老後のお金について調べていると、「iDeCo(イデコ)」という制度を目にすることがあります。ただ「派遣社員でも加入できるの?」「派遣先や派遣会社が変わったらどうなる?」と、自分の働き方でも利用できるのか分からない方もいるでしょう。

派遣社員も、条件を満たせばiDeCoに加入できます。掛金が所得控除の対象になるなど税制上のメリットがある一方、原則として60歳まで資産を引き出せない点などには注意が必要です。

本記事では、派遣社員がiDeCoを利用する場合の加入条件や掛金の上限、2026年12月から始まる制度改正について解説します。メリットや注意点、派遣会社が変わったときの手続きについても紹介するので、老後の資産形成を考えている方は参考にしてください。

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iDeCoとは自分で老後資金を準備する私的年金制度

iDeCoは「個人型確定拠出年金」と呼ばれる、自分で老後資金を積み立てる私的年金制度です。自分で掛金を拠出し、定期預金や投資信託などの中から商品を選んで運用します。積み立てた資産は、原則として60歳以降に年金または一時金として受け取ります。

将来受け取れる金額があらかじめ決まっているわけではなく、積み立てた掛金と運用結果によって受取額が変わるのが特徴です。掛金は月5,000円から1,000円単位で設定できます。ただし、加入者の国民年金の区分や勤務先の企業年金の有無などによって、拠出できる上限額が異なります。

派遣社員もiDeCoに加入できる

iDeCoの加入資格は、正社員・派遣社員といった雇用形態だけで決まるものではありません。現在は、基本的に国民年金の被保険者が対象となり、派遣社員も条件を満たせば加入できます。派遣社員の場合は、派遣会社で厚生年金に加入しているかどうかなどによって、国民年金上の区分が異なります。

  • 派遣会社で厚生年金に加入している:第2号被保険者
  • 厚生年金に加入せず、自分で国民年金保険料を納めている:第1号被保険者
  • 配偶者の扶養に入り、第3号被保険者となっている:第3号被保険者

例えば、派遣会社の社会保険に加入し、給与から厚生年金保険料が引かれている方は、基本的に第2号被保険者です。なお、第1号被保険者で国民年金保険料の免除を受けている場合など、iDeCoに加入できないケースもあります。加入資格には例外もあるため、自分がどの区分に当てはまるか分からない場合は、加入を検討している金融機関などで確認しましょう。

派遣社員の厚生年金について詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてみてください。

派遣社員は厚生年金に加入できる?加入のメリットと注意点

派遣社員はいくらまでiDeCoに掛金を出せる?

iDeCoの掛金には上限があり、国民年金の被保険者区分や企業年金の加入状況によって金額が変わります。また、2026年12月には拠出限度額の引き上げが予定されているため、現在の上限と改正後の上限を分けて確認しておきましょう。

2026年11月までの掛金上限

2026年11月までの主な掛金上限は、次のとおりです。

  • 第2号被保険者・企業年金なし:月額2万3,000円
  • 第2号被保険者・企業年金あり:原則として月額2万円が上限
  • 第1号被保険者:月額6万8,000円
  • 第3号被保険者:月額2万3,000円

企業年金に加入している第2号被保険者の場合は、iDeCoの掛金と企業型DCの事業主掛金、確定給付企業年金などの掛金相当額との合計が月額5万5,000円の範囲内となるため、実際に拠出できる金額が2万円より少なくなる場合もあります。

また、第1号被保険者の月額6万8,000円は、国民年金基金の掛金や付加保険料などとの共通枠です。派遣会社に企業年金があるか分からない場合は、派遣会社の担当部署などに確認してみましょう。

2026年12月から掛金の上限が引き上げられる

2026年12月1日から、iDeCoの拠出限度額が引き上げられます。2026年12月分の掛金から新しい上限が適用され、毎月払いの場合は2027年1月の口座引き落とし分にあたります。改正後の主な上限額は次のとおりです。

  • 第2号被保険者・企業年金なし:月額6万2,000円
  • 第2号被保険者・企業年金あり:企業年金等と合わせて月額6万2,000円まで
  • 第1号被保険者:月額7万5,000円
  • 第3号被保険者:月額2万3,000円

特に、企業年金のない会社で厚生年金に加入している方は、上限が月額2万3,000円から6万2,000円へ引き上げられます。企業年金がある場合は、月額6万2,000円から企業型DCの事業主掛金や確定給付企業年金などの掛金相当額を差し引いた金額が、iDeCoの上限となります。

第1号被保険者については、iDeCoと国民年金基金などを合わせた上限が月額7万5,000円へ引き上げられます。第3号被保険者の月額2万3,000円は変更されません。

