近年、インターネット通販の需要拡大に伴い注目を集めている物流業。特に新型コロナウイルスの感染拡大によって、外出が制限され多くの人がインターネット通販を利用しました。物流が止まってしまっては、我々の生活に大きな影響を及ぼすため生活基盤と言っても過言ではありません。
今回のコラムでは、物流業に興味がある方向けに、物流業の仕事内容や必要なスキル、やりがいなどを詳しく解説します。
物流業界が直面する「2024年問題」
最近ではテレビなどのメディアでも取り上げられていることから、2024年問題という言葉を聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。物流業の仕事について説明する前に、知っておかなければいけない「2024年問題」について解説します。
2024年問題とは、2024年4月1日から働き改革関連法によって運送・物流業に年間の残業時間が制限されることによって起こり得る様々な問題の総称です。働き方改革関連法は業界ごとに順次施行されており、2024年には運送・物流業と建設業に施行されます。
具体的には、年間の時間外労働時間が960時間に制限されるものであり、長時間労働が慢性化している物流業界の労働環境を改善することが目的です。しかし、残業時間が制限されることによって様々な問題が発生することが予想されます。残業時間の制限によって起こり得る代表的な問題を次にまとめます。
- 物流コストの高騰
- ドライバーの収入減少
- 運送会社の利益減少
これらの問題が発生することにより、物流業だけでなく社会全体に大きな影響を及ぼすことになります。近年は物価上昇が国民の生活をひっ迫していますが、さらなる物価高を招き、今まで以上に生活が苦しくなることが予想されています。
物流業界の仕事内容
物流業界の中には様々な職種があります。物流業の主な仕事内容は次のようになっています。
- 流通加工作業
- 梱包・包装作業
- 荷役作業
- 輸送作業
- 設備・物品管理作業
- 輸送・在庫管理作業
流通加工作業
流通加工作業とは、商品を出荷する前の最後の仕上げを行う工程のことです。生鮮食品の二次加工や小分け包装、値札付けなどが流通加工にあたります。
流通加工を施すことによって、商品の完成度が高まり顧客満足度が上がります。商品を生産する工場で全て完結するものもありますが、倉庫や物流センターなどで流通加工を施すことも多いです。
梱包・包装作業
出荷できる状態になった商品を、ダンボールやパレットなどの梱包材に詰めて配送可能な状態にする仕事が梱包・包装作業です。製品をただ詰めるだけでなく、ラッピングを施したり、荷物がダンボールの中で動かないように固定したりなど、商品によって梱包の仕方が異なります。
梱包状態が悪ければ運送途中で商品が壊れてしまったり、見た目が悪くなって顧客満足度が低くなってしまったりするため、責任のある作業だといえます。届いた製品をお客様が手にしたとき、箱を開けて喜ぶ姿を想像しながら丁寧に作業することが大切です。
最終的な検品やシール貼り作業なども、梱包・包装作業の中に含まれることがあります。
荷役作業
荷役作業とは、フォークリフトやクレーン、コンベアなどの荷役運搬機械を用いて輸送機器に荷物を出し入れする作業のことをいいます。荷役運搬機械を操作するには、専門資格を取得する必要があるため、誰しもが就ける仕事ではありません。
その反面、資格を持っていれば従事することができ、人材も不足しているため優遇されやすい職種でもあります。重い荷物や大きい荷物を運ぶ作業では、操作を誤ってしまうと大きな事故を招く可能性があるため、責任の大きな仕事です。
輸送作業
物流業と聞いて皆さんが思い浮かべるのは、トラックドライバーなどの輸送作業ではないでしょうか。倉庫や工場から別の拠点へ荷物を運んだり、直接お客様のもとへ商品を届けるのが輸送作業です。
物流業の中でも特に労働時間が長く、過酷な労働環境で働いている印象が強いかもしれません。しかし、商品を直接お客様へ届ける役割を担っているため、お客様から感謝の言葉をいただいたときには大きなやりがいを感じることができるという魅力もあります。
設備・物品管理作業
設備・物品管理作業とは、倉庫内にある設備が正常に作動しているか、物品の保管状態は適切かを管理する作業です。出荷する商品の品質を保つため、設備や保管状態の管理はとても大切な役割を担っています。
特に生鮮食品を扱う倉庫では、適切な温度・湿度で保管しなければ商品を腐らせてしまいます。出荷することができないとお客様へ迷惑をかけたり、ダメになった商品の代金を弁償する必要が出てきます。
重ねてはいけない荷物の上に荷物を置いていると、中身が壊れてしまう可能性があるため、荷物の保管状態も気にかけなければいけません。商品の品質管理を担う重要なポジションであるといえます。
情報管理作業
情報管理作業とは、物流コストや輸送状態、物品の在庫などを管理する仕事です。物流全体の効率化やコスト削減を担う重要な役割であり、物流業の「脳みそ」といえるポジションです。
管理作業には在庫管理システムや輸送管理システムなど様々なシステムが導入されているため、それらを使いこなす必要があります。情報管理作業が適切に行われていれば、お客様や関係各社とのトラブルを防げるだけでなく、物流コストを削減して自社の利益を拡大することにも繋がります。
物流業界のやりがい
物流業で働く上では、大変なことも多いですが次のようなやりがいもあります。
- 人々の生活を豊かにしている
- お客様から直接感謝される
人々の生活を豊かにしている
冒頭でも説明しましたが、物流業の仕事は多くの人々の生活を豊かにしています。物流が正常に動作しなければ、私たちの生活に大きな混乱を招くことになります。
