派遣社員は、派遣会社に対して時給アップの交渉をすることが可能です。しかし、状況によっては、派遣先や派遣会社との関係が悪くなるため注意しなければなりません。
今回のコラムでは、派遣社員の時給交渉における適切なタイミングと条件、注意点を解説していきます。成功させるポイントもまとめているので、ぜひ最後までご覧ください。
派遣社員が時給交渉できる条件

時給交渉に明確な条件はないものの、理由や根拠がない状況で交渉しても成功しません。まずは、派遣社員が時給交渉できる条件を把握しておきましょう。
契約範囲外の業務に携わっている
派遣社員は、事前に定められた契約内容に基づいて働くのが一般的です。しかし、実際の現場では、契約外の業務を任されることも珍しくありません。
たとえば、電話対応がないとされていたのに窓口業務まで担当するようになったり、事務職のはずが営業サポートを行うようになったりと、より専門性の高い作業を担うケースもあります。このような状況は、本来の契約に対して労働の質や量が変わっている状態になるため、時給交渉の正当な根拠になります。
勤務態度に問題がない
時給交渉をする際は、根拠を示す必要があり、勤務態度の良さはその一つの指標です。たとえば、次のような積み重ねが、信頼につながります。
- 毎日の出勤時間を守っている
- 無断欠勤や遅刻がない
- 周囲と協力して業務に取り組んでいる など
派遣社員は、即戦力と期間内の安定した働きぶりが重視されます。そのため、どんなにスキルが高くても、勤務態度に問題があれば時給アップの交渉材料としては弱くなってしまうでしょう。
一方で、与えられた業務に対して責任を持ち、前向きに取り組む姿勢があれば、派遣会社の担当者や派遣先企業からの信頼を得やすく、交渉の場での後押しになります。
派遣会社や派遣先からの評価が高い
派遣社員としての評価は、時給交渉において重要なファクターです。派遣会社は、企業と派遣スタッフの間に立つ存在であり、どちらからのフィードバックも重視します。
もし派遣先から「仕事が丁寧」「柔軟に対応してくれる」といった高評価を受けていれば、派遣会社もその価値を理解できます。また、長期間にわたって同じ職場で勤務していたり、更新を繰り返していたりすれば、それだけでも信頼されている証拠になるでしょう。
こうした信頼関係が築けていると、頼れる人材を手放したくないという気持ちが働きやすく、交渉が前向きに進む可能性が高いです。
時給交渉に適したタイミング

時給交渉では、話を切り出すタイミングが重要です。時期を間違えれば失敗に終わるため、しっかりタイミングを見極めましょう。
契約前
最も時給交渉しやすいタイミングは契約前です。この段階では、派遣先企業との間でまだ正式な合意がなされておらず、条件の調整が可能な状況です。
面談や求人情報を通じて、業務内容と必要なスキルが明らかになっているため、自分の能力が業務にどれだけマッチしているかをアピールする絶好の機会になります。「この業務内容の仕事を〇年間経験してきたので、この時給では見合わないと感じています」といったように具体的に理由を添えて交渉し、相手に納得感を与えましょう。
更新時
更新のタイミングは派遣先と派遣会社が、これまでの勤務実績や今後の業務計画を見直す機会になります。このとき、自身の貢献度やスキルの向上、担当業務の拡大などを根拠に「次回更新にあたって、時給の見直しをご相談できないでしょうか」と切り出すのが効果的です。
このとき、実績を数字で示せると説得力が増し、交渉がスムーズに進むでしょう。とくに、派遣先が継続勤務を希望している場合は、より交渉しやすいタイミングといえます。
業務内容が変化したとき
契約期間中に、業務内容が変わった場合、それは時給交渉のチャンスになります。ただし、スキルが足りずに別の業務にあたっているようなケースは該当しません。
担当できる業務の幅や、責任が明らかに増えた場合の時給見直しの申し出は、正当な要求です。変更内容を記録し、「これまで業務は〇〇でしたが、現在は△△も担当しております」と明確に伝えましょう。派遣会社の担当者も実情を把握しきれていない可能性があるので、現場での状況を丁寧に説明することが交渉成功につながります。
資格を取得したとき
新たに資格を取得したときも、時給交渉を考える絶好のタイミングです。とくに、現在の業務に関連した資格であれば、今後の業務範囲や質に大きく貢献できる証明になります。
たとえば、次のように職種に合った資格を取得した際には、その価値を説明し、時給アップの理由として提示しましょう。
- 事務職:日商簿記やMOS
- 医療事務:診療報酬請求事務能力認定試験 など
このとき、「今後は知識を活かして、さらに業務の幅を広げられると思います」と伝えれば、業務成果に結びつく交渉材料として説得力を持たせられます。
時給交渉の注意点