加入できる年齢の範囲も広がる

2026年12月からは、iDeCoの加入可能年齢についても見直されます。一定の条件を満たす60歳以上70歳未満の方も、iDeCoへの加入や掛金の拠出を続けられるようになります。ただし、老齢基礎年金やiDeCoの老齢給付金をすでに受給している場合などは対象になりません。

年齢だけで一律に70歳まで加入できるわけではないため、60歳以降の利用を考えている場合は、自分が加入条件を満たすか確認することが大切です。

派遣社員がiDeCoを利用するメリット

派遣社員がiDeCoを利用するメリットは、老後資金を積み立てられることだけではありません。掛金の拠出時から受け取り時まで、税制上の優遇を受けられることも大きな特徴です。

掛金の全額が所得控除の対象になる

iDeCoで支払った掛金は、全額が「小規模企業共済等掛金控除」の対象になります。掛金の分だけ課税対象となる所得が少なくなるため、所得税や住民税の負担を軽減できる場合があります。

例えば、毎月1万円を積み立てると年間の掛金は12万円です。所得税率を5%、住民税率を10%として単純計算すると、年間で約1万8,000円の税負担が軽くなる計算になります。

しかし、実際の軽減額は所得や各種控除などによって異なります。また、もともと所得税や住民税がかかっていない場合は、掛金の所得控除による節税効果はありません。

運用で得た利益が非課税になる

通常、投資信託などの金融商品で得た利益には税金がかかりますが、iDeCoの制度内で得た運用益は非課税で再投資されます。長期間運用する場合は、利益に税金がかからない状態で再投資できることが、資産形成を続けるうえでのメリットになります。

派遣先が変わっても資産を引き継げる

iDeCoは個人で加入する制度のため、派遣先が変わったからといって、それまで積み立てた資産がなくなることはありません。同じ派遣会社に在籍したまま派遣先だけが変わり、国民年金の被保険者区分や企業年金の加入状況などに変更がなければ、iDeCoについて特別な手続きが必要にならないのが一般的です。

派遣会社そのものを変えた場合や、退職して国民年金の区分が変わった場合などは届出が必要になることがありますが、必要な手続きを行えばiDeCoでの資産形成を続けられます。

受け取るときにも税制上の控除がある

積み立てた資産を受け取る際にも、税負担を軽減する仕組みがあります。一時金として受け取る場合は「退職所得控除」、年金として受け取る場合は「公的年金等控除」の対象になります。

しかし、退職金などほかの所得との関係によって実際の税額は変わります。受け取り方を検討する際は、自分の退職金や公的年金なども含めて考えるようにしましょう。

派遣社員がiDeCoを始める前に知っておきたい注意点

iDeCoには税制上のメリットがある一方、一般的な預貯金とは異なる特徴もあります。特に、途中で自由に引き出せないことや手数料がかかることは、加入前に理解しておきたいポイントです。

原則として60歳まで引き出せない

iDeCoで積み立てた資産は、原則として60歳になるまで自由に引き出せません。急な出費があったからといって、通常の預金のように途中で解約して使うことはできません。

そのため、毎月の生活費や急な出費に備えるお金とは分けて考える必要があります。また、60歳から老齢給付金を受け取るには、60歳までの通算加入者等期間が10年以上必要です。10年未満の場合は、期間に応じて受け取りを開始できる年齢が遅くなります。

加入や資産管理などに手数料がかかる

iDeCoを利用する際には、加入時や掛金の納付時、資産の管理などに手数料がかかります。国民年金基金連合会へ支払う手数料としては、新規加入時などに2,829円、現在は掛金を納付するたびに105円がかかります。

この加入中の手数料は、2027年1月26日の口座引き落とし分から月額120円へ変更される予定です。このほか、資産を管理する事務委託先金融機関や、申し込み先となる運営管理機関の手数料がかかる場合があります。投資信託を選べば、商品ごとの信託報酬も必要です。金融機関によって商品や手数料が異なるため、口座を選ぶ際は取扱商品だけでなく費用も確認しましょう。

運用商品によっては元本を下回ることがある

iDeCoでは、定期預金などの元本確保型商品だけでなく、値動きのある投資信託も選べます。投資信託は運用によって資産が増える可能性がある一方、市場の状況によっては元本を下回ることもあります。

一方、元本確保型の商品を選んでも、利息より各種手数料の負担が大きければ、実質的に資産が目減りする可能性があります。運用商品を選ぶ際は、受け取りまでの期間や値動きに対する考え方、商品にかかる費用などを確認することが大切です。

