工場の生産活動に関わる業務全般の統制を担う生産管理。生産活動の司令塔としての役割を持つやりがいの大きい仕事であり、その幅広い業務の全容を詳しく知らないという方も多いのではないでしょうか。

今回のコラムでは、工場における生産管理の仕事内容について詳しく解説していきます。生産管理に向いている方の特徴も紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。

生産管理とは

生産管理とは、工場の経営方針に従って生産活動を計画、統制する総合的な管理活動のことを指します。多くの工場では、QCDと呼ばれる以下の3つの要素を最適化するために生産管理専門の部署が設けられています。

  • Quality(品質)
  • Cost(コスト)
  • Delivery(納期)

生産活動全体の指揮を執り、在庫や工程、原価をしっかりと管理することでコストパフォーマンスや製品の質の向上を目指します。工夫次第では生産効率を高めて工場全体の利益を拡大させることもできる、大きなやりがいのある仕事です。
具体的な仕事内容については、この後詳しく解説していきます。

生産管理の仕事内容

機械オペレーターの手元の画像

生産管理の主な仕事内容として、以下の6点が挙げられます。

  • 需要予測
  • 生産計画
  • 生産実施・統制
  • 品質管理
  • 在庫・原価管理
  • 設備保全・メンテナンス

需要予測

生産管理において最初に行われる業務である需要予測。自社製品の受注量を予測することを指します。

  • 過去の受注データ
  • 取引先の発注予定情報
  • 季節変動
  • 市場の状況

このようなデータを元に、製品を作る量や仕入れる部品の数などの予測を算出します。様々なデータを活用して、需要をできる限り正確に予想することが求められます。

需要予測より実際の受注量が少ないと、大量の在庫が発生して収益が悪化してしまうでしょう。需要予測を上回る受注があると、在庫が不足して本来生産できるはずだった製品を作れず、利益を得る機会を損失してしまいます。

需要予測は生産計画や生産活動の土台となるだけでなく、工場全体の利益を左右する責任の大きい業務だと言えます。

生産計画

  • 資材量
  • 生産期間
  • 設備
  • 人員
  • コスト

上記のような情報を整理して、納期に間に合うよう生産活動を計画します。納期までに確実に製品を出荷できるよう、スケジュールや人員配置を調整したり、4Mと呼ばれる以下の要素がいつ、どれぐらい必要になるかを明確にしたりします。

  • Man(人)
  • Machine(設備)
  • Method(方法)
  • Material(原材料)

既存の人材や設備で問題なく進められる計画を立てるためには、現場の状況を把握することが欠かせません。様々な部署と綿密にコミュニケーションを取り、連携できる体制を構築しておくことが大切だと言えます。

生産効率の向上やコスト削減を目指して改善活動を検討することも、生産計画における重要なテーマの1つ。工程を減らす方法を検討したり、資材を安価に入手できる最適な仕入れ先を見極めたりすることも必要です。

生産実施・統制

生産計画に沿って実際に生産活動を行い、統制します。工場で日々生産活動を行っていると、突然以下のような事態が発生することも少なくありません。

  • 機器が故障してラインが止まってしまった
  • 体調不良やケガで欠員が発生した
  • 追加の受注が入った

そういったケースに対処する中で生産計画に大幅な遅れが発生してしまうと、納期を守れず取引先からの信用を失ったり、莫大なコストが発生して利益が失われたりすることも。工場の経営に大きな影響が発生してしまうでしょう。

予期せぬトラブルが生じても臨機応変に適切な対応を行い、生産計画を遵守できるようコントロールすることが重要です。

品質管理

製品の品質を検査して、不良品が混ざっていないかを確認します。不良品が見つかった場合は、再発を防止するため不良品が発生した日時や工程を調査し、原因を徹底的に解明します

万が一不良品が誤って市場に出荷されて健康被害や事故が起こってしまうと、工場の社会的信頼が失われ、取り引きがなくなり経営が立ち行かなくなってしまうでしょう。ユーザーの安全や工場の信用を守る上で、品質管理の重要性は非常に高いと言えます。

