべきです。

自身の心や身体の状態を踏まえてハズレ工程と上手に向き合うことが、期間工として長く活躍するコツだと言えるでしょう。