大卒で工場勤務だと「もったいない」という言葉が聞こえることがありますが、本当にもったいないことなのでしょうか。
この記事では、大卒で工場勤務することがもったいないと言われる理由と、工場で働くメリットについて解説しています。工場勤務に向いている人の特徴にも触れているので、工場への就職に対して悩んでいる人は、ぜひ最後までご覧ください。
大卒で工場勤務がもったいないといわれる理由
「大卒で工場勤務はもったいない」という発言をする人がいますが、その理由は以下のようなことが影響していると考えられます。
- 工場は学歴がなくても働ける
- 給与が安いイメージがある
- スキルや知識を活かす場面が少ない
工場は学歴がなくても働ける
工場勤務は学歴がなくても働けるケースが多く、実際の募集要項にも「学歴不問」「経歴問わず」といった要件が多く見受けられます。そのため、一般的に高学歴の人が就職するというイメージが湧かないのかもしれません。
このほか、周りの人が工場勤務に対して「低学歴の人が就く仕事」のように偏見を持っている可能性もあるでしょう。せっかく大学まで進学して勉強したのに、工場で働くことはこれまでの学歴を無駄にしてしまうのではという考えを持っている人がいるのも事実です。
給与が安いイメージがある
工場勤務は給与が安いというイメージがあるのも、大卒で工場勤務はもったいないといわれる原因の一つです。しかし、製造業は他業種と比べても給料に大きな差があるわけではありません。
製造業に従事する大卒労働者の平均年収は以下のとおりで、企業の規模や業種、年齢によって年収に幅があるものの、それほど安い給与でないことがわかります。
年齢 | 性別 | 月額所定内給与額(千円) | 年間賞与その他特別給与額(千円) |
---|---|---|---|
20~24歳 | 男 | 220.6 | 414 |
女 | 218.7 | 368.3 | |
25~29歳 | 男 | 256.8 | 1064.3 |
女 | 239.9 | 956.7 | |
30~34歳 | 男 | 307.3 | 1377.1 |
女 | 281 | 1250.8 |
※2019年時点、企業規模計(10人以上)
参考:賃金構造基本統計調査
スキルや知識を活かす場面が少ない
大学で専門的なことを学んでいて、身についているスキルや知識があったとしても、製造業に関係ないスキルの場合は、職場で活かせる可能性は低いでしょう。就職後に身につく技術も、基本的には製造業でのみ活かせるものが多いため、習得するスキルの汎用性が低いことも「もったいない」といわれる一つの原因になっています。
習得したスキルを、他業種で活かすことも難しいため、キャリアチェンジの難易度は上がるかもしれません。
工場の仕事内容
工場の業務内容は多岐にわたり、配属される場所によって、以下のように業務内容が異なります。
- 設計開発:それぞれの工場で作成している機械や部品、設備などを専門の製図ソフトを用いて設計する仕事
- 製造業務:製品、部品の製造やライン作業をする仕事で、ほとんどの作業がマニュアル化されている
- 生産管理:生産スケジュールや従業員の稼働を調整し、進捗状況を確認しながら計画を実行する仕事
- 品質管理:完成した製品をチェックし、動作不良や破損、異物混入などがないか確認する仕事
- 設備点検:工場の生産設備が正常に動いているかを確認し、不具合があればメンテナンスする
工場勤務というとライン作業や軽作業のイメージが強いかもしれませんが、単純作業ばかりではないことを念頭に置いておきましょう。大卒で工場に配属された場合は、製造部門で研修を行ったあとに設計や品質管理に配属されることが多いです。
大卒で工場勤務するメリット
もったいないと言われがちな工場勤務ですが、以下のようにメリットも多くあるので確認しておきましょう。
- プライベートと両立させやすい
- 稼ぎやすい
- 就職しやすい
- 専攻を活かせる
プライベートと両立させやすい
工場勤務は基本的に残業が少なく、プライベートと仕事を両立させやすいのが大きなメリットです。二交替制や三交替制などの交替勤務であれば、ほとんど残業がないため、夜勤明けや休日に趣味や副業などの時間が確保でき、プライベートを充実させることが可能です。