  • 現状を踏まえた業務改善により不良品の発生を未然に防ぐ
  • 工程をシンプルにするシステムを導入する
  • 生産活動に携わる人材を育成する

規格通りに商品を出荷させるために大切な上記の仕事も、品質管理の役割とされることが多いです。生産活動の質を高めるためのあらゆる業務が生産管理の役割であると考えてよいでしょう。

在庫管理

在庫管理とは、日々在庫数を把握し、生産計画を踏まえて調節することです。

工場にとって、在庫は利益を生み出す資産であり、在庫を効率良く消費することは工場の利益に直結します。

適切な在庫数は製品の需要や工場の経営状態によって異なり、はっきりとした正解がないことが在庫管理の難しさの1つです。製造ライン全体や市場、自社の状況を見渡せる広い視野を持つことが求められます。 

原価管理

原価管理とは、より多くの利益を得られるように製造にかかる原価の管理を行うことを指します。日々原価を管理することで、無駄なコストが発生しているポイントを把握したり、今後発生する原価を予測したりすることが可能です。

発生した原価を把握するだけでなく、適切な原価と実際の値の差を踏まえた改善活動の実施も求められることから、原価管理はコストマネジメントと呼ばれることもあります。

現状に満足することなく「より良くする方法はないか」と問い続け、問題を見つけていく課題解決力が求められる業務だと言えます。

設備保全・メンテナンス

生産活動を支える設備が正しく動くかどうかを確認し、必要に応じてメンテナンスを実施します

1つの設備の故障や不具合によって作業がストップしてしまうと、様々なロスが発生してしまいます。

  • 生産活動が止まることによる時間的なロス
  • 設備を修理することによる金銭的なロス
  • 故障の直前に作られていた製品が不良品になった場合の資源ロス

こうしたロスは工場で得られたはずの利益が失われる、納期に間に合わないといった事態に繋がりかねません。設備保全やメンテナンスは設備の故障を防ぎ、ロスや滞りのない生産活動を進める上で欠かせない仕事です。

生産管理の活躍の場とは

  • 自動車
  • ゴム製品
  • 家電
  • 精密機器
  • 化学製品
  • 食品
  • 医薬品

生産管理は製造業に携わるほとんどの工場において必要とされる仕事であるため、上記のような幅広い業種の工場で活躍することができます

  • 製品の需要や受注量を予測するために営業担当者と話し合う
  • 製品ができるまでの構造を担う設計の担当者に相談して工程を変更する
  • 納期の調整をするために営業担当者と生産責任者の間を取り持つ

さらに、上記のように異なる部署の担当者と協力して業務にあたらなければならない場面が多くあります。生産管理の担当者は、製造現場というよりも開発部門に近いポジションで働くことが多いです。

生産管理に向いている人の特徴

生産管理に向いている人の特徴として、以下の4点が挙げられます。

  • ものづくりに興味がある
  • 広い視野で物事を見れる
  • 臨機応変に対応できる
  • コミュニケーションスキルが高い

生産管理にはものづくり全体の流れを深く理解し、改善していくことが求められます。生産活動の流れや工場内にある設備の役割といった膨大な量の知識を身に付けて、幅広い業務にあたらなければなりません。

そのため、ものづくりに強い興味がある方や、広い視野を持ち、以下のような様々な観点から客観的に物事を見れる方に向いている仕事だと言えます。

  • 現場の従業員が作業しやすい工程であるか
  • 適切な在庫数を維持できているか
  • 納期を遵守できるか
  • 故障リスクを抑えられているか
  • 無駄なコストが発生していないか

さらに、不測の事態に直面した際に最適な判断を下す対応力や、他部署と協力し、時にはスケジュールや方針について交渉や説得も行うためのコミュニケーション力も欠かせません。

生産管理は工場の司令塔

工場全体の生産活動を指揮する生産管理は、工場の信用や経営状態を左右するため大きな責任を伴います。

同時に、生産活動のコストパフォーマンスや製品のクオリティの改善に尽力できるやりがいも大きいです。ものづくりに貢献したいという意欲のある方にとって、楽しさを見出せる仕事だと言えるでしょう。

この記事を読んで興味を持った方は、ぜひ生産管理として工場の司令塔を目指してみてはいかがでしょうか。