派遣社員が退職を選択する理由はさまざまですが、正社員と違っていつでも退職できるわけではないので注意が必要です。退職の流れも正社員と異なるため、事前に手順を知っておくとよいでしょう。
このコラムでは、派遣社員の主な退職理由と、退職の流れなどについて解説しています。円満に辞めるためのコツもまとめているので、ぜひ最後までご覧ください。
派遣社員の主な退職理由は?

派遣社員が退職を選択する理由としては、主に以下の点が挙げられます。
- 業務内容が合わない
- 待遇が低い
- キャリアアップにつながらない
- 人間関係のトラブル
- やむを得ない事情がある
それぞれ詳しく見ていきましょう。
業務内容が合わない
派遣社員が退職を考える理由として多いのが、実際の業務内容が自分に合っていなかったというものです。派遣先の業務説明と実務にギャップがあるケースもあり、「思っていた仕事と違った」などのミスマッチも起きがちです。
また、自分のスキルや経験を十分に活かせない環境にモチベーションが下がる人もいるでしょう。単純作業の繰り返しや、やりがいを感じにくい業務にストレスを抱え、結果として早期退職に至ることも少なくありません。
待遇が低い
時給制で働く派遣社員にとって、待遇の低さは退職理由のひとつになります。同じ仕事をしていても、正社員との給与や福利厚生の格差が大きければ、不公平感を覚えることもあるでしょう。
とくに生活や家計にゆとりがないと、長期的に働くことは困難と感じやすく、より良い条件の職場を求めて退職を決断するケースが見られます。また、昇給の機会がほとんどないことも、将来への不安材料になります。
キャリアアップにつながらない
派遣社員の仕事は、即戦力としてのサポート業務が中心になりがちで、スキルアップやキャリア形成の機会が少ないことがあります。そのため、「このまま続けても将来的にプラスにならない」と感じ、転職や正社員を目指して退職する人も少なくありません。
とくに、若い世代や成長志向の高い人ほど、学びのある環境や責任のある仕事を求める傾向が強く、派遣の働き方に物足りなさを感じやすいです。
人間関係のトラブル
職場の人間関係に悩みを抱えて、退職を選ぶ派遣社員は珍しくありません。たとえば、次のような扱いを受けると、精神的に大きな負担になります。
- 派遣という立場から距離を置かれる
- 責任のない雑用ばかりを押し付けられる
- ハラスメントを受ける
- 上司や同僚とのコミュニケーションに問題がある
派遣社員は数か月単位で働くパターンが多く、これらのトラブルが改善されないまま更新時期を終えることになりがちです。その結果、契約更新の意欲を失い、そのまま退職という流れに至ります。
やむを得ない事情がある
退職理由の中には、本人の意思とは関係のない、やむを得ない事情も存在します。たとえば、次のような理由によって継続勤務が困難になるケースです。
- 家族の介護や育児
- 配偶者の転勤
- 派遣先のハラスメントが改善されない
- 本人の体調不良 など
こうした場合は、どれだけ職場が良好でも勤務の継続が不可能になるため、やむを得ず退職せざるを得ません。また、派遣先の業績悪化や業務縮小による契約打ち切りなども、労働者側の意図しない退職理由になります。
派遣社員は原則契約の途中で辞められない

