近年働くことに対する価値観の多様化が進み、終身雇用に固執しない、ワークライフバランスを重視するといった様々な考えが広く浸透してきました。そんな中、正社員という働き方にこだわらず、派遣社員として働くという選択が一般化しつつあります。
しかし、派遣社員として働く道を選ぶ20代のような若い世代に対して、「もったいない」「後悔する」といった声が多いのも事実です。派遣社員になることを検討している20代の方の中には、周囲の否定的な意見を聞いてためらっているという方も多いのではないでしょうか。
今回のコラムでは、20代で派遣社員になるのは本当にもったいないのかを詳しく解説するとともに、20代で派遣の道を選ぶことのメリットやデメリットについて紹介します。
目 次
20代で派遣社員になるのはもったいない?
「20代で派遣社員になるのはもったいない」という声が多い背景として、派遣社員はキャリアアップが難しいという認識が広く浸透していることが挙げられます。
20代から派遣社員として働いていると、年齢を重ねるにつれて周りの正社員のほとんどが着実にキャリアアップを実現させ、昇進していくでしょう。そういった中で思うようにキャリアを形成できず、焦りを感じてしまうケースも少なくありません。
しかし、働き方に対する考え方が多様化している今、派遣として働くことがもったいないかどうかは人それぞれだと言えます。
次章以降で20代で派遣社員になるメリットやデメリットを解説しますので、それらをもとに派遣という働き方が自分に合っているのかどうかを判断してみてください。
20代で派遣社員になるメリット
20代で派遣社員になるメリットとして、以下の3点が挙げられます。
- 幅広い職種を経験できる
- 自分の時間を確保しやすい
- 派遣会社のフォローを受けられる
幅広い職種を経験できる
正社員が現状とは異なる業務に携わろうと思うと、部署異動が最適な選択肢となることが一般的です。しかし、必ずしも部署異動の希望が通るとは限らないため、転職しなければ新たな職種に挑戦できない可能性が十分にあります。
派遣社員の場合、契約更新のタイミングで派遣先企業を変えれば様々な職種を経験することができます。若いうちから多彩なスキルを身に付けておけば、キャリアの選択肢がぐっと広がるでしょう。
社会人としてのキャリアをスタートさせる20代の方の中には、自身が向かうべき道が見えず不安に感じる方も多いのではないでしょうか。派遣として働く中で様々な職種に挑戦すれば、本当にやりたいことを見つけられるかもしれません。
自分の時間を確保しやすい
幸せな人生を送るために何を大切にするかは、個人によって異なります。仕事を通してやりがいを得たいという方もいれば、仕事よりも趣味や家族と過ごす時間を大切にしたいと考える方もいるでしょう。
フルタイムで働く正社員は1日の業務時間が長く、業務の進捗によっては長時間の残業を余儀なくされることも多いです。正社員の1ヶ月あたりの平均残業時間は約20時間と言われており、平日に自分の好きなことに使う時間を確保することは難しい方もいるでしょう。
派遣社員として働く場合、数多くの求人の中から自分が希望する働き方とマッチするものを選択することが可能です。残業が発生しない契約を結ぶ、子どもがいなくても時短勤務をするというように、正社員にはできない自由な働き方を実現できます。
派遣会社のフォローを受けられる
- 仕事量が多すぎる
- 給与が安すぎる・休暇が取れない
- 上司と良好な関係を築けない
- 自分の将来に不安を感じる
社会人として働いていると、上記のような悩みが尽きないものです。社会経験の浅い20代は特に、こうした悩みがストレスとして蓄積されることも少なくありません。
しかし、正社員の場合は自分の力で解決策を見出したり、信頼できる相談相手を見つけたりする必要があります。
派遣社員として働いていると、派遣会社の担当者が仕事の悩みについて相談に乗ったり、派遣先企業との間を取り持ったりしてくれます。派遣会社の手厚いサポートを受けながら働けることは、20代にとって大きなメリットだと言えるでしょう。
20代で派遣社員になるデメリット
派遣社員になることにはお伝えしたようなメリットがある一方で、以下のようなデメリットがあるのも事実です。
- 給与が低い
- 雇用・収入が不安定になる
- キャリアアップに繋がりづらい
給与が低い