シフトがしっかり決まっている場合は、よほどのことがなければ休日出勤もないので、しっかり休みをとることもできるでしょう。工場での仕事は複数人のグループで行う業務が多いため、有給を取る際に誰かに引継ぎをする必要がなく、休みやすいのも利点です。
稼ぎやすい
工場勤務はさまざまな手当があるほか、交替勤務であれば深夜割増や残業代がつくので稼ぎやすいという特徴があります。工場で支給される手当には、夜勤手当や資格手当などがあり、「機械設計技術者」「CAD利用技術者」といった特殊な資格を取得すると手当が支給されるケースもあります。
医療や機械、食品など、その業界に適した資格を持っていると、昇進、昇給の際に有利になるかもしれません。このほか、営業職のようにインセンティブがないので、月々の変動が少なく安定した収入が得られるのもメリットです。
就職しやすい
大卒者は、高卒や中卒と比べて就職しやすいのがメリットです。製造業は人手不足のため、もともと就職しやすい業種ですが、大卒であればさらに就職しやすくなります。大手メーカーの大規模な工場でも、小さな町工場でも高卒の人が多く働いているので、大卒というだけで大きなアドバンテージになるでしょう。
大卒者は幹部候補や出世を見越して採用されることもあり、しばらく工場で働いたあとに他部署に異動になることもあります。
専攻を活かせる
大学で製造や流通に関わることを学んだ場合、工場での仕事に活かすことができるでしょう。機械工学や電子工学、情報工学を専攻していれば、現場で役に立つだけでなく就職の際も有利になります。
製造業は日本の基幹産業であり、今後も安定した需要が見込まれるため、企業は専門的な知識をもつ学生を求めています。すぐにスキルや知識を活かせる部署に配属になるとは限りませんが、理系の思考はどの部署でも役立つでしょう。
【大卒】工場勤務に向いている人
工場勤務には、ものづくりに興味がある、特定のスキルを磨きたいといった人が適しています。以下、大卒で工場勤務に向いている人の特徴を見ていきましょう。
- ものづくりが好き
- 社会の役に立つ仕事がしたい
- 特定のスキルを磨きたい
ものづくりが好き
「ものづくりに興味がある」「ものづくりが好き」という人は、工場勤務に向いているでしょう。工場では、製品のさまざまな製造工程に携われるので、製品の仕組みを知ることや部品の加工、組み立てといった作業が好きな人には最適な職場です。
部署によっては、設計に関わったり機器のメンテナンスをしたりすることもあるので、ものづくりを多岐にわたって経験することができます。
社会の役に立つ仕事がしたい
製造業は、私たちの生活に欠かせない多種多様な製品を作る仕事です。そのため、人々の生活に密着した、車やスマホ、家電製品、医療機器といった製品の製造に関わりたいという人にはピッタリの仕事です。
環境への配慮、自動化、安全性向上など、常に新しい技術が求められています。それらの開発に携われる可能性があり、それが形となって世に送り出されたときにはとても大きなやりがいを感じることができるでしょう。
特定のスキルを磨きたい
工場勤務では、生産ラインのオペレーターだけでなく、開発、設計や研究職など、専門的な業務に従事することがあります。特に工業系の大学を卒業している人は、これらの技能職に就く可能性も高く、専門的なスキルを磨くことが可能です。
工場勤務では、普段取り扱うシステムや機器の操作や保守、生産スケジュールの管理など、特定のスキルを磨きたいという人にも適しています。
大卒で工場勤務はもったいなくない!
大卒で工場勤務だと、スキルを活かせない、給与が低いといったイメージから「もったいない」と言われますが、そんなことはありません。工場勤務でも、大学での専攻や、配属される部署によってはスキルを活かすことも可能です。
そもそも大卒ということで就職しやすいといったメリットがあるほか、出世や幹部候補になることを見越して採用されるケースもあります。ものづくりが好き、社会の役に立つ仕事がしたいという人は工場勤務に向いているので、ぜひ働いてみましょう。