掛金額の変更には回数の制限がある

iDeCoの掛金額は、原則として1年に1回変更できます。そのため、収入に対して無理のある金額を設定すると、家計の負担になる可能性があります。

一方で、掛金の拠出自体を止めることは可能です。拠出を止めて、それまで積み立てた資産の運用だけを続ける「運用指図者」になる方法もあります。派遣社員は契約終了や勤務日数の変化などによって収入が変わることもあるため、掛金の上限だけを見るのではなく、継続して拠出できるかどうかも考えて金額を決めましょう。

所得税や住民税がかからない場合は所得控除の効果がない

扶養の範囲内で働いている場合など、もともと所得税や住民税がかかっていなければ、iDeCoの掛金を所得から控除しても税負担は軽くなりません。iDeCoには運用益が非課税になるなどほかの特徴もありますが、「掛金によってどのくらい税金が軽くなるか」は人によって異なります。

また、iDeCoは原則60歳まで引き出せないため、必要に応じて預貯金やNISAなど、目的の異なる資産形成方法と比較して検討するとよいでしょう。

派遣社員がiDeCoを始めるまでの流れ

iDeCoは、証券会社や銀行などの運営管理機関を通して申し込みます。金融機関によって取扱商品や手数料、サービス内容などが異なるため、比較したうえで選びましょう。

  1. iDeCoを取り扱っている金融機関を選ぶ
  2. 加入資格や掛金の上限を確認する
  3. 加入申し込みに必要な情報や書類を準備する
  4. 国民年金基金連合会による加入資格の確認を受ける
  5. 掛金額や運用する商品、配分を決める

以前は、会社員などがiDeCoへ加入する際に、勤務先が記入する「事業主証明書」が必要でしたが、2024年12月から原則として廃止されています。掛金を自分の銀行口座から支払う「個人払込」であれば、基本的に加入時の事業主証明書は必要ありません。

しかし、掛金を給与から天引きする「事業主払込」を希望する場合は、勤務先に対応してもらう手続きがあります。申し込み方法は金融機関によって異なり、オンラインで手続きできるところもあります。詳細は申し込み先の金融機関で確認してください。

派遣先や派遣会社が変わったらiDeCoの手続きは必要?

派遣社員の場合、「派遣先が変わった場合」と「雇用主である派遣会社が変わった場合」では、iDeCoへの影響が異なります。

派遣先だけが変わった場合

同じ派遣会社に雇用されたまま派遣先だけが変わり、厚生年金や企業年金の加入状況などに変化がなければ、通常はiDeCoの加入区分も変わりません。派遣先ではなく、雇用主である派遣会社の社会保険や企業年金の状況がiDeCoに関係するためです。

派遣会社を変えた場合

別の派遣会社へ転職した場合は、新しい勤務先の企業年金制度や、自分の国民年金の被保険者区分に変更がないか確認しましょう。

企業年金の加入状況が変わった場合などは、iDeCoの登録内容や掛金額の変更手続きが必要になることがあります。事業主払込を利用している場合は、勤務先の変更に伴う手続きも必要です。

退職して国民年金の区分が変わった場合

派遣会社を退職し、次の仕事に就くまで国民年金の第1号被保険者になった場合は、iDeCoについても被保険者種別の変更手続きが必要です。配偶者の扶養に入り、第3号被保険者になった場合も同様に変更手続きを行います。

転職先で企業型DCに加入する場合

派遣先で直接雇用されるなどして、転職先の企業型確定拠出年金(企業型DC)に加入する場合は、iDeCoの資産を企業型DCへ移すことができる場合があります。

一方、条件を満たせば企業型DCとiDeCoを併用できるケースもあります。どの手続きが必要になるかは転職先の制度によって異なるため、勤務先の担当部署とiDeCoを利用している金融機関へ確認しましょう。

仕事が変わったときは、「iDeCoに加入している」と新しい勤務先や金融機関へ伝え、被保険者区分や企業年金の状況に変更がないか確認することが大切です。

iDeCoの特徴を理解して自分に合った資産形成を考えよう

派遣社員でも、加入条件を満たせばiDeCoを利用できます。派遣会社で厚生年金に加入している方も、企業年金の状況などに応じた上限の範囲内で掛金を拠出できます。

また、2026年12月からは掛金の上限が引き上げられ、企業年金のない第2号被保険者の場合は月額6万2,000円まで拠出できるようになります。加入可能年齢についても、一定の条件を満たす60歳以上70歳未満の方へ対象が広がります。

一方で、iDeCoは原則として60歳まで資産を自由に引き出せず、手数料や運用による値下がりの可能性もあります。上限まで掛金を出す必要はないため、制度の特徴を理解し、生活費や急な出費への備えとのバランスを考えることが大切です。

派遣先だけが変わる場合はiDeCoへの影響がないケースが多いものの、派遣会社の変更や退職などで国民年金の区分・企業年金の加入状況が変わったときは、必要な手続きを確認しましょう。

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