社員と同じ仕事を任されて、「私は派遣なのに…」と不満に思う人は少なくありません。責任が重くなれば、給料に見合わないと感じることもあるでしょう。

派遣先の社員と同じ仕事をしている場合、待遇も同じにしてほしいと思うのは当然です。そこで今回は、社員と同じ仕事をする派遣社員が不満に感じるポイントを解説するとともに、気になる給料面についてもまとめていきます。

派遣社員が不満を感じやすいポイント

ここでは、派遣社員が不満を感じやすいポイントを解説していきます。よくあるケースを把握し、自分の働き方に問題がないかチェックしてみましょう。

業務の量が多い

業務量が多いと感じることは、派遣社員が不満を感じやすい原因になります。とくに、契約にない仕事を任されている場合や、正社員と変わらない量の仕事をこなしている場合に不満を抱きやすくなるでしょう。

また、長く働いている派遣社員は、社員の業務を手伝ったり、代わりに対応したりすることも珍しくありません。しかし、一般的に派遣社員のほうが正社員より収入が少ないため、「仕事量が給料に見合っていない」と思えば、より不公平感が生まれます

スキル以上のことを求められる

派遣社員は、契約内容に準じて業務にあたるため、基本的には契約範囲外のスキルを求められることはありません。しかし、中には当然のように高度なスキルを要求されたり、業務のために新たなスキルを習得するよう依頼されたりするケースもあります。

本来であればこのような求めに従う義務はありませんが、納期などによって、やらざるを得ない状況になることもあるでしょう。そうなると、プレッシャーやストレスを抱えやすくなり、モチベーションに悪影響を与えかねません。

新人の指導を任される

同じ派遣先に長くいると、新人や後輩の指導を任されることがあります。しかし、自分の仕事に加えて新人教育を行うのは負担が大きく、ストレスの要因になりかねません。

また、教育を担当しているのに、評価や役職に結びつかないケースも多く、理不尽さを感じることもあるでしょう。このほか、派遣社員が教育係になる場合、立場の不明確さから指導が難航するといったトラブルが不満につながります。

残業や休日出勤が多い

残業や休日出勤が多すぎる、または社員と同じ時間の残業を課せられるといった状況では、不満を感じて当然です。とくに、自由な働き方やプライベートとのバランスを重視して派遣を選んだ人は、派遣社員でいるメリットがなくなってしまいます。

しかし、時間外労働を断った場合に考えられる契約更新への影響を心配し、受け入れてしまう人は少なくありません。また、派遣が残業している中、社員が定時で帰るような職場では、「損している」と感じることもあるでしょう。

派遣社員と正社員に仕事の区別はない

社員と同じ仕事を任されると、「派遣なのになんで?」と思うかもしれませんが、法律では社員と派遣社員の業務内容については区別されていません。

そのため、ベテラン派遣社員が新人教育をしたり、業務において社員と同じスキルを求められたりといったことが起きやすくなります。とくに、「派遣社員も自社の一員として働いてほしい」という意識が強い場合、正社員と派遣社員の区別は曖昧になりがちです。

しかし、派遣社員の業務内容は契約で決められているため、明らかに契約範囲外の業務を任されている場合は、派遣会社に相談する必要があるでしょう。

派遣にさせてはいけない業務

派遣社員が担当する業務には、法律や契約上の制約があります。これを無視すると違法行為やトラブルの原因になりかねません。

派遣社員も、自分がしてはいけない業務を把握し、トラブルに巻き込まれないようにしましょう。

契約にない業務

派遣社員は、派遣契約書に記載された業務内容に基づいて働くのが一般的です。そのため、契約外の業務を指示することは、労働基準法や派遣法に抵触する可能性があります。

たとえば、以下のようなケースが該当するので確認しておきましょう。

  • 人手不足を理由に、契約書に記載されていない部署の作業を急遽依頼される
  • 入力業務をする契約のはずが、資料作成や分析、プレゼンテーションなど高度な作業を求められる
  • 新人教育やプロジェクトリーダーとしての役割を押し付けられる など

派遣社員は正社員の代替ではないため、こうした業務を負担させることは不適切です。これらの行為は契約違反になるため、該当する場合は派遣会社に相談しましょう。

法律で禁止されている業務

派遣法では、派遣社員が担当できない業務が明確に定められています。以下のような業務は、派遣社員は行えません。

  • 港湾運送業務:荷役作業やはしけ運送などの港湾運送業務
  • 建設業務:建築や土木における工作物の建設や改造、修理、解体などの作業
  • 警備業務:公共施設や駐車場などでの盗難、雑踏の警戒、または事故発生の防止を行う業務
  • 医療業務:医師、歯科医師、看護師などの業務(紹介予定派遣、産休労働者の代替などの場合は例外)
  • 士業:弁護士や税理士、社会保険労務士、司法書士などの士業(業務の一部は条件次第で派遣が可能)

これらは、安全性や専門性の観点から、派遣業務が禁止されています。

社員と同じ仕事をしたら給料も同じになる?

同一労働同一賃金の考えから、「正社員と同じ業務をすれば同じ給料がもらえるのでは?」と思うことがあるでしょう。しかし、同じ仕事をしているというだけでは、同じ給料にならないので注意が必要です。

同一労働同一賃金

2020年に改正された労働者派遣法により、派遣社員にも「同一労働同一賃金」の原則が適用されました。これは、雇用形態による不合理な待遇差を解消することを目的にした取り組みです。

そのため、正社員と同等の仕事をしている場合には、給与アップや福利厚生の利用が期待できるでしょう。派遣会社は、次のいずれかの方法で、派遣社員の待遇を検討します。

派遣先均等・均衡方式 労使協定方式
同じ業務内容、配置の変更範囲、成果などを鑑みて派遣先の正社員の賃金額を参考に決定する その地域の同じ職種に従事する一般労働者の平均的な賃金額を用いて決定する

ただし、実際の適用には派遣会社や派遣先の意識、対応が大きく影響するため、希望通りの結果にならないケースも多いです。

給与アップは簡単ではない

同一労働同一賃金は、あくまでも「不合理な待遇差の解消」が目的のため、待遇差が合理的であると判断されれば待遇は今のままです。

たとえば同じ仕事内容でも、正社員には納期やトラブル対応などの責任があって、派遣にはその責任がない場合、待遇の差は妥当と判断されるでしょう。そのため、社員と同じ仕事をしているというだけでは、給料が上がる保証はありません。

待遇に不満がある場合は派遣会社に相談

「どう考えても社員と同じ責任を負っている」「待遇に納得できない」という場合は、派遣会社に相談してください。担当者に状況を説明し、待遇の改善を派遣先に提案してもらいましょう。

多くの仕事を任されるというのは、信頼されている証拠でもあります。あなたの仕事ぶりによっては、給与アップにつながるかもしれません。

このほか、転職を考えている場合には、更新せずに新しい派遣先を探してもらうのも一案です。より良い待遇で働けるよう、さまざまな職場を検討してみましょう。

社員と同じ仕事でつらいと感じたら派遣会社に相談しよう

法律上、社員と派遣には業務の区別がないため、派遣社員が正社員と同じ仕事を任されるケースは珍しくありません。

ただし、契約にない業務や残業を指示された場合には、契約違反になるため断ることも可能です。もし断れないのであれば、派遣会社に相談しましょう。

また、社員と同じ仕事をしても同じ給与になる可能性は低いですが、派遣会社に交渉することで時給アップにつながることはあります。