仕事をするうえでは、さまざまなトラブルが想定されます。派遣スタッフの場合、派遣先・派遣元のどちらともトラブルが起こる可能性があるため注意が必要です。
そこで今回は、派遣先や派遣会社との間で起こりがちなトラブルの事例を紹介していきます。対処法や未然に防ぐ方法についてもまとめているので、ぜひ最後までご覧ください。
派遣先でのトラブル事例

まずは、派遣先で起こりがちなトラブル事例を見ていきましょう。派遣先では、実際の業務や人間関係に起因したトラブルが多い傾向にあります。
サービス残業がある
契約上、派遣スタッフは派遣会社と雇用関係にありますが、実際の勤務状況の管理は派遣先が行います。そのため、自主的なサービス残業を求められる企業や残業申請させてくれないような派遣先では、サービス残業が発生しがちです。
サービス残業は労働基準法に違反するため、たとえ自主的に行ったとしても企業の管理責任が問われます。違法なサービス残業は心身の不調や残業代の未払いといったトラブルにつながるため、避けなければなりません。
派遣社員のサービス残業については、派遣先と派遣元の両方に責任があります。どちらか一方だけの問題ではなく、両者が連携して適切な労働環境を整備する義務があります。
契約外の業務をさせられる
派遣契約には業務内容が明記されており、派遣スタッフはその範囲内で業務にあたります。しかし実際には「人手が足りない」「正社員と同じ仕事をしてほしい」などの理由で、契約外の業務を任されるケースも少なくありません。
たとえば、事務職として派遣されたのに倉庫作業や営業補助を指示されるといった場合が挙げられます。こうした状況は契約違反になるため、派遣元と派遣先の間で再確認や是正が必要です。
ハラスメント被害に遭う
残念ながら、派遣先でパワハラやセクハラ被害に遭うケースは珍しくありません。派遣スタッフは期間限定の従業員という立場から、無視や高圧的な言動、業務の押し付けなどを受けやすい傾向があります。
管理元である派遣会社は派遣先での勤務実態を把握しにくく、当事者が声をあげなければ、問題に気づくのは困難です。そのため、相談できない人が長期的に我慢を強いられることもあります。
人間関係のトラブルに巻き込まれる
派遣スタッフは既に出来上がっている企業文化やチームの中に途中から加わるため、知らずに職場の人間関係に巻き込まれてしまうことがあります。よくある人間関係のトラブルとして、次のような例が挙げられます。
- 正社員同士の対立
- 部署内の派閥
- 業務の押し付け合い
こうした職場環境では業務に支障が生じるケースも多く、モチベーションの低下やストレスの蓄積につながるでしょう。
派遣会社とのトラブル事例

派遣会社との間に生じる以下のようなトラブルは、会社や担当者との信頼関係に大きく影響します。これにより、安心して働けなくなるケースもあります。
派遣先での問題に対応してくれない
派遣スタッフが派遣先でトラブルに直面した際、派遣元は速やかに対応し、派遣先との調整や是正に取り組まなければなりません。しかし、中には対応を怠り事態を悪化させてしまうケースもあります。
担当者との関係がこじれてしまうと言った言わないのトラブルになることもあるため、やり取りや相談内容は書面で残しておくとよいでしょう。
産休や育休が取りにくい
派遣スタッフであっても、産前産後休業や育児休業を取得することが可能です。育児休業には一定の条件がありますが、産休は雇用契約を結んでいる女性労働者であれば、誰でも取得できます。
こうした休暇を取得させないのは違法にあたるため、条件に満たない場合を除き、基本的には取得できると考えてよいでしょう。しかし、申請にあたって嫌な態度をとられたり、遠回しに辞職を促したりするケースは少なくありません。
辞められない
退職を申し出た際、「契約期間中は絶対に辞められない」「後任が見つかるまで我慢してほしい」などと引き止められたり、退職届の受理を渋られたりすることがあります。しかし、労働基準法では2週間前に意思表示をすれば退職は可能とされており、たとえ有期契約中であっても、やむを得ない事由があれば途中でも解約できます。
病気や家庭の事情など、正当な理由がある場合は法律に基づいて冷静に対応し、過度な引き止めに応じないようにしましょう。
派遣が知っておくべきトラブルの対処法

派遣スタッフはこれまで紹介したようなトラブルが起きた際、不利益を被らないよう冷静に対応しなければなりません。以下の対処法を確認し、いざというときに行動できるようにしておきましょう。
まずは派遣会社に連絡する
派遣スタッフが職場でのトラブルに対処したい場合、最初に相談すべき相手は派遣会社(派遣元)の担当者です。相談にあたっては、以下のような点をできるだけ具体的にまとめておくとスムーズです。
- できごと
- 日時
- その場にいた人 など
これらは口頭だけでなく、メールなど証拠が残る方法で連絡するのがおすすめです。担当者が取り合ってくれない場合は、派遣会社のサポート窓口に相談するとよいでしょう。
解決しなければ専門機関へ相談する
派遣元に相談しても対応してもらえず、派遣先とのトラブルが深刻で改善が見込めないような場合には、専門機関に相談しましょう。労働者の相談先として、以下の機関が挙げられます。
- 総合労働相談コーナー(都道府県労働局)
- ハローワーク
- 労働基準監督署
- 労働組合(ユニオン)
- 法テラス
無料で相談できるケースも多く、状況によっては企業への是正指導や法的手続きの支援も行ってくれます。「騒がれたくない」「会社にバレたくない」と悩んでいるのであれば、まずは電話やメールでの相談などから始めるとよいでしょう。
派遣会社を変更する
派遣先で不適切な扱いを受けている、派遣元が十分な対応をしてくれないといった場合、派遣会社自体を変更するのも一案です。派遣会社の数は多く、福利厚生やサポート体制、キャリア相談の充実度などに違いがあります。
トラブル対応が遅く、担当者が信頼できないような状況では安心して働けないため、転社を視野に入れるのは正当な判断です。複数の派遣会社に登録することも可能ですが、契約期間が重なったり、規約に触れたりしないよう注意する必要があります。
派遣トラブルを防ぐためには

トラブルが起きる前に防ぐことも重要です。法律の基礎知識を身につける、事前確認を徹底するといった行動で、自分の身を守りましょう。
派遣法について理解しておく
派遣先や派遣会社とのトラブルを未然に防ぐためには、労働者派遣法の基本的な仕組みを理解しておくことが大切です。労働者派遣法では、派遣労働者の雇用条件や就業環境を守るために以下のようなルールが定められています。
- 派遣期間の制限
- 抵触日の通知義務
- 派遣元と派遣先の役割分担 など
残業の扱いや業務範囲、派遣元の責任など、基本的な知識があれば、自分が不当な扱いを受けていないか判断しやすくなります。また、違法な契約や業務命令に対しても、冷静に対処できるでしょう。
全てを覚える必要はありませんが、自分に関係する条文や基本ルールだけでも把握しておくと、トラブルの芽を早期に摘めるようになります。
わからないことは契約前にはっきりさせる
働き始める前にしっかりと確認作業を行うことも、トラブル防止に有効です。契約書には次のようなことが記載されますが、もし不明点や不安がある場合は、担当者に確認する必要があります。
- 就業場所
- 業務内容
- 勤務時間
- 残業の有無
- 休日
- 時給 など
曖昧なまま契約を結んでしまうと、就業後に「話が違う」「聞いていた条件と違う」といった問題が発生しやすくなります。派遣労働は契約に基づく働き方であるからこそ、契約内容の事前確認が重要です。
派遣会社や派遣先とのトラブルに対処しよう
派遣先では人間関係や業務範囲などに起因し、さまざまなトラブルが起こりがちです。派遣会社の対応で改善すればよいですが、必ずしも上手くいくとは限りません。万が一派遣会社との間でトラブルが起きてしまえば、安心して働けなくなってしまいます。
トラブルが起きた際にはまず派遣会社に相談するのが基本ですが、対応してもらえない、事態が悪化したというような場合には、外部機関を頼るのも一案です。場合によっては、派遣会社の変更も検討するとよいでしょう。