時給交渉は派遣会社に対して行いますが、無理に進めれば関係の悪化を招くため注意が必要です。以下、時給交渉の注意点を解説します。
勤務してすぐの交渉はNG
派遣先での勤務が始まって間もない段階での時給交渉は、基本的に避けましょう。実際の働きぶりや職場への適応状況が評価される前に待遇の話を切り出すと、自己中あるいは協調性がないと受け取られかねません。
少なくとも一つの契約期間をしっかり勤め上げ、仕事に対する姿勢やスキルが周囲に認められてから交渉するほうが、交渉もスムーズに進みます。本気で時給アップを目指すのであれば、まずは誠実な働きぶりで評価を積み上げましょう。
派遣先の業績が悪いときは避ける
派遣先の業績が悪化している場合には、時給交渉は悪手です。経費削減や人件費の見直しが進んでいれば、昇給の話は歓迎されません。
業績の悪化は公表されないことも多いですが、職場の雰囲気や業務量の変化、人員整理の噂などから察知できるでしょう。そうした兆候がある場合は、実績を積む時期と割り切り、適切なタイミングまで待つほうが、長期的に見て良い結果につながります。
大幅な昇給は期待できない
派遣社員の時給交渉では、大幅な昇給を期待するのは現実的ではありません。派遣の場合、時給の見直しがあったとしても、上がる額は50円〜100円程度が一般的です。
派遣契約は、もともと有期の明確な業務範囲を前提にしているため、大きな給与変動が起きにくい制度です。もちろん、業務内容の変化や働きぶりが高く評価された場合には例外もありますが、基本的に上がり幅は小さいと思っておきましょう。
時給交渉を成功させるポイント

時給交渉は、やみくもに行っても成功しません。しっかりとポイントを押さえ、成功の確率を高めてから交渉に臨みましょう。
漏らさずアピールする
交渉の場では、自分の実績やスキルをしっかりと伝える必要があります。遠慮してアピールしなければ、担当者側は「現状のままで問題ない」と判断しかねません。
派遣先で行っている業務を具体的に伝えるほか、資格や経験がどのように役立っているかを示してアピールしましょう。伝えなければ評価されないという意識で、抜け漏れなく自己PRすることが大切です。
派遣会社、派遣先と良好な関係を築く
どれだけスキルが高くても、普段のやり取りでトラブルが多かったり、態度に問題があったりすれば、時給交渉どころではありません。派遣会社の担当者とは定期的に連絡を取り、業務上の報告や相談をしやすい関係性を築いておきましょう。
また、派遣先でも周囲との人間関係やコミュニケーションを大切にし、信頼を得ておくことが大切です。良好な関係性が築けていれば、交渉の場面で感情的な摩擦が起きにくくなり、建設的な話し合いが可能になります。
時給交渉は慎重に
派遣社員も、状況に応じて時給交渉することが可能です。しかし、昇給の根拠がなかったり、タイミングを間違ったりすれば交渉は困難になります。
業務内容の幅が広くなった場合や派遣先から高く評価されたときに、タイミングを見計らって切り出す必要があります。契約更新や資格取得といった時期を活用し、うまく時給交渉を進めましょう。
交渉を成功させるためには、職場での関係構築やスキルを高めるといった点を普段から心がけておくことが大切です。