世の中の多くの企業では、従業員の働きやすさ向上のため、福利厚生を充実させています。それによって従業員満足度を高めたり、企業の社会的イメージの向上を目的としていますが、その恩恵を受けられるのは嬉しいことですよね。
しかし、福利厚生と聞くと正社員のための制度であり、派遣社員は受けられないと考える方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は派遣社員は福利厚生を受けることができるのか、どんな福利厚生があるのかなど、派遣社員の福利厚生について詳しく解説していきます。
派遣社員は福利厚生を受けられる?
冒頭でも述べましたが、派遣社員では福利厚生を受けられないのではないかと疑問に持たれる方も多くいます。しかし、雇用形態に関係なく会社の従業員として働いていれば福利厚生を受けることができるため、派遣社員でも福利厚生は受けることができます。
ですが、派遣社員も福利厚生を受けられるからといって、会社が提供している福利厚生を全て受けられるわけではありません。一部の福利厚生には条件が設定されており、条件を満たすことができればその福利厚生を受けることができます。
とはいえ、基本的な福利厚生は派遣社員の方でも受けることができるため、派遣会社を選ぶ際はどのような福利厚生が受けられるかを1つの選考基準にしている方もいるようです。
福利厚生とは
福利厚生とは、企業が従業員や従業員の家族に提供する、給与以外の報酬やサービスのことを指します。企業は従業員に福利厚生を提供することで、従業員とその家族の生活の安定とさらなる向上を目的としています。それに加えて、従業員が働きやすい環境を整備することで、能力の発揮とその成長を支援しています。
企業側が積極的に福利厚生を導入する大きな目的は、企業の社会的信頼を高め、優秀な人材を確保することです。有意義な福利厚生を導入することで、人材が集まりやすく、従業員の満足度も高まり人材の定着率向上も見込めるため、工夫を凝らした福利厚生を提供する企業も増えています。
2種類の福利厚生について解説
福利厚生には大きく分けて「法定福利厚生」と「法定外福利厚生」の2種類があります。それぞれ解説していきます。
法定福利厚生
法定福利厚生とは、法律で導入することが義務化されている福利厚生のことです。法律で定められているため、どの企業にもこの法定福利厚生は存在します。
法定福利厚生には6種類の項目があり、企業は必ず制定・実施しなければなりません。種類によって企業側の負担と従業員側の負担の割合がそれぞれ定められています。
それぞれを下の表にまとめます。
種類 | 負担割合 | 概要 |
---|---|---|
健康保険 | 企業・従業員折半 | 社員やその家族が病気やケガなどの時に医療給付や手当金を支給する制度。 |
介護保険 | 企業・従業員折半 | 高齢化や核家族化の進行に伴い、介護を社会全体で支えるための保険制度。 |
厚生年金保険 | 企業・従業員折半 | 会社で働く者が納めることによって、労働者が65歳以上になった時に年金を受け取る制度。 |
雇用保険 | 企業2/3 従業員1/3 |
労働者が失業した場合、生活の安定と再就職の促進のための給金を支給する制度。 |
労災保険 | 企業全額負担 | 業務中や通勤によってケガや病気、死亡した場合に給付金を支給する制度。 |
子ども・子育て拠出金 | 企業全額負担 | 子育てを社会全体で支援し、子育て世帯に給付金を支給する制度。 |
法定外福利厚生
法定外福利厚生とは、企業側が自由に設定・導入できる福利厚生のことです。こちらは法律で定められているものではないため、中には法定外福利厚生が存在しない企業もあります。
こちらは企業の任意のため、種類や項目は多種多様です。ここで企業の差別化を図り、求人募集の際に大きく打ち出している企業もあります。代表的な法定外福利厚生を、以下にまとめます。
- 住宅手当
- 社宅・寮の提供
- 交通費支給
- 資格取得手当
- 誕生日休暇
- 社員食堂食費補助
- 懇親会援助
企業によってはこのような法定外福利厚生を受けるために何らかの条件が設けられており、派遣社員は受けられないこともあります。
正社員と派遣社員の福利厚生に違いはある?
法定外福利厚生には条件が設けられていることもあると解説しましたが、それが雇用形態によって分けている条件もあれば、勤続年数で条件を設けている場合もあります。それぞれの福利厚生を受けるための条件を確認しておくことが必要です。
また、派遣社員の場合、派遣先企業の福利厚生ではなく、派遣会社の福利厚生が適用されることになります。派遣先企業では提供されている福利厚生でも、派遣会社が提供しているものでなければ、その福利厚生を受けることができないのです。
派遣先企業に魅力的な福利厚生があったとしても、それを派遣会社が導入していなければ、派遣社員の方はその恩恵を受けることはできないでしょう。
派遣社員が受けられる基本的な福利厚生
派遣社員が受けられる基本的な福利厚生には次のようなものがあります。
- 社会保険
- 有給休暇
- 健康診断
- 産休・育休
社会保険
社会保険とは、
- 医療保険
- 年金保険
- 介護保険
- 雇用保険
- 労災保険
これら5つの保険の総称であり、相互扶助の理念に基づきお互いに資金を出し合って共に助け合うための制度です。
社会保険は法定福利厚生のため、全ての企業に導入されており、必ず受けられる福利厚生です。ケガや病気、失業、介護、子育て、労災などの日常に潜むリスクに備えるもので、「いつ」「どこで」「誰が」遭遇するかわからない万が一のために助け合うための制度です。
社会保険に関してはこちらの記事で詳しく解説しているので、さらに詳しく知りたい方は参考にしてみてください。
有給休暇
有給休暇は会社員の心身のリフレッシュやゆとりある生活を確保することを目的とした、賃金を保証する休暇のことです。会社の稼働日に休暇を取ることができ、その日も給料が支払われます。
労働基準法第39条で定められており、雇用形態に関わらず有給休暇が付与されます。基本的には入社から半年後に10日の有給休暇が付与され、以下のように勤続年数に応じて付与日数が増えていきます。
有給休暇について詳しく解説した記事があるので、詳細が気になる方はそちらをご覧ください。
健康診断
企業には会社で働く従業員の安全と健康を守る義務があり、その務めを果たすために定期的に社員に健康診断を受けさせる必要があります。これは派遣社員に対しても同様なので、派遣社員でも健康診断を受けることができます。
しかし、健康診断を受けるためには条件を設定している企業もあるため注意が必要です。以下は健康診断を受診する条件の一例です。
- 派遣先企業で6ヵ月以上勤務している
- 週40時間以上勤務している
受診条件に関しては法律で決められていないため、派遣会社に確認する必要があります。
産休・育休
産休・育休も法律で定められた法定福利厚生であるため、派遣社員でも取得することが可能で、残りの契約期間などによって取得条件が定められています。一般的な取得条件は以下の通りです。
- 同一派遣先で1年以上の契約がある
- 子供が1歳の誕生日を迎えても雇用契約期間が残っている
- 子供が1歳6ヵ月になる前に契約満了し、契約更新されないことが明らかではない
産休・育休の取得についても派遣会社によって条件が変わってくるケースがあるため、妊娠が発覚した時点で、早めに派遣会社に相談しましょう。派遣社員の産休・育休についてまとめた記事があるので、詳しくはこちらをご覧ください。
派遣社員の産休・育休について解説!条件や手続きの流れなど紹介
福利厚生が受けられるメリット
福利厚生が受けられることで様々なメリットがあります。
- もしもの時の保証があって安心できる
- ワークライフバランスが安定する
- 仕事に対するモチベーションが向上する
もしもの時の保証があって安心できる
もしケガや病気にかかってしまい、通常通り業務を続けられなくなってしまった場合、収入が途絶えてしまう恐れがあります。業務中にケガをしてしまうこともあるかもしれません。
そうなってしまった時、福利厚生があることで最低限の保証を受けることができます。任意保険に加入していなくても、もしもの場合には給付金を受け取ることができます。
心に余裕をもって働くためにも、福利厚生は欠かせません。
ワークライフバランスが安定する
近年、働き方改革などによって仕事とプライベートのバランスを大事にする動きが強まっています。有給休暇や企業が設定している特別休暇などを利用すれば、プライベートを優先して休みを取得できます。
ワークライフバランスが安定することで、ストレスを溜めることなくリフレッシュして仕事に取り組むことができるようになるでしょう。
仕事に対するモチベーションが向上する
資格支援制度があれば、積極的に資格取得に向けて取り組むことができます。資格で新たな知識やスキルを身につけることで、仕事に対するモチベーション向上にも繋がるでしょう。
また、社内表彰制度の福利厚生があれば、仕事の成果が目に見える形で評価されることになります。成果に対する報酬があれば、より高いモチベーションを持って仕事に取り組むことができるようになります。
派遣会社を選ぶと時は福利厚生にも注目しよう
派遣社員が受けられる福利厚生について説明してきました。法定福利厚生はどの企業でも受けることはできますが、法定外福利厚生は企業によって様々です。
福利厚生だけが全てではありませんが、給与とは別の報酬制度と考えれば福利厚生も決して無視はできないでしょう。自身のモチベーションに繋がるような福利厚生や、ユニークな福利厚生を提供しているかなども、派遣会社を選ぶ際にチェックしてみてください。