派遣社員には賞与がないことが多く、時給制であり1ヶ月あたりの労働時間が少ないと収入が減ってしまうため、年収ベースで考えると正社員の方が給与が高くなる傾向にあります。
ボーナスをもらって喜ぶ周りの正社員を見て、うらやましく感じてしまうこともあるかもしれません。
また、将来性を見込んでスキルが足りない人材を受け入れることも少なくない正社員採用とは異なり、契約期間が限られている派遣社員の採用は即戦力を前提とすることがほとんど。未経験からスタートできる求人もありますが、その場合収入はかなり低い傾向にあります。
雇用・収入が不安定になる
派遣社員の給料は時給制であることが一般的です。そのため、毎月の労働時間に応じて収入は変動します。加えて、契約を更新してもらえなかったり、契約期間中に解雇される、いわゆる派遣切りに遭ったりするリスクも否定できません。
雇用や収入が不安定になることは派遣社員の大きなデメリットであり、年齢に限らず多くの方が派遣として働くことに不安を感じる理由の1つでもあります。
しかし、終身雇用が当たり前ではなくなった今、正社員も決して安泰とは言えません。雇用が不安定であることは、今や派遣社員ならではのデメリットではなくなりつつあります。
キャリアアップに繋がりづらい
派遣社員は基本的に契約書に書かれている業務のみを行うため、正社員と比較するとどうしても身に付けられるスキルや経験が限られてしまいます。加えて、派遣社員は企業が実施する以下のようなキャリアアップ支援制度を利用することができません。
- セミナーの受講
- ジョブローテーション制度
- キャリアコンサルタントによるキャリア面談
以上のことから、派遣社員は正社員と比較するとどうしてもキャリアアップを実現しづらい傾向にあります。将来的にキャリアアップを見据える方は、早いうちに正社員登用を目指すべきでしょう。
派遣社員に向いている20代の特徴
ここまでご紹介したメリットやデメリットを踏まえると、以下のような特徴を持つ20代は派遣社員に向いていると言えます。
- ワークライフバランスを大切にしたい
- 様々な職種を体験してみたい
仕事に追われる生活をしたくない、育児や介護と仕事を両立させたいというようにワークライフバランスを大切にしたい方は、派遣社員として働くことをおすすめします。勤務時間について大きな裁量を持つことができ、自分に合った働き方を選択しやすいためです。
様々な職種に就いて広く経験を積みたいという方にとっても、派遣社員はおすすめの働き方です。働きながら本当に自分のやりたいことを探せるという、絶好の環境に身を置くことができます。
正社員に向いている20代の特徴
派遣社員として働く上で大きなネックとなるのは、雇用が安定しないこと、キャリアアップが難しいことの2点です。
将来お金に困らないよう安定した収入を得られる仕事に就きたい、同じ職場で長く働き続けたいなどと考える方は、派遣社員よりも正社員として働く方がおすすめです。
キャリア志向の強い方も、企業のサポートを受けながらキャリアアップを目指せる正社員として働く方が良いでしょう。
派遣社員として働きながらキャリアアップを実現させようと思うと、キャリア設計やスキルアップについて自分で情報を得たり選択したりしながら進めなければなりません。
20代の派遣社員は正社員登用を目指せる?
派遣社員はキャリア形成が難しいとお伝えしてきましたが、派遣社員として働きながら正社員登用を目指せば、将来的なキャリアアップを見据えることも可能です。
派遣社員を受け入れる企業の中には、派遣社員として働きながら正社員登用を目指せるところも多いです。契約期間が終了した後で直接雇用に切り替えることを前提とした、紹介予定派遣という働き方もあります。
派遣社員から正社員になる方法や知っておくべきルールについて詳しく知りたい方は、下記のコラムをチェックしてみてください。
派遣から正社員になるのは難しい?知っておきたいそれぞれのメリット
自分のライフプランを踏まえて進路を決めよう
派遣社員として働くと、身に付けられるスキルや働き方の選択肢をぐっと増やすことができます。一方で、正社員に比べるとキャリアアップに繋がりづらいのも事実です。
社会人としてのキャリアの土台を形成する20代にとって、派遣社員として働くことを「もったいない」と捉えるか「今しかできない経験ができる」と捉えるかは自分次第です。
自分が将来なりたい姿や理想のライフプランを具体的に想像し、それらに合った納得のいくキャリアを選択してみてください。