前述のやむを得ない理由を除き、派遣社員は原則として契約期間の途中で辞めることはできません。
派遣社員は、基本的に「契約期間の満了まで働く」ことを前提として雇用されるのが一般的です。派遣先企業は、一定期間の労働力を確保するために派遣契約しており、急な退職は業務に支障をきたす可能性があります。
派遣社員側に辞めざるを得ない事情がある場合は、双方の合意によって途中終了が可能です。しかし、理解を得られない退職理由や相談もなく辞めるといった場合には、契約違反とみなされて今後の紹介が難しくなるでしょう。
【派遣】退職の流れ
派遣社員が退職を希望する場合は、まず派遣会社に連絡、相談するのが基本です。派遣社員は、派遣先ではなく派遣会社と雇用契約を結んでいるため、退職の意思も派遣元に伝えなければなりません。
原則として契約期間中は辞められないため、次回更新の意思を確認されるタイミングで申し出ると、スムーズに進められるでしょう。もし契約途中での退職を希望する場合は、続けられない理由を明確に伝える必要があります。
どうしても継続が不可能となれば、派遣会社から派遣先へ通知され、引継ぎや最終出勤日が決まります。このとき、派遣会社も辞めるのであれば登録解除ができますし、仕事を再開する可能性がある場合は、派遣会社に登録したままにしておくことも可能です。
派遣社員が円満に辞めるコツ

派遣社員は、基本的に契約期間の満了に伴って退職することが可能ですが、円満に辞めるためには、退職時の対応やタイミングが重要になります。
円満退社は今後の仕事紹介にも関わってくるため、コツを押さえておきましょう。
繁忙期や月末は避ける
退職時期を決める際は、職場の繁忙期や月末・月初といった業務が集中するタイミングを、できるだけ避けるようにしましょう。とくに、経理や事務職などでは月末月初に処理業務が集中しやすいため、その時期に辞めると周囲に負担をかけかねません。
あらかじめ職場の業務の流れを把握し、落ち着いた時期に退職することで、トラブルを防ぎ、良い印象で職場を去ることができます。また、派遣会社の担当者に伝える際も、忙しい時期や時間を避け、しっかり話せる時間を確保する必要があります。
しっかり引継ぎを行う
退職にあたり、後任者への引継ぎは責任を持って行いましょう。たとえば、以下のような点をまとめ、わかりやすい状態にしておくと後任者が困りません。
- 自分が担当している業務の流れ
- 注意点
- 使用する資料の所在 など
引継ぎが不十分だと、後任者や職場に負担がかかり、せっかく築いた信頼を失うことにもなりかねません。業務を円滑に継続できるように配慮することで、最後まで責任ある働き方ができたという評価につながります。
これらの評価は、次の仕事の紹介にも関わるため、丁寧に行っておきましょう。
貸与物の返却を忘れない
退職時には、パソコン、制服、社員証、セキュリティカードなどの貸与物をすべて返却する必要があります。
これらの返し忘れがあると、派遣元や派遣先の手間が増えるだけでなく、窃盗や横領に該当しかねません。場合によっては、実損金額に応じた損害賠償を請求される可能性もあります。
見落としがないよう、事前に貸与されたものをリストアップし、スムーズに返却できるよう整理しておきましょう。とくに、セキュリティ関連のアイテムやデジタルデバイスは、重要度が高いため注意が必要です。
正式に決まるまで周囲に伝えない
退職の意思が固まっていても、派遣会社との相談が終わり、正式な退職日が確定するまでは、派遣先の同僚や上司には話さない方が無難です。万が一辞めるという噂が広まると、業務に支障が出たり、周囲に無用な不安を与えてしまったりする可能性があります。
また、辞めると言っていたのにも関わらず継続するといった行為は、周囲に混乱を与えて不信感を抱かせる原因になります。信頼関係を保つためにも、まずは派遣元としっかり話し合い、手順に沿って正式に進めることが大切です。
【派遣社員】退職するなら円満に
派遣社員の退社理由には、職場の人間関係や業務のミスマッチなど、さまざまなものが挙げられます。原則として、契約期間満了のタイミングで辞めることになりますが、やむを得ない事情がある場合は、期間の途中でも退職が可能です。
派遣社員は、派遣会社と雇用契約を結んでいるため、退職を検討するにあたっては派遣会社に相談する必要があります。退職が決まったら、引継ぎや貸与物の返却を忘れずに行い、円満に辞められるよう心がけましょう。
トラブルなく退職することは、今後の仕事紹介に良い影響を与えます。