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派遣社員でも失業保険はもらえる?
「今働いている派遣先の会社に、契約を打ち切られてしまったらどうすれば良いのか」
このような疑問を抱えている派遣社員の方は多いのではないでしょうか。突然働き口を失い、収入がなくなってしまうということに不安を感じるのは事業者として自然のことですが、正規雇用の会社と比較して雇用が不安定な派遣社員は尚更です。
契約が終了しても、次の派遣先を紹介してもらうことはできますが、すぐに希望に合う派遣先が見つかるとは限らず、一時的とはいえ収入がなくなってしまう恐れがあります。
その際気になるのが、「派遣社員でも失業保険を受給することは可能なのか」ということです。万が一の際に慌てないためにも、今回のコラムで派遣社員の失業保険について詳しく知っておきましょう。
派遣社員の失業リスク
「正社員に比べて派遣社員は雇用が不安定」
世間一般的にはこのようなイメージが浸透していますが、あながち間違いではありません。まだ契約期間が残っているにも関わらず、派遣先の会社の都合で突然契約が終了になるということは稀に起こるため、全くリスクがないとは言えないでしょう。
いわゆる「派遣切り」のことを指しますが、新型コロナウイルスの影響もあり、近年は派遣切りの件数もわずかながら増加しています。
もし自身が派遣切りに遭っても、派遣会社にまた次の派遣先を紹介してもらうことが可能ですが、万が一の事態に備えて、失業保険のことも理解しておきましょう。
失業保険とは?
まずは、失業保険がどういった制度なのか確認していきましょう。
失業保険とは、何らかの理由で失業状態にある人が安定した生活を送りつつ、1日でも早く再就職できるよう支援するための公的保険制度です。
失業保険、失業手当、失業給付金などとよばれていますが、正式には雇用保険といいます。
あくまで保険のため、受給するためにはいくつか条件があります。主に厚生労働省が管理し、手続きや給付はハローワークが行います。
派遣における失業保険の受給条件
派遣社員が失業保険を受給するには以下の条件を満たす必要があります。
- 雇用保険に加入している
- 一定の被保険者期間を満たしている
- 意図せずに労働できない状態である
雇用保険に加入している
1つ目は雇用保険に加入しているということです。
というのも、失業保険は雇用保険の1つであるため、そもそも雇用保険に加入し、保険料を支払っていなければ、いざ失業してしまった際に保険金を受け取ることはできません。
ちなみに、雇用保険の加入条件は以下の通りです。
- 所定労働時間:1週間で20時間以上
- 雇用期間:31日以上、あるいは31日以上の見込みがある
- 年齢:65歳まで
これらの条件を満たしている場合、その事業者は必ず雇用保険の加入義務があります。正社員、派遣社員、アルバイトなど雇用形態は問いません。ある程度働き続け、収入を得ている方であれば、基本的には加入していることになります。給与明細にも記載されているので、一度確認してみると良いでしょう。
一定の被保険者期間を満たしている
次に重要なのが、一定の被保険者期間を満たすことです。つまり、雇用保険に加入するだけでなく、ある程度の期間は保険料を支払い続ける必要があります。
期間は自己都合と会社都合で異なり、それぞれの場合の最低期間は以下のようになっています。
- 自己都合での失業:1年以上(離職日以前の2年間において)
- 会社都合での失業:半年以上(離職日以前の1年間において)
一見複雑そうに感じられるかもしれませんが、少なくとも通算1年以上、雇用保険料を支払い続けていれば、期間に関する条件は確実に満たすことができます。
意図せずに労働できない状態である
最後の条件は「意図せずに労働できない状態である」ということですが、要するに、また別の場所で働く意思があれば問題ありません。反対に次の派遣先や転職先を探す意思が確認されなければ、失業保険は支給されないことになります。
派遣における自己都合退職と会社都合退職の違い
次に自己都合と会社都合の違いについて解説していきます。どちらかによって失業保険の申請や受給に大きく影響を及ぼすため、必ず理解しておきましょう。
自己都合
- 派遣会社から次の求人を紹介されたが断った
- 結婚や転居といった家庭事情
- ケガや病気による療養
自己都合に該当する例としては上記のようなケースが挙げられますが、中でも注意が必要なのが「紹介された派遣先を断った」という場合です。
失業の理由が自己都合になると、いくつかの不利益が発生するのですが、希望に沿わない派遣先に行くわけにも行きませんよね。派遣会社の担当には自身の希望を細かく伝え、極力このような事態にならないようにしましょう。
会社都合
- 経営不振によって解雇されてしまった
- 派遣先の会社が倒産してしまった
- 契約満了後、次の派遣先を紹介してもらえない
このような場合は会社都合の失業ということになります。
もちろん上記以外の理由でも会社都合と見なされる場合はありますが、結局判断するのはハローワークです。判断が難しい場合は、早めにハローワークに問い合わせるようにしましょう。
特定理由離職者と特定受給資格者
自己都合の中でも特定理由離職者は給付条件が緩和されることがあります。
特定理由離職者とは、就業意志があるにも関わらず、やむを得ない理由があり働けない人が該当します。派遣会社から次の仕事を紹介されない、いわゆる「雇い止め(派遣切り)」もここに当てはまります。派遣スタッフならではの特別措置ともいえるでしょう。
同じように、突然の倒産や解雇で再就職の準備を行う余裕無く離職を余儀なくされた人を「特定受給資格者」といいます。
特定理由離職者と特定受給資格者は一般離職者とは、雇用保険の被保険者期間の条件や受給期間が異なることがあります。ただし、前述した通り「やむを得ず退職をしており、求職活動を行っていること」が条件であることには変わりません。
失業保険の受給金額は?
「失業保険を受給できることになったとして、いくら支給されるのか」という疑問を抱く方も多いでしょう。実際の受給金額はそれまでの給与にも依存するため、具体的な金額をお伝えするのは難しいですが、給与に関係なく、失業者の年齢に応じて金額には上限が定められています。
年齢 | 上限支給額(日額) |
---|---|
~30歳 | 6,835円 |
30~45歳 | 7,595円 |
45~60歳 | 8,355円 |
60~65歳 | 7,177円 |
実際の上限金額は上記の通りです。
最も多くの失業保険を受給できる可能性があるのは45〜60歳の方ですが、それまでどれだけ多くの給与を得ていても、この金額以上は支給されないということを理解しておきましょう。
失業保険はいつ受給できる?
次に失業保険はいつ受給できるのかという点について解説していきますが、こちらも会社都合退職か自己都合退職かによって詳細が異なります。
まず会社都合の場合、失業申請後の7日間は待機期間になり、保険金を受給することはできません。そのため、できるだけ早く申請を済ませることが重要です。
次に自己都合の場合、会社都合と同様に7日間の待機期間に加え、2カ月の給付制限期間があります。決して短くない期間になるので、十分に注意しましょう。
失業保険の受給期間はいつまで?
会社都合の場合 | 半年以上 1年未満 |
1年以上 5年未満 |
5年以上 10年未満 |
10年以上 20年未満 |
20年以上 |
---|---|---|---|---|---|
30歳未満 | 90日 | 90日 | 120日 | 180日 | – |
30~44歳 | 120日 | 180日 | 210日 | 240日 | |
35~44歳 | 150日 | 240日 | 270日 | ||
45~59歳 | 180日 | 240日 | 270日 | 330日 | |
60~64歳 | 150日 | 180日 | 210日 | 240日 |
自己都合の場合 | 半年以上 1年未満 |
1年以上 5年未満 |
5年以上 10年未満 |
10年以上 20年未満 |
20年以上 |
---|---|---|---|---|---|
年齢 | – | 90日 | 120日 | 150日 |
失業保険を受給できる日数は最長でこのようになっています。年齢や勤続年数によって異なりますが、それ以外にも会社都合か自己都合かで分かれます。
ただ、自己都合の失業であっても、新型コロナウイルスの影響や、やむを得ない理由である場合は受給期間が延長されることもあるので、ハローワークに相談してみましょう。
なお、雇用保険の加入が65歳までのため、65歳以上になると必然的に失業保険はもらえないことになります。
失業保険の申請に必要な書類
- 本人確認書類(運転免許証・マイナンバーカードなど)
- 証明写真(3カ月以内に撮影したもの2枚、3cm×2.5cm)
- 雇用保険被保険者離職票1・2
- 預金通帳
- 印鑑
失業保険の申請に必要な書類は上記の通りです。できるだけ早く保険金を受給するためにも、事前によく確認しておくのが望ましいです。
離職票は所属する派遣会社から受け取ることができるので、申請にあたって担当者に連絡しましょう。離職票1と離職票2がありますが、どちらも必要になります。
派遣社員が失業保険を受給する方法
続いて失業保険を受給するまでの流れを解説いたします。以下の流れに沿って申請しましょう。
- 派遣会社から離職票を受け取る
- ハローワークに必要書類を提出する
- 受給説明会を受講する
- 失業が認定される
- 受給開始
派遣会社から離職票を受け取る
離職後、派遣会社より離職票が交付されます。離職票には、会社都合か自己都合か明記してあります。
ハローワークに必要書類を提出する
ハローワークに求職申し込みを行い、離職票と必要書類を提出します。
離職票以外の書類は全て自身で用意できるものなので、早めに離職票を受け取り、ハローワークに提出しましょう。
受給資格の認定後、7日間の待機期間が経過した後に雇用保険受給説明会の日時が決定します。
受給説明会を受講する
受給説明会では、雇用保険や失業認定日の説明を受けた後に「雇用保険受給資格者証」と「失業認定申告書」をもらえます。
失業が認定される
受給説明会で説明を受けた失業認定日にハローワークに行き、失業認定を受けます。このときに求職活動の状況を記載した失業認定申告書と雇用保険受給資格者証も提出します。
受給開始
5営業日程度で登録した口座に保険金が振り込まれます。
派遣社員が失業保険を活用する際の注意点
最後に失業保険の申請を行う際の注意点を解説していきます。以下の3点に気を付けましょう。
- 不正受給とみなされるケースがある
- 短期間で再度受給することはできない
不正受給とみなされるケースがある
せっかく失業保険の申請をしても、不正受給とみなされてしまうケースがあります。
よくある例が、失業中にも関わらず他の場所で働いて収入を得てしまうということです。その場合、失業という状態には該当しなくなってしまうため、知らないまま働いて、申請が拒否されないように注意しましょう。
短期間で再度受給することはできない
稀なケースではありますが、次の派遣先が見つかったにも関わらず、再度契約が終了し、失業してしまう場合があります。
残念ながら、そのような短期間に失業してしまった場合、再び失業保険を申請することはできません。申請条件の1つでもある、被保険者期間を満たせていないのが理由です。
そのため、復職から会社都合であれば半年、自己都合であれば1年以上経過すると、再び失業保険を受給することができます。
素早い行動を心がけ、困ったらすぐに相談するのがおすすめ!
今回解説したように、派遣社員でも失業保険を受給することは可能ですが、それには複雑な条件や規律があります。どうしても専門知識が必要なので、困ったら派遣会社やハローワークに相談するようにしましょう。
また、実際に保険金を受給するまでにはある程度の期間が必要です。特に自己都合での失業の場合は失業から2カ月以上先のことになるので、早め早めの行動を心がけるようにしましょう。