今の時代、好きな場所で荷物を受け取れるようになったり、通販で商品を買えば翌日には荷物が届いたりすることが当たり前になっています。しかし、これらの当たり前は物流業の現場で働く様々な人の努力によって成り立っています。物流業の支え無くして、今日の便利な生活は成り立たないと言っても過言ではありません。
お客様から直接感謝される
荷物を直接お客様へ届ける輸送作業の方は、お客様から直接「ありがとう」という声をかけてもらった経験もあるのではないでしょうか。お客様から直接感謝されることは、仕事をしているうえで大きな喜びを覚える瞬間の1つです。
仕事に慣れてくると、何のために仕事をしているのかわからなくなってしまう時期も訪れます。そんなときに、お客様から直接感謝を伝えられることで、改めて自身の仕事の大切さを認識でき、「また頑張ろう」と活力が湧いてくるでしょう。
物流業界が向いている人の特徴
物流業で働きたいと考えている人の中で、「自分には向いているのかな」と気になる方も多いと思います。以下のような特徴を持っていれば、物流業で働くのに向いているといえるでしょう。
- 人々の暮らしを陰から支えたい人
- 丁寧で正確に仕事ができる几帳面な人
- 長時間の運転が好きで楽しいと感じる人
人々の暮らしを陰から支えたい人
物流業の仕事は決して目立つようなものではありません。しかし、物流業がなければ生活が成り立たなくなってしまう人が多く出てしまうとても大切な仕事です。
物流業であれば消費者とも比較的距離が近く、どのようなポジションでも喜ぶお客様の姿が想像できるでしょう。たとえ自分の仕事は目立たなくても、社会で暮らす人々の生活を豊かにしたいと考えている人は、物流業で働くことに向いています。
丁寧で正確に仕事ができる几帳面な人
物流業で取り扱う商品は全て最終的にお客様へ届きます。雑に扱っていると商品にキズがついたり、顧客満足度が下がったりと様々な人に迷惑をかけてしまいます。
自分にとっては大量に溢れている物品の1つかもしれませんが、お客様にとってはその商品が全てです。丁寧で正確に商品を扱うことができる几帳面な性格の方は、物流業に向いているといえます。
長時間の運転が好きで楽しいと感じる人
フォークリフトオペレーターやトラックドライバーなどは、勤務時間のほとんどを運転に費やすことになります。長時間の運転が好きでなければ苦しく感じてしまう可能性があります。
しかし、長時間の運転が楽しいと感じる人にとっては天職かもしれません。好きなことを仕事にできるのは誰もが憧れる働き方でしょう。長時間の運転が苦にならず、楽しいと思える人は物流業で働くことに適しています。
物流業界で活かせる資格
物流業で活躍するためには、専門的な資格を取得することをおすすめします。以下の様な資格を取得しておけば、貴重な人材として職場で重宝されるかもしれません。
中型・大型自動車免許
トラックドライバーとして活躍したい場合、必須になるのが中型・大型自動車免許です。普通自動車免許でも、車両総重量が5トン未満(法改正前に取得した方は8トン未満)の車両を運転することは可能です。しかし、多くの運送会社では4トン車から給料が高くなる傾向があるため、取得することをおすすめします。
免許の取得には、年齢や免許取得歴などの条件がありますが、待遇面や仕事の幅を考えると取得しておいた方が活躍できるでしょう。
フォークリフト運転免許
荷役作業で最も一般的で、様々な現場で活躍できるのがフォークリフトの運転免許です。正式には「フォークリフト運転技能講習修了」といい、最大荷重が1トン以上のフォークリフトを運転する場合は必須の資格です。
フォークリフトを操作する役割をフォークリフトオペレーターといい、棚から荷物を降ろしたり、トラックに荷物を積み込こんだり、荷役作業を担当することになるでしょう。フォークリフトオペレーターについて気になる方はこちらの記事を参考にしてください。
フォークリフトオペレーターの仕事内容は?給与や将来性も徹底解説
玉掛け・クレーン技能講習
フォークリフトで運搬することが難しい荷物は、クレーンを使用して運搬することがあります。クレーンを使用するためには、「玉掛け技能講習」と「床上操作式クレーン運転技能講習」の資格を持っていなければいけません。
床上操作式クレーンとは、簡単に言えば天井クレーンのことで、工場や倉庫の天井に設けられたレールを走行するクレーンのことです。単にクレーンを操作するだけであれば、床上操作式クレーン運転技能講習を修了すれば操作することができます。
しかし、クレーンで荷物を運ぶためには、荷物にチェーンやワイヤーを掛ける必要があります。この作業を「玉掛け作業」と呼び、荷物の重量や形によって適切な玉掛け用具を選ばなければなりません。玉掛け作業を行うためには、玉掛け技能講習を修了する必要があるため、床上操作式クレーン運転技能講習と併せて取得することをおすすめします。
倉庫管理主任者
倉庫管理主任者とは、倉庫内で火災や事故などが起きないように適切に管理するための資格です。倉庫業法では、倉庫管理主任者がいなければ倉庫業を営むことができないと定められているため、物流業には欠かせない資格といえます。
倉庫管理主任者の業務内容は、倉庫業法によって定められており、施設管理や災害防止管理だけでなく、現場従業員の研修に関する業務も倉庫管理主任者の役割です。そのため、倉庫管理主任者の資格を取得するためには、一定基準以上の実務経験が必要とされています。
物流業界で働いて人々の生活を支えよう
物流業の仕事内容ややりがいについて解説してきました。2024年問題という重要な課題を抱えている物流業ですが、人々からの需要は高く、やりがいのある職業です。
専門的な資格を取得すれば貴重な人材として重宝されることもでき、一般的な作業者よりも高収入を目指すこともできます。こちらの記事を参考にして、物流業への就職・転職を検討